第1671回 8強がそろったフランスカップ(3) 実現しなかったモナコ-リヨン戦

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■8試合を無失点、格上4チームを下したセート

 前回の本連載では上位のリーグに所属する、あるいは同一リーグの場合は順位が上位のチームが勝利した4試合を紹介し、結果的には順当に見えたが、ロスタイムの同点ゴールあり、延長戦あり、PK戦あり、カップ戦ならではのスリリングな試合が続いた。残るベスト8決定戦3試合もスリリングな試合となった。
 ベスト8決定戦2日目は4試合が行われ、前回紹介したイール・ルース-ギャンガン戦、オセール-レンヌ戦に続き、アマチュアチーム同士のムーラン-セート戦、そしてベスト8決定戦で唯一の1部勢対決となるニース-モナコ戦が控えている。
 CFAに所属するムーランは4回戦から参戦し、ここまで7試合勝ち抜いてきた。一方、1つ下のリーグであるCFA2部のセートは3回戦から登場、8チームを倒してきた。ここで注目すべきはセートの戦績である。3戦目となる5回戦で3部に相当するウゼ・ポン・デュ・ガールに勝利し、8回戦ではかつては1部にも所属したCFAのグルノーブルを下し、9回戦に相当する続くベスト32決定戦ではナショナルリーグのカルクフーに勝利、ベスト16決定戦でもCFAのジュラ・シュッドに勝利し、ここまでの8勝のうち4勝は格上のリーグに所属するチームを下している。さらにここまでの8試合、すべて90分の試合で勝利し、さらに無失点。実に8試合で得点23、失点0という驚異的な成績を残してきた。

■ミラクルチームをストップしたムーラン

 一方、このミラクルチームのセートを迎え撃つムーランはチケットを4500枚発売したが、1万2000枚の申し込みがあった。この1戦、先制したのはセート、開始3分のことである。セートの先制点は主将のクリストフ・ルーブ、43歳の選手である。しかし、満員の観衆の声援に後押しされたムーランは43分に同点ゴール、セートにとってはフランスカップ9試合目にして初の失点である。後半に入った53分、ムーランは同点ゴールを決めたセバスチャン・ダシルバが逆転ゴールを決め、さらに後半のロスタイムにはセートのオウンゴールで3-1と突き放す。セートのミラクルはついにストップ、一方のムーランはアリエ県のクラブとして初めてフランスカップの準々決勝に進出したのである。

■ディミタール・ベルバトフが移籍直後の大仕事、モナコが4年ぶりの8強進出

 そしてベスト8決定戦で最も注目を集めたのが1部勢対決のニース-モナコ戦である。大型補強でリーグ戦でも2位のモナコ、リーグ首位でカップ戦に強いパリサンジェルマンが敗退しておりタイトル獲得のチャンスである。一方、迎え撃つニースもリーグ戦では中位以下であるが、クラブの規模で4倍以上の金満クラブに一泡吹かせようと2万人以上の観客が集まった。ファンの期待通りの試合となり、90分経っても両チーム得点をあげることなく、延長戦に突入する。この延長戦で決勝点をあげたのはモナコであった。イングランドのフラムから1月末にレンタル移籍してきたばかりのディミタール・ベルバトフが延長後半の114分にゴールをあげる。モナコは4年ぶりに準々決勝に駒を進めたのである。

■ロスタイムに痛恨のファウル、リヨン、今季初のカップ戦敗退

 この試合の後、準々決勝の組み合わせ抽選が行われ、モナコは準々決勝で翌日に行われるリヨン-RCランス戦の勝者と対戦することになったのである。
 ベスト8決定戦最後のリヨン-RCランス戦は2月13日の20時45分にキックオフされた。リヨンの本拠地ジェルランの集まった観衆は僅か1万4000人、今季最低の数字となった。このファンの注目度の低さが思わぬ結果を招く。リヨンはジミー・ブリアンが9分に先制し、このまま逃げ切るかと思われ、後半のロスタイムの表示は4分。ここでリヨンのメディ・ゼファンがRCランスのアダモ・クリバリーを倒し、PKを与える。これをピエリック・バルディビアが決めて試合は延長に突入する。延長戦では94分にRCランスがCKのチャンスからジャン・フィリップ・グバマンがヘディングで決勝点、2部のRCランスがリヨンを破ったのである。
 リヨンは今季のカップ戦で初めての敗退、ファンが楽しみにしていたモナコとの対戦は実現しなかったのである。(この項、終わり)

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