第629回 ダービーマッチ、リヨン-サンテエチエンヌ戦(2) 主将ジュニーニョ、意地の決勝点

■グレゴリー・クーペの代役、レミー・ベルクートル

 本拠地ジェルマン競技場に緑の軍団サンテエチエンヌを迎えた王者リヨン、満員の観衆の前に姿を現したイレブンの中に国内外の代表選手ではない選手が2人いた。まずはGKのレミー・ベルクートル、グレゴリー・クーペが負傷したため、代役でこの大一番のゴールを守ることになった。
 今シーズンのリーグ戦でベルクートルの出番は開幕戦であり、他の試合に先駆けて8月4日に行われたナント戦だけである。ワールドカップ終了から間もない時期であり、クーペが休養のためメンバーから外れていたため、ベルクートルが出場した。ところが開始早々の4分に先制点を奪われる。ベルクートルは今シーズンのフランスリーグで初めてゴールを奪われたGKとなったのである。
 しかし、さすが王者リヨン、先制点を奪われた1分後に同点ゴールをあげて追いつき、後半に入って2点を追加して3-1と見事な逆転勝ちを収め、今シーズンの初戦を飾ったのである。

■18歳の新星、カリム・ベンゼマ

 その同点ゴールを決めたのがCFとして出場したカリム・ベンゼマである。ベンゼマは1987年生まれで、まだ誕生日を迎えていないため、弱冠18歳の若者である。リヨン出身のベンゼマはリヨンとプロ契約して今年が3年目である。昨季までの実績はリーグ戦に19試合出場、1得点という成績を残している。
 今季はベルクートル同様、シルバン・ビルトール、シドニー・ゴブーなどワールドカップ組が欠場したため、開幕戦に出場のチャンスを得る。ワールドカップ組が欠場とは言っても準々決勝で敗退したブラジルのフレッドやクリスはベンチ入りしており、フレッドを押しのけて先発出場を果たしたのである。先制点を奪われた直後にジョン・カルーからのセンタリングをゴールに叩き込む。このゴールが若きベンゼマに自信を与える。第2節のトゥールーズ戦も先発フル出場する。第8節までの全ての試合に出場しており、3ゴールをあげている。さらにチャンピオンズリーグでも9月26日のステアウア・ブカレスト戦の試合終了の5分前に交代出場し、試合終了直前にダメ押しのゴールを奪っている。

■若手の国外流出にブレーキがかかったフランス

 これまでもフランスは若手の育成に定評があったが、ハイティーンになって他国のビッグクラブに選手が流出していくのが悩みの種であった。ところがそのようなビッグクラブが途方もない金額で奪っていった金の卵が他国では全く芽が出ないまま終わってしまっている。そういう動きの中で最近はフランスのクラブで育ってきた若手選手がそのままそのクラブでプロになっていくケースが多いようである。ベンゼマももちろん国内外のクラブから声がかかったことがあるが、育成されたリヨンでそのままのスタイルでプレーを継続することを希望した。そのリヨンも欧州有数の有力チームであり、ワールドカップで活躍した国内外の代表選手をベンチに追いやっての堂々の活躍である。

■PKを失敗したジュニーニョが決勝点

 フランスを代表するダービーマッチは互角の戦いとなった。リヨンが押し気味に攻めるが、サンテエチエンヌは前半を守りきり、両チーム無得点で後半を迎える。先にゴールネットを揺らしたのはやはりリヨンであった。66分にポルトガル代表のティアゴがブラジル代表のジュニーニョのパスを受けて先制点をあげる。
 これに対しサンテエチエンヌも負けていない。昨年までルマンに所属し、今季から新加入のヨアン・オートクールがすかさず25メートルの位置から同点ゴールを決める。勝ち越し点を上げるリヨンは攻撃陣を入れ替え、ゴブーに代わりフローラン・マルーダ、ビルトールに代わり、リーグ戦デビューとなるロイック・レミを投入するが、CFのベンゼマだけはベンチに下げない。82分にサンテエチエンヌのDFディアッタがペナルティエリア内でマルーダへのファウルを犯し、レッドカード。サンテエチエンヌは1人少なくなり、リヨンの主将ジュニーニョがパネルティスポットにボールを置く。しかしこのPKをサンテエチエンヌのGKであり、主将のジェレミー・ジャノがストップし、主将同士の争いはサンテエチエンヌに軍配が上がる。試合はその後、両チーム譲らずドローかと思われたが、PKを失敗したジュニーニョが90分に決勝ゴールをあげ、リヨンが勝利したのである。(この項、終わり)

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