第1249回 リール、57年ぶりのリーグ制覇(2) 優勝に王手をかけたリール

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ブレストに地元で快勝して望みをつないだマルセイユ

 リーグカップ優勝の勢いに乗って4月下旬に首位を奪回したマルセイユであるが、わずか3日でリールに首位の座を明け渡した。リールはフランスカップ決勝を前にアウエーゲームが続いたが、ニース、サンテエチエンヌに連勝する。
 フランスカップ決勝に出場するリールは他チームより1日早い5月10日に第35節を戦ったため、マルセイユとは一時勝ち点7の差がついた。これ以上引き離されてはならないマルセイユはその翌日の11日にブレストを迎え、3-0と勝利して、勝ち点差を再び4にして逆転優勝を狙う。

■チャンピオンズリーグ本戦出場権を獲得し、フランスカップも制したリール

 一方、優勝争いだけではなく来季の欧州カップ出場権争いも佳境にあるが、3位のリヨンはオセールに0-4と大敗を喫し、首位リールとの勝ち点差が10となり、残り3試合では逆転が不可能になり、リールはこの段階で2位以上が確定、来季のチャンピオンズリーグに本戦からの出場権を獲得した。
 5月14日に行われたフランスカップ決勝ではリールは実質的なアウエーゲームでパリサンジェルマンを下し、56年ぶりの優勝を果たした。

■マルセイユ、ヨーロッパリーグ出場を目指すロリアン相手に痛恨のドロー

 この翌日からリーグ戦の第36節が行われた。マルセイユは5月15日、そしてフランスカップ決勝を争ったリールとパリサンジェルマンは5月18日に試合を行うため、追うマルセイユとしては落とすことのできない戦いとなる。
 マルセイユは7位のロリアンとのアウエーゲームである。前日のフランスカップ決勝の結果が微妙に影響を与えた。まず、リールが優勝したことにより、リーグカップ優勝直後のマルセイユ同様、リールが勢いに乗ることが予想され、マルセイユにとっては精神的な圧力となる。そして、すでにチャンピオンズリーグ出場を決めたリールがヨーロッパリーグの出場権のあるフランスカップを獲得し、ヨーロッパリーグ出場権のあるリーグカップを制したマルセイユがリーグでも4位以内を確保しているため、リーグ戦の4位チームだけではなく、5位と6位のチームにもヨーロッパリーグへの出場権が与えられることになった。7位ロリアンの6位ソショーとの勝ち点差は4、ロリアンは地元で行うマルセイユ戦で勝利すれば、欧州への挑戦権を引き寄せることができる。
 ロリアン-マルセイユ戦は好ゲームとなった。マルセイユは14分ロイック・レミが先制点をあげるが後半開始早々に同点に追いつかれる。さらに80分にはケビン・ガメイロに逆転ゴールを奪われ、88分に交代出場のジニャックのゴールで同点に追いつくのが精一杯で勝ち点を1しか獲得することができなかった。

■ヨーロッパリーグ出場がかかるソショー相手に勝利したリール

 前日に試合を行ったばかりのリールはこの日は試合がなく、リール市役所の前で祝勝会が行われた。社会党首であるマルティーヌ・オブリ市長は「56年待ってタイトルを獲得した。そして今度は二冠を期待している」と市役所前に集まった多数の市民の前で高らかにスピーチしたが、マルセイユが引き分けに終わったことにより、この市長のスピーチは現実的なものになってきたのである。
 そしてリールはヨーロッパリーグ出場を狙うソショーを水曜日の夜に地元に迎える。リールにとって久しぶりのホームゲームとなり、たくさんのファンがリール・メトロポール競技場に集まる。試合開始の段階でマルセイユとの勝ち点差はちょうど3、すなわちリールがこの試合で勝利すれば、少なくともマルセイユに勝ち点で逆転されることはなくなり、最悪でも得失点差の争いとなる。一方のソショーはロリアンに勝ち点差で3まで迫られており、リール相手に勝ち点をあげて引き離したいところである。
 最低でも勝ち点1を獲得したいソショーは組織的な守備でリールの攻撃陣に得点を許さない。前半は両チーム無得点で折り返す。そして後半に入って53分、リールのジェルビーニョがゴールネットを揺れ、競技場を揺らす。ジェルビーニョはコートジボワール代表であり、2008年に日本にも遠征している。日本では観客の人種差別的な行動もあり、チーム全体に元気がなかったが、ドログバ2世と言われるジェルビーニョはその後リールに移籍し、活躍している。
 このゴールを守り切ったリールは2位マルセイユとの勝ち点差を6として優勝に王手をかけ、残り2試合に臨むのである。(続く)

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