第1198回 2010-11フランスリーグ前半戦 (3) 49年ぶりに秋の王者になったリール

■抜群の守備力を誇るブレスト

 それまで首位と2位だったマルセイユとレンヌの直接対決が豪雨による影響で延期となった第11節、4位のブレストがホームで3位のサンテエチエンヌを破り、3チームを追い越して首位に立った。今季のフランスサッカーにおける最大の驚きとして受け止められたが、フロックではない。
 24年前に首位に立った時はシーズン開幕直後の第3節でのことであったが、今回は11試合消化した段階でのものである。さらにブレストはこの11試合でわずかに4失点、1試合当たりの失点はわずか0.36、この数字を上回るチームはイングランドのプレミアリーグのチェルシー(0.30)くらいである。しかも8月28日のカーン戦以来これで8試合連続無失点である。得点は11試合で11点であり、守備の強さがこのチームを支え、その中心はGKのスティーブ・エラナである。br />  これまでのフランスリーグには8試合以上連続で完封したGKは4人しかいない。ガエタン・ウアール(12試合)、ブルーノ・マルティニ、ジャン・リュック・エトリ、ジョセフ・アントワン・ベル(以上9試合)というビッグネームを見るならばいかにこれが難しいことかよくわかる。

■豪雨で延期となったマルセイユとレンヌの首位攻防戦

 そしてマルセイユ-レンヌ戦は豪雨の影響でグラウンドが池のようになってしまい、同日に同じ理由で延期されたモナコ-ボルドー戦は11月初めに行われたが、マルセイユではいつ試合が行われるかわからないまま11月になった。
 11月に入って最初の第12節、堅守のブレストはリールに1-3と大敗する。しかしライバルのレンヌはリヨンと引き分け、マルセイユはライバルのパリサンジェルマンに1-2と敗れ、ブレストが首位をキープする。

■パリサンジェルマンとリールのヨーロッパリーグ組が急上昇

 この第12節で上位陣に勝利したパリサンジェルマンとリールは本連載第1194回と1195回で紹介した通り、ヨーロッパリーグのグループリーグを戦いながらフランスリーグを戦っている。両チームともグループリーグを勝ち抜いたが、マルセイユとリヨンのようにチャンピオンズリーグの戦いで調子が上向きになると国内リーグで勝ち点を落とす、というのとは違う。ヨーロッパリーグとフランスリーグでの調子が同期しており、リールとパリサンジェルマンが11月以降のフランスリーグの首位争いに名乗りを上げてきたのである。
 リールやパリサンジェルマンの台頭により、首位のブレストと8位のモンペリエの勝ち点の差はわずか3という上位に僅差で多くのチームがひしめく混戦となった。

■リールが10季ぶりに首位に立ち、大混戦の秋の王者に

 ブレストも第13節まで首位を保ったが、11月21日の第14節にはついにリールが首位を奪った。リールが首位になったのは今から10季前の2001-01シーズン以来のことである。しかしながら、8位のリヨンまで勝ち点差はわずか2とさらに混戦に拍車がかかった。
 第15節ではこれまでに紹介した通り、ディフェンディングチャンピオンで1試合消化試合の少ないマルセイユがついに首位になるが、これまた1週間で首位陥落、リールが首位を奪回する。
 12月に入ってからリールはロリアンに6-3と大勝して1節で首位を奪い返し、最下位のアルル・アビニョンにも勝利する。第18節のナンシー戦は天候条件により延期となったが、第19節の12月22日のサンテエチエンヌ戦は1-1のドローで前半戦を終える。ライバルである上位陣のパリサンジェルマン、レンヌは敗れ、上位7位までのチームは引き分けまたは負けという波乱の1日となった。
 この結果、第19節を終了した段階の順位は1位リール(1試合未消化で勝ち点32)、2位にパリサンジェルマン、3位はレンヌ、4位リヨン(以上勝ち点31)、5位マルセイユ、6位サンテエチエンヌ(以上勝ち点29)となり、大混戦で折り返すことになった。
 リールは1949年以来61年ぶりに秋の王者となったが、過去2季は秋の王者は最終的に優勝を逃している。勝ち点32の秋の王者は20チーム制になってからの最小の記録である(未消化の第18節のナンシー戦で勝利すれば違うが)。このように大混戦で折り返したフランスリーグ、今後の優勝争いが楽しみである。(この項、終わり)

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