第1240回 大混戦のまま終盤を迎えたリーグ戦(1) 勝ち点、得失点差が象徴する混戦

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■マルセイユ-モンペリエ戦が象徴する混戦模様のリーグ戦

 前回の本連載で紹介したマルセイユとモンペリアの間で争われたリーグカップの決勝戦はその直前にもリーグ戦で顔を合わせ、両チームは2試合ともほぼ同じメンバーで対戦し、リーグカップにもリーグ戦にもかける思いが伝わってきた。プロである以上、すべての試合にベストを尽くすのが当然という考え方は正論であるが、実際には多くのチームがターンオーバー制を採用し、リーグ戦用とカップ戦などそれ以外のタイトル用のメンバーを使い分けている。特にフランスを代表するビッグクラブであるマルセイユは選手層の厚さを活かした選手起用をしてもいいはずであるが、ディディエ・デシャン監督は二兎を追った。そして挑戦者という立場にあるモンペリエのルネ・ジラール監督も同様であった。
 このような選手になったのはひとえに今季のリーグ戦が歴史に残る混戦となったからである。

■めまぐるしく首位が変わった前半戦

 本連載の読者の皆様であれば、毎週のように首位が入れ替わり、最終戦の最後の最後まで優勝の行方が分からないというスリリングなシーズンが走馬灯のように駆け巡るであろう。
 今季のリーグ戦については本連載では開幕直後と前半戦が終わった段階の模様を紹介したが、前半戦はまさにこの通りであった。序盤戦は有力候補と言われていたマルセイユ、リヨン、ボルドーがもたついたが、秋になって持ち直し、上位に進出してきた。ところが思いもよらぬチームがリーグ戦の首位の座を占め、首位のチームはめまぐるしく変わり、トゥールーズ、サンテエチエンヌという古豪、さらに2部から昇格したばかりのブレストが首位を奪う。結局折り返しの段階で首位に立ち「秋の王者」となったのはリールであった。

■折り返し以降は僅差で首位を譲らないリール

 61年ぶりに秋の王者となったリールが後半戦は1度も首位の座を明け渡すことなく、リーグ戦の終盤を迎えた。後半戦になって首位チームが不動であるにもかかわらず、大混戦と評される理由は2つある。
 第1点として、リールが首位をキープし続けているとは言っても2位との差は僅差であったことがあげられる。リールは、折り返し時点は2位との差が4(実際は1試合未消化のため1)だったが、その後は勝ち点差を5に広げたことが2節あっただけで、同勝ち点で並んで得失点差で首位の座を守ったことも2節ある。常に首位の座が奪われる勝ち点差の中で戦ってきた。

■上位と下位の勝ち点差が小さい今季のリーグ戦

 第2点としては上位チームと下位チームの差が非常に小さいということである。折り返しの時点でリールの勝ち点はわずか32、未消化だった第18節のナンシー戦の勝ち点3を加えても35にしか過ぎない。リーグ戦では優勝争い以外に4位までに与えられる欧州カップの出場権争い、下位3チームが憂き目にあう降格争いが注目されるが、前半戦を終えた段階で4位のチーム(リヨン)の勝ち点は31、降格圏内の18位のチーム(ランス)の勝ち点は19であった。つまり、首位と降格の勝ち点差は16、欧州カップ出場と降格の勝ち点差は12しかなかったのであり、ほとんどのチームに欧州カップ出場のチャンスと降格の危険性が残されているのであった。そしてこの傾向は今でも続き、第31節終了時点で4位パリサンジェルマンの勝ち点は52、18位カーンの勝ち点は35である。4位と18位の勝ち点の差はこの4か月で5しか広がっていないのである。
 そしてこの混戦は勝ち点だけではない。得失点差を見れば今季の混戦ぶりが一層際立つ。31試合を消化した時点で得失点差が2桁あるチームは8チーム(プラス4チーム、マイナスの4チーム)だけであり、過半数の12チームは得失点差が1桁なのである。昨年の同時期はこの逆で、2桁の得失点差のチームは12チーム(プラス7チーム、マイナス5チーム)、1桁のチームは8チームであった。今季のプラス2桁のチームはきれいに上位4位を占め、リール、マルセイユ、リヨン、パリサンジェルマンがプラス10点以上の得失点差を保っている。逆に最下位のアルル・アビニョン、19位のランス、18位のカーン、16位のナンシーの4チームがマイナス10以下の得失点差となっている。
 このように混戦ぶりの目立つ今季のリーグ戦であるが、例外と言えるチームが1つだけ存在しているのである。(続く)

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