第2205回 2部から昇格した3チーム(3) 2部昇格1年目で1部に昇格したストラスブールとアミアン

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■財政問題でCFA2部にまで降格したストラスブール

 前回の本連載で紹介したトロワは今世紀になって4回目の1部昇格という典型的なエレベーターチームであり、1部と2部を往復しているチームであるが、今回紹介するストラスブールとアミアンはそれとは対照的なチームである。いずれも昨季2部に昇格し、わずか1シーズンで1部に昇格してしまったのである。
 前年ナショナルリーグで首位だったストラスブールは1906年に誕生した伝統チームである。1933年のフランスリーグ発足時には2部に所属し、その翌年に1部に昇格、長年1部に所属し、たまに2部降格もあったが、1979年にフランスリーグ、2001年にフランスカップ、1997年と2005年にリーグカップと国内すべてのタイトルを獲得したことのあるチームである。ところが、2008年に2部に降格し、その翌年は2部で4位にとどまり、1部に復帰できず、さらにその次の2009-10シーズンには2部で19位となり、ナショナルリーグへと降格してしまった。ナショナルリーグでの成績は4位と悪くはなかったが、シーズン終了後に財政的な問題でチームはアマチュアの地位になり、5部に相当するCFA2部への降格処分を受ける。

■チームを立て直したクラブOBで元代表選手のマルク・ケレー会長

 100年以上の歴史を持つ名門クラブの救世主となったのがクラブのOBであるマルク・ケレーである。コルマール出身のケレーはストラスブール在籍中にフランス代表にも選出される。1998年のワールドカップの直前にフランス代表から外れ、2001年に現役を引退した後に、ケレーはクラブのマネジメントの道を歩む。ストラスブールのマネジメントとしてフランスカップ、リーグカップを獲得するチームを作り、モナコへと活躍の場を移した。そしてちょうどストラスブールがCFA2部で優勝し、CFAに昇格した2012年の夏に会長として戻ってきたのである。CFAは初年度に優勝して2013年からはナショナルリーグで戦う。ナショナルリーグから2部リーグに復帰するまでには3シーズンかかったが、2016年に2部復帰するとともにクラブは5年ぶりにプロのステータスに戻る。2部では前々回の本連載で紹介したとおり、最終節は昇格争いをしていた6チームの中で唯一勝つことができず、薄氷の思いで首位を死守して10シーズンぶりの1部となった。過去3年間、2部優勝チームは1部に昇格しても1年で降格という記録が残っているが、1部昇格を決め、シーズンチケットが1万5000枚売れたストラスブールはどうだろうか。

■フランスカップでは活躍するも1部経験がなかったアミアン

 ピカルディ地方の主要都市のアミアンは2回の世界大戦では大きな被害を受けた。しかしその中でリシャール・カデュダルを輩出してきた。アミアンSCは1901年設立、1970年代は2部と3部を往復するクラブである。ただ、本連載の読者の皆様は2001年のフランスカップで決勝に進出、2008年にも準決勝に進出したアミアンは1部経験があると考えておられるかもしれないが、今回の昇格が初めての1部である。2008年のフランスカップで準決勝に進出した際は2部であったが、その次のシーズンは2部18位でナショナルリーグに降格する。それ以来1シーズンだけ2部に復帰したが、最下位で再びナショナルリーグに戻る。2015-16シーズンはナショナルリーグで3位となり5年ぶりに2部復帰、今度は2位となり、初めての1部昇格となった。

■積極的な選手補強で臨む初戦の相手はパリサンジェルマン

 他の昇格チームと異なる点は積極的な選手の獲得である。ガエル・カクタについては本連載第2202回で紹介したとおりだが、それ以外にもギャンガンからマチュー・ボドメル、アンジェからイサ・シッソコなどを獲得、これはクラブの77%の株式を保有するベルナール・ジョアナン会長の経営手腕によるところが大きい。
 そして記念すべき1部の初試合は8月5日、相手はパリサンジェルマンである。アミアン出身でマルセイユのファンのエマニュエル・マクロン大統領もこの試合ばかりはアミアンを応援するであろう。(この項、終わり)

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