第2875回 2021-22シーズン開幕(8) 歴史的記録が2つ生まれた第1節

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■マルセイユはモンペリエで逆転勝利

 前回は優勝候補最右翼のパリサンジェルマンが開幕戦で2部から復帰してきたトロワに対し、アウエーで逆転勝ちしたことを紹介した。
 昨季のリーグ戦は上位4チームの力が抜け出ており、これらのチームについては優勝したリールはアウエーでドロー、2位パリサンジェルマンはアウエーで勝利、3位のモナコはホームで引き分け、4位のリヨンもホームで引き分けたことを紹介した。
 昨季5位でヨーロッパリーグに出場するマルセイユはモンペリエとアウエーで対戦した。モンペリエはオリンピックにオーバーエイジで出場したテジ・サバニエはメンバーから外れるが、バックアップメンバーのディミトリ・ベルトーがゴールを守る。モンペリエが2点を先行して後半を迎えたが、マルセイユは試合を支配し、モンペリエのゴールにシュートのシャワーを浴びせる。68分にトルコ代表でイングランドのレスターシティから移籍してきたジェンギス・ウンデルが1点を返し、75分と80分にはディミトリ・パイエが連続ゴールをあげて3-2と逆転勝利している。

■新加入のカマルディーン・スレマナが得点を決めたレンヌ

 昨季6位で今季からスタートするヨーロッパカンファレンスリーグに出場するレンヌはホームにRCランスを迎える。レンヌも新戦力が活躍した。ノルウェーのノアシェランから移籍してきたガーナ代表のカマルディーン・スレマナが先制点を決める。アフリカのネイマールと言われた19歳が2万2000人の地元ファンを歓喜させる。RCランスはその直後にセコ・フォファナが同点ゴールを決めて、引き分けに持ち込む。
 このように欧州カップに出場する上位チームは初戦を引き分け以上で乗り切っている。 第1節は10試合のうち6試合が引き分けとなった。パリサンジェルマンとマルセイユ以外はアンジェとクレルモンが勝利している。

■アウエーでボルドーを破った1部初昇格のクレルモン

 この中で特筆すべきはクレルモンである。クレルモンというと松島幸太朗の所属するラグビーチーム、ASMクレルモンが有名であり、TOP14に所属し、欧州の舞台でも活躍し、欧州チャンピオンズカップでは準々決勝に進出した強豪チームである。また、日本の皆様はピエール・スベストルを連想する方も少なくないであろう。フランス中部の工業都市にありながら、サッカーチームは目立った成績を残すことがなかった。クレルモンには第二次世界大戦前には1部に所属したチームもあったが、戦後に経営破綻しアマチュアチームとなり、その後もプロになったものの、3部と4部を往復し、1984年に現在のクラブ組織となった。1988年には2部に昇格したが、1年で降格、2部に定着したのは今世紀に入ってからである。2部では中位をさまようクラブであった。話題になったのは2014年にリーグ史上初めて女性監督のエレーヌ・コスタを起用し、コスタの辞任後も女性のコリンヌ・ディアクルが監督を引き継いだことが話題になるチームであった。
 その2部が指定席のチームは2019年にオーストリアのルステナウとパートナー契約を結び、資本関係も生まれた。そして2020-21シーズンはトロワに次いで2位に入り、クラブ史上初めて1部に昇格した。史上79チーム目の1部チームに導いた原動力は地元生まれでギニア代表のモハメド・バヨ、22得点をあげている。
 昇格初戦、クレルモンはボルドーとアウエーで対戦する。終盤まで無得点が続いたが、82分にバヨが均衡を破る先制点、アディショナルタイムにもクレルモンは追加点をあげて2-0と勝利する。1部初昇格チームが開幕戦で勝利するのは1995年にギャンガン(マルティーグに勝利)以来である。さらに、それがアウエーゲームとなると1945年にサンテチエンヌを破ったルーベ以来76年ぶりである。

■ホームチームが勝利しなかったのは17年ぶり史上3回目の珍しい記録

 そして第1節でホームチームが勝ち星をあげられなかった。これは2004-05シーズンの第9節以来のことであり、その前には1966-67シーズンの最終節で起こっただけであり、史上3回目となった。ホームチームが勝利する確率は半分より若干大きいフランスリーグでは極めて珍しい結果となったのである。(この項、終わり)

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