第2667回 2019-20フランスリーグ回顧 (3) 4年連続で優勝メンバーとなったキリアン・ムバッペ

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■パリサンジェルマンの連続優勝を中断させたモナコ

 前々回と前回の本連載では圧倒的な力量の差で優勝しているパリサンジェルマンについて紹介したが、このパリサンジェルマンの連続優勝を中断させたのが2016-17シーズンのモナコである。モナコは4連覇中のパリサンジェルマンの優勝を止めており、もしもこの年にパリサンジェルマンが優勝していれば、パリサンジェルマンはリヨンを抜く8連覇を飾っていたのである。

■4年連続で優勝メンバーとなったキリアン・ムバッペ

 このモナコの優勝については本連載第2179回から第2182回で紹介しているが、この時の中心選手がキリアン・ムバッペである。優勝時にまだ18歳だったムバッペはプロになって2年目であった。1年目はリーグ戦に11試合出場1得点であったが、2年目は29試合出場15得点を記録し、得点ランキングも5位、一躍スターダムに駆け上がった。この若きスターの争奪戦が起こったが、パリサンジェルマンがレンタル扱いで獲得し、翌シーズンからはパリサンジェルマンのムバッペとしてフィールドを駆け回る。ムバッペを獲得したパリサンジェルマンはそこから3連覇を果たす。つまり、モナコから移籍してきたムバッペは4年連続してリーグ優勝を経験しているのである。

■出場機会の限られるパリサンジェルマンで2年連続得点王

 2017-18シーズンは27試合に出場、13得点、特例で越境してきた転校生にパリのファンは拍手を送り、そのシーズンオフにはワールドカップ優勝の原動力となる。
 世界チャンピオンになったムバッペはパリサンジェルマンに移籍し、正規生となる。29試合に出場し33得点で見事に得点王に輝く。シーズン終了後に訪日していることから日本のファンの皆様も訪日時の熱狂はよくご存じであろう。
 そして迎えた2019-20シーズン、シーズン開幕前のレンヌとのチャンピオンズトロフィーで得点をあげ、パリサンジェルマンの優勝に貢献する。ムバッペは開幕戦のニーム戦でも先制点をあげる。20試合に出場し18得点で2年連続の得点王となった。選手層が厚く、チャンピオンズリーグなど他の退会との兼ね合いもあり、ターンオーバー制で試合に臨むパリサンジェルマンにあって、リーグ戦出場は27試合中20試合にとどまったが、その中で18得点は大きく評価される。まさにフランスサッカー界の至宝と言えるであろう。

■得点ランキング上位3人は現役のフランス代表

 そして、今季のフランスリーグでムバッペとともに18得点を記録したのがモナコのウィッサム・ベン・イェデルである。モナコはパリサンジェルマンより1試合多い28試合を消化し、ベン・イェデルは26試合に出場したことから、得点王はムバッペに譲っているが、スペインのセビリアから移籍した初年に期待以上の数字を残した。トゥールーズに所属していた2012年に年代別代表の試合前の合宿を抜け出してナイトクラブに行ったことから代表入りが遠くなったが、ディディエ・デシャン監督も罪を許し、2018年3月に27歳で代表デビュー、ワールドカップ出場はならなかったが、ワールドカップ後にはコンスタントに試合に出場している。遅れてきたタレントに期待したい。
 そして3位に入ったのはリヨンのムーサ・ダンベレ、16得点を記録している。ダンベレはパリサンジェルマンの下部組織時代から各年代別の代表に選出され、イングランドのフラムでプロデビューする。その後、スコットランドのセルチック・グラスゴーを経て、2018年にリヨンに移籍、プロ7年目にして初めて母国でのプロ選手となる。リヨンでの初年は15得点、そして2年目となる今季は出場試合数は前年の33から27に減ったものの16得点、ファンは来年の国内外でのダンベレの活躍を見たいはずである。
 この得点ランキング上位3人はいずれもフランス国籍である。昨年の得点王はムバッペであったが、2位はコートジボワールのペペ(リール)、3位はウルグアイのエディンソン・カバーニ(パリサンジェルマン)であった。上位3人がいずれもフランス人選手というのは11年前の2008-09シーズンのアンドレ・ピエール・ジニャック、カリム・ベンゼマ、ギヨーム・オアローまでさかのぼらなくてはならない。今年の3人はいずれも現役のフランス代表、再開の日が待ち遠しい。(続く)

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