第2615回 新春を飾るフランスカップ(7) リール、モンペリエ、ニース、ストラスブールは初戦を突破

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ベスト32決定戦の常連のラオン・レタップを下したリール

 前回の本連載の最後には1部在籍時代にしばしばジャイアントキリングの犠牲となっていた2部のロリアンが同じブルターニュの港町で1部のブレストに勝利し、見事にジャイアントキリングを成し遂げたことを紹介した。フランスカップのベスト32決定戦の見どころはジャイアントキリングである。
 これまで6回の連載で1部勢同士の対戦2試合を含み、1部勢を11チーム紹介してきた。この中で初戦で姿を消したのはジャイアントキリングに遭ったブレスト、1部勢対決で敗れたスタッド・ド・ランスとアミアンである。
 それ以外の11チームはどうだっただろうか。この11チームのうち、リーグ順位が最も高いのが4位で折り返したリールである。リールの対戦相手はナショナル3部のラオン・レタップである。5部に相当するリーグに所属しているが、1995年に初めてベスト32決定戦に進出してからしばしばフランスカップでは越年し、2007年にはストラスブール、2009年にはグルノーブル、2013年と2014年にはボルドー、2016年にはサンテチエンヌと上位勢と対戦している。これは驚異的な成績であるが、いずれも敗退しており、リールを破って歴史を作りたいところである。チャンピオンズリーグでは不本意な成績に終わったリールも国内の大会ではそれなりの存在感を示している。リールは前半の14分に先制し、後半に入っても立ち上がりに追加点、63分に3点目を入れて、楽勝かと思われた。しかし、ラオン・レタップは76分に1点返し、83分にはPKを決めて1点差に迫る。4500人の地元ファンはあと1点を熱望したが、結局リールが番付通りの強さを見せて、3-2と逃げ切った。

■幼少時のロベール・ピレスが所属したクラブを下したモンペリエ

 リーグ戦前半9位のモンペリエは6部リーグに相当する地域リーグ1部のランス・サンタンヌと対戦する。ランス・サンタンヌはその名の通り、ランス(Reims)の近郊にあるクラブである。このクラブは幼少時のロベール・ピレスが所属したチームである。ピレスはこのクラブの一員として11歳以下の全国大会で優勝している。このシャンパーニュ地方を代表するスタッド・ド・ランスに移籍するのは当然であり、メッスに移ってプロ契約、その後はフランス代表でも活躍した。このランス・サンタンヌがここまで来ることができたのは31歳の主将でGKを務めるグレゴリー・バリリオである。このモンペリエ戦でもシュートをことごとく防ぐとともに、PKもストップしている。しかし、GK1人の活躍ではこれだけ力の差のある相手にはなかなか勝つことができない。モンペリエが序盤に挙げた1点を守り切り、ベスト32入りしたのである。

■5年連続で初戦敗退のニースは久しぶりの初戦突破

 10位のニースは過去5年連続でベスト32決定戦で敗れている。下部リーグのチームに敗れたのは1度だけで、昨年まで4年連続1部勢との対戦、いずれも敗れるというくじ運のなさもある。ニースの今年の初戦の相手はショナル2部のフレジュス・サンラファエルである。地中海沿岸のチームの対戦となったが、フレジュス・サンラファエルも出身者の中にビッグネームがいる。ともにフランス代表の守備陣のアディル・ラミとレイバン・クルザワである。前半の半ばにフレジュス・サンラファエルは退場者が出てニースが数的優位に立ったが、なかなか得点を奪うことができない。ニースの先制点は後半に入ってから、終了間際に追加点をあげて、2-0で勝利し、6年ぶりの初戦突破となった。

■控え選手が活躍したストラスブール

 11位のストラスブールはナショナル3部のルポルテルと対戦、前半は1-1で折り返したが、後半になって活躍したのが控え選手のケビン・ゾヒである。リーグ戦はほとんど出場せず、週の半ばの試合の要員であるが、ヨーロッパリーグでも活躍した。後半に入って2点をあげ、リーグ戦メンバーへのデモンストレーションとなった。
 このように上位から中位のチームは下位のチームを下して初戦を突破したのである。(続く)

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