第710回 2007年リーグカップ決勝(3) 89分にボルドーが決勝点、リカルド・ゴメス優勝監督に

■インターナショナルマッチデーが影響したリヨンの布陣

 今季初めてのタイトルとなるリーグカップ決勝の直前に2つのインターナショナルマッチデーが設定され、リヨンの選手が多数この国際試合に出場していたことを前回の本連載で紹介した。この影響を受けて、リヨンの布陣はいつもとは若干異なるものになった。GKはリトアニア戦とオーストリア戦の両方にフル出場したグレゴリー・クーペがベンチに回り、レミー・ベルクートルがゴールを守る。4人のDFラインは左からエリック・アビダル、クリス、セバスチャン・スキラッチ、フランソワ・クレルクと3人はフランス代表の試合や遠征から戻ってきたメンバーである。3人のMFは中央の底にジェレミー・トゥーララン、左にジュニーニョ、右はポルトガル代表のティアゴとなる。そして3人のFWの中心はフレッド、右にシドニー・ゴブー、左はフローラン・マルーダとなる。11人中、直前の国際試合に出場していないのは3人のブラジル人選手とGKのベルクートルだけである。さらに国際試合明けということでカリム・ベンゼマ、シルバン・ビルトール、キム・カルストローム、ミラン・バロシュなどがベンチスタートである。
 一方のボルドーは通常通りのメンバーであり、主将を務めるのはフランス代表の控えGKだったウルリッヒ・ラメ、そしてこちらもエンリケ、フェルナンド、ベンデルと3人のブラジル人選手が先発メンバーに名を連ねる。

■リーグカップ史上最多の79,702人の観衆

 試合は79,702人というこれまでのリーグカップ史上最多の観客を集める。これまでの最多観衆記録は2005年の決勝のストラスブール-カーン戦の78,721人である。この時のストラスブールのGKが現在リヨンの控えGKでこの試合ピッチに立つことになったベルクートルであり、ストラスブールが2-1で勝利し、優勝を飾っている。ベルクートルは今季のリーグ戦はわずかに5試合にしか出場していないが、自信があるのは2年前のこの大会で優勝しているからであろう。

■ジョアン・ミクーのCKをエンリケがヘッドでゴール

 試合はフランスサッカー史上有数の大観衆の中で行われたが、両チーム攻め手を欠き、低調な試合になった。また、この試合が初めてのカップファイナルの主審となったエルベ・ピッチリロ氏もうまく試合をコントロールできず、本来ならば重い反則を課すべきプレーを見逃すなど、本来の攻撃的なレフェリングが見られない。
 リヨンがボールを支配し、ボルドーは守勢に回り、リヨンは次々とシュートを放つ。しかし、リヨンの選手を疲労が支配しているのであろうか、決め手に欠き、ゴールネットを揺らすことができない。FKの名手であり、直前に試合のなかったブラジル人のジュニーニョも後半半ばに交代させられる。
 両チーム無得点のまま、試合時間は90分に近づく。このまま延長突入かと思われた89分、ボルドーがCKオチャンスを得る。このCKを蹴るのが前回の本連載で紹介したジョアン・ミクーである。ミクーのCKのターゲットはゴール前に上がってきたストッパーのエンリケであった。エンリケは同じブラジル人のクリスに競り勝ち、ヘッディングシュートで決勝ゴールを上げたのである。

■スタッド・ド・フランス初の優勝監督リカルド・ゴメス、9年ぶり優勝

 守備的な試合運びをし、これといってチャンスらしいチャンスのなかったボルドーであるが、最後の最後に決定的なチャンスをものにして5年ぶり2度目のリーグカップ獲得を果たした。代表の試合から帰ってきたばかりの選手を多く抱えるリヨン、守備的な試合運びに終始したボルドーと、試合内容は低調であったが、その中で試合を盛り上げたのが両チームのブラジル勢である。
 そして忘れてはならないのがボルドーの監督のリカルド・ゴメスである。ブラジル代表のストッパーとして活躍したリカルド・ゴメスは1991年にベンフィカからパリサンジェルマンに移籍し、リーグ戦、フランスカップを獲得している。現役を退いた後は指導者の道を歩み、1996年にパリサンジェルマンの監督に就任、1998年にはリーグカップとフランスカップの2タイトルを獲得している。スタッド・ド・フランスで初めてタイトルを獲得した監督となったわけである。ちなみにこの年のリーグカップ決勝の相手はボルドーであった。ブラジルでも監督を務めたリカルド・ゴメスにとって9年ぶりのタイトルになった。
 今季はスタッド・ド・フランスでカップファイナルが行われるようになって10年目となる。初めてのスタッド・ド・フランスでのファイナルに敗れたチームを、初年度に二冠を獲得した監督が率いて優勝した。歴史の綾を感じざるを得ないのである。(この項、終わり)

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