第661回 第3のタイトル・リーグカップ(1) 2部からの降格チームが盛り上げた序盤戦

■43チームが参加したリーグカップ

 前回までの本連載ではフランスカップのベスト32決定戦について紹介したが、リーグ戦、フランスカップに比べて日程が早く消化されているのが第3のタイトルであるリーグカップである。
 1部リーグ、2部リーグのチームに加え、2部から降格したばかりでプロのステータスのあるナショナルリーグのチームも参加するトーナメントである。

■2部からの降格組、クレルモンとセートが活躍

 8月15日に行われた1回戦3試合には、2部リーグから降格したばかりのナショナルリーグの3チームと2部リーグの3チームが対戦する。降格したばかりとはいえ捲土重来を期すナショナルリーグ勢はセートがツールに勝利し、ナショナルリーグ勢同士のクレルモンとラバルの戦いはクレルモンが勝利した。その1週間後、1回戦に出場しなかった2部リーグ勢17チームが、1回戦を勝ち抜いてきた3チームに加わり、2回戦の10試合が行われた。この2回戦でクレルモンがガンガンを破り、セートはバスティアを下し、降格の悔しさを晴らす。
 そして3回戦に当たるベスト16決定戦は9月19日と20日に行われたが、ここから1部勢が登場する。通常ベスト16決定戦は16試合行われるが、このリーグカップでは14試合しか行われない。というのは1部勢のうち、チャンピオンズリーグの本戦の出場権を有している2チームはベスト16決定戦を免除され、ベスト8決定戦から出場するからである。昨年のリーグ1位のリヨンと2位のボルドーはベスト16決定戦を除外されたが、もしも除外されていなければ、その前週にあったチャンピオンズリーグのグループリーグ第1節、その翌週の第2節と、3週連続して週の半ばにリーグ戦以外の試合を対戦することになったのである。
 このベスト16決定戦でナショナルリーグから勝ち残っていたクレルモンとセートは力尽きる。クレルモンはランス(Reims)に1-3、セートはサンテエチエンヌに1-4といずれも名門チームに敗れてしまう。しかしながらこの両チームの意地は序盤戦を盛り上げたのである。

■初代欧州チャンピオンズカップのファイナリスト、ランス(Reims)

 このナショナルリーグの2チームの夢を破ったチームは共通点がある。本連載では近年リーグの上位を争うランス(Lens)がしばしば登場するが、フランスのサッカーにおいて伝説とも言うべきチームがこのシャンパーニュ地方にあるランス(Stade de Reims)であり、サンテエチエンヌである。ランス(Reims)は1950年代に栄華を誇り、記念すべき欧州チャンピオンズカップの初代のファイナリストである。欧州チャンピオンズカップの創成期に欧州の頂点を狙いながらスペインのレアル・マドリッドという白い壁を乗り越えることができなかった。
 ランス(Reims)は国内では6回のリーグ優勝、2回のフランスカップ優勝を誇るが、1961-62シーズンのリーグ優勝を最後にタイトルから遠ざかり、1978-79シーズンに1部リーグで最下位となって2部リーグに降格する。1945年に1部リーグに加盟してから初めての2部陥落であった。その後は2部での生活が続くが、1990-91シーズンを6位で終えたものの、財政問題でナショナルリーグに降格させられてしまう。そのランスが2部に復帰してきたのは2002-03シーズンのことであった。残念ながら最下位となり、1シーズンで再びナショナルリーグに降格してしまったが、1シーズンで2部に復帰、2004-05シーズンは16位、2005-06シーズンは14位とかろうじて好アックを免れていたが、今季は常に一桁順位、上位を争っている。

■リーグ最多優勝を誇るサンテエチエンヌ

 もう一方のサンテエチエンヌもリーグ優勝10回を誇る名門チームである。1976年には欧州チャンピオンズリーグ決勝に進出しながらバイエルン・ミュンヘンに敗れている。1980-81シーズンの優勝が最後のタイトルで、その後は1部と2部の間を往復している。現在は1部に所属、昨季は本連載第462回から第465回で紹介したとおり、インタートトに参戦し、久しぶりの欧州カップ出場なるかと期待されたが、実現しなかった。しかし、緑の軍団にかけるファンの思いは常に熱い。
 このフランスサッカーの伝説的なチームが今年のリーグカップの中盤戦の話題の主となったのである。(続く)

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