第2317回 伏兵が決勝に進出するフランスカップ(3) 下部リーグのフランスカップのスペシャリストたち

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ナショナルリーグのレゼルビエとシャンブリーが準決勝進出

 前回の本連載では3年連続12回目の優勝を目指すパリサンジェルマンと初のベスト4となるカーンが準決勝に進出したことを紹介したが、準決勝の残り2チームはいずれも3部に相当するナショナルリーグのチームとなった。
 Nと言われるナショナルリーグから準決勝に進出したのはレゼルビエとシャンブリーである。ベスト8決定戦に出場した16チームの内訳は1部8チーム、2部4チーム、Nから3チーム、N2から1チームであることから、この2チームが準決勝に進出したのは驚くべきことである。両チームの準決勝までの道のりを振り返ってみよう。

■イタリア系のルジ家が1989年に設立したシャンブリー

 シャンブリーはパリ北部のオワーズ県にあるクラブであるが、1989年創立と若いチームである。このチームはイタリア系のルジ家が設立し、バルター・ルジが会長、息子のフルビオが監督、同じく息子のブルーノが選手であった。インテル・ミラノのファンであったことからチームのユニフォームは青と黒の縦じまである。創設以来、リーグ昇格を重ね、2014年から3部に相当するナショナルリーグに所属している。

■2010年代のフランスカップでしばしば上位進出したシャンブリー

 本連載の読者の方であればこのクラブ名に記憶のある方も多いであろう。実はフランスカップではこれまでも上位にしばしば進出してきたのである。まず5部に相当するCFA2部に所属していた2011-12シーズンは3回戦から参戦し、8回戦まで勝ち抜き、越年し、ベスト32決定戦で当時1部のオセールと対戦したのである。延長の末敗れたが、アミアンに舞台を移して行われたこの試合には3000人を超えるファンが集まったのである。翌年も8回戦まで進出、そして次の2013-14シーズンもベスト32決定戦に進出してプロチームと対戦した。2部のアンジェとの試合はPK戦にもつれ込み惜敗する。
 さらにナショナルリーグに昇格してからは3シーズン中2シーズンでベスト32決定戦を勝ち抜いている。2015-16シーズンはベスト32決定戦でスタッド・ド・ランスを下し、ベスト16決定戦でリヨンに敗れている。2016-17シーズンもベスト16決定戦まで進み、本連載の2146回で紹介したとおり、リーグチャンピオンとなるモナコ相手に3点のビハインドを追いつき、延長戦の末、4-5と惜敗している。2010年代の戦績を見る限り、フランスカップのスペシャリストと言っても過言ではないであろう。
 そして、今季は8回戦まで勝ち抜き、年を越した。今年はくじ運に恵まれ、ベスト32決定戦は格下のN3のアバロンと対戦し、2-0と退ける。そしてベスト16決定戦で初めて格上のチームと対戦する。相手はフランスカップ準優勝経験もある2部のシャトールーである。先制点を奪われたが、追いつき、延長戦を終えても1-1のタイスコア、PK戦となるが、これを3-2と競り勝って、クラブ設立30年目にして初めてベスト16に進出した。

■3年連続でベスト32決定戦に進み、今季はボルドーを下したグランビル

 そして2月7日に行われたベスト8決定戦の相手は唯一N2から勝ち残ったグランビルである。N2であるから格下であるが、2年前の2016年には5部に相当するCFA2部に所属していたが、2部勢のラバル、ブール・アン・ブレスを下して準々決勝に進出した。カーンに舞台を移してマルセイユと対戦し、0-1で敗れたが、国際試合の経験もあるカーンのミッシェルドナルノ競技場の最多観客記録を更新した。昨年も8回戦まで突破し、年明けのベスト32決定戦を戦い、アンジェに1-2と逆転負けを喫した。
 そして今年も8回戦まで勝ち続け、ベスト32決定戦に進出、ボルドーと対戦し、終了10秒前に追いつき、退場者が続出し8人になったボルドー相手に延長前半にPKで決勝点をあげ、クラブ史上初めて1部勢に勝利する。ベスト16決定戦ではNのコンカルノーに延長の末、3-2と競り勝ち、ベスト16に進出する。
 下部リーグ勢同士の対戦であるが、シャンブリー-グランビル戦はフランスカップのスペシャリストの対決とあって、注目を集めたのである。(続く)

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