第2825回 フランスカップフィナーレ(3) 4部リーグから史上4度目のベスト4入りしたルミリー・バリエール

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■2018年に誕生したルミリー・バリエール

 フランスカップの準々決勝は4月20日と21日に行われた。初日の20日には1部勢で登場したのはモンペリエだけであり、18時45分からルミリー・バリエール-トゥールーズ、21時からカネ・タン・ルシヨン-モンペリエ戦が行われた。ホームチームとなるルミリー・バリエールとカネ・タン・ルシヨンはいずれも4部に相当するナショナル2部のチームであり、フランスカップの準々決勝にふさわしいスタジアムを本拠地として有しているわけではない。ルミリー・バリエールはアヌシーに舞台を移してトゥールーズを迎えた。アヌシーはサボア地方の中核都市であり、アヌシースポーツ公園は1万5000人を収容する競技場であるが、サッカーチームのアヌシー現在はナショナルリーグのチーム、このスタジアムが膨れ上がるのはアヌシーの近郊の小クラブが人気チームと対戦するフランスカップの時と決まっている。かつてはパリサンジェルマンやリヨンが満員の観客の前でプレーしたこともあるが、今回は無観客である。ルミリー・バリエールはルミリーのクラブが近郊のクラブと2018年に合併してできたばかりの若いチームである。しかし、今季のフランスカップでは準々決勝に進出した。この理由にはアマチュアとプロが分かれてベスト16決定戦までトーナメントを戦いいてきたこともあるが、単に運がよかっただけではないであろう。

■新型コロナウイルスでメンバーが大量離脱したトゥールーズ

 相手のトゥールーズは2部で2位であり、これまでの戦いでは最も上位の相手である。しかしトゥールーズは新型コロナウイルスの陽性反応がチーム内で出たため、12人がメンバーを外し、ベンチ入りメンバーもわずか6人という陣容でのアヌシー入りとなった。準々決勝からはVARを採用し、開始早々にオフサイドの判定でVARが活躍した。試合は格上のトゥールーズが押し気味であったが、先制点を奪ったのは19分、ルミリー・バリエールであった。その後もトゥールーズは得点をあげることができず、時計の針は進む。そして83分にルミリー・バリエールはFKのチャンスをつかみ、ファーサイドを狙う。これをトゥールーズの守備陣が誤って自らのゴールに入れてしまい、オウンゴールで2点差となり、試合はこのまま終了する。ルミリー・バリエールは4部相当のクラブとして史上4度目の準決勝進出を決めたのである。

■しばしばフランスカップで上位進出しているカネ・タン・ルシヨン

 この歴史的勝利の後、ナショナル2部リーグのカネ・タン・ルシヨンがモンペリエと対戦、この試合も舞台を移してペルピニャンで行われた。
 ベスト4一番乗りがナショナル2部リーグのチームということで、カネ・タン・ルシヨンも気勢があがる。すでにベスト16決定戦でマルセイユを破ったカネ・タン・ルシヨンは今度は地中海岸のモンペリエに挑戦する。カネ・タン・ルシヨンは近年フランスカップで越年することがあったが準々決勝は初めてである。また準決勝にナショナル2部のチームが2チーム残るとなると史上初ということになる。
 ただ、下部のリーグは新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて試合を通常通り行うことが困難であり、リーグ戦は昨年10月から行われておらず、カネ・タン・ルシヨンはフランスカップのみを戦ってきた。

■ベテラン主将の退場で1人少ないモンペリエが逆転勝利

 試合は意外な展開となる。22分にモンペリエの主将のビトリーノ・ヒルトンがペナルティエリア内でファウル、これがPKとなっただけではなくヒルトンもレッドカードで退場となった。カネ・タン・ルシヨンはPKを決めて1点リードしたが、モンペリエは2012年のリーグ優勝に導いた43歳のベテラン主将の退場は痛い。その後もカネ・タン・ルシヨンがモンペリエのゴール前に迫る。
 ようやくモンペリエが追いついたのが60分であった。オリビエ・ジルーの後継者と言われる背番号9のアンディ・ドゥロールがゴールを決める。さらに84分にモンペリエはPKを得て、これをドゥロールが決めて逆転する。モンペリエは24年ぶりの準決勝進出となったのである。(続く)

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