第593回 2006-07フランスリーグ開幕(1) 戦力を補強したリヨン、マルセイユ

■8月初めに開幕するフランスリーグ

 様々な話題を残して終了したワールドカップ、早いもので8月にはフランスなどでリーグ戦が開幕した。ワールドカップによって選手の評価も大きく変わり、例年通り多くの選手がこの時期に移籍をしている。ワールドカップ準優勝した国のリーグであるフランスリーグもこれまで以上に注目を集めることになるだろう。今回はフランスリーグの主要クラブの戦力の変化について紹介したい。

■ワールドカップに10人を送り込んだ王者リヨン

 まずなんと言っても一番注目されるのは5連覇中のリヨンである。今回のワールドカップにはフランス代表5人(グレゴリー・クーペ、エリック・アビダル、フローラン・マルーダ、シドニー・ゴブー、シルバン・ビルトール)ブラジル代表3人(クリス、ジュニーニョ、フレッド)、ポルトガル代表1人(ティアゴ)、スイス代表1人(パトリック・ミューラー)と10人のワールドカップ登録選手を抱えていた。注目すべきはアフリカの選手がおらず、欧州、南米の強豪国の選手ばかりで、選手の所属する全てのチームが決勝トーナメントに出場している。すなわち、リヨンからワールドカップに出場した選手は量だけではなく質も他のチームを凌駕しており、6連覇を狙うのも当然のことであろう。

■若手の有望株を獲得したリヨン

 そしてこのリヨンはさらに戦力を強化しようとしている。10人のワールドカップ組はそのままで、ワールドカップに出場した選手の中でスウェーデン代表のキム・カールストロームをレンヌから獲得、今回のワールドカップ出場選手だけで11人になり1チームが編成できることになった。さらに今回のフランス代表には入らなかったものの若手でフランス代表として9試合に出場したことがあるセバスチャン・スキラッチをモナコから獲得、さらにオリンピック代表として活躍し、フル代表入りが待望される22歳のジェレミー・トゥーラランもナントからリヨンの一員となっている。

■出戻りの若手に期待したいマルセイユ

 そのリヨンを追撃する可能性のあるチームとしてマルセイユの評判がいい。今回のワールドカップにはファビアン・バルテス、フランク・リベリーの2人のフランス代表、そしてコートジボワール代表にアブドゥライエ・メイテを送り込んでいる。大会前はグレゴリー・クーペを起用すべきという声が強い中でバルテスは大健闘した。またリベリーもキャリア不足が懸念されたが、本大会に入ってから試合を重ねるごとに成長した。このあたりは名門チームにから代表チームに選出された選手の意識の高さがうかがわれる。バルテスとは契約を結ばず、リベリーも移籍濃厚である。
 マルセイユの大量補強の伝統は変わらない。この夏の最大の目玉はジブリル・シセである。オセールで育成され、プロとして活躍し、2004年夏にはリバプールへと移り、2005年にはチャンピオンズリーグ制覇したメンバーとなっている。今回のワールドカップでもいったんはメンバーに選出されながら、大会開幕直前の負傷によりメンバーから外れており、今季にかける意気込みも他の選手とは違うであろう。そしてペギー・リュインデュラもマルセイユに帰ってきた。コンゴ民主共和国出身のリュインデュラはストラスブール、リヨンを経て2004年にフランス代表に初選出、そしてその年の夏にマルセイユの一員となった。昨シーズン途中にオセールに移ったが、このたびマルセイユに戻り、攻撃陣を補強することになった。
 数的には多くの選手が入れ替わったマルセイユであるが、代表クラスはこの2人だけであり、ほとんどの選手は若手である。したがって移籍に要する費用も少なく、将来性を見越しての補強となった。
 そのほかのクラブを見てもワールドカップで活躍したクラスの選手の移籍は数少ない。ワールドカップ準優勝国のリーグとは言っても、ワールドクラスの選手がワールドカップを機会として入れ替わる時代ではなくなったようである。(続く)

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