第934回 着々と進む国内カップ(3) 準決勝に初進出のバンヌ、3年ぶりのニース

■リーグカップ準々決勝進出チームは1部と2部から4チームずつ

 フランスリーグ、フランスカップに次ぐ第3のタイトルがリーグカップである。第3のタイトルではあるが、優勝チームにはUEFAカップへの出場権が与えられること、そして日程消化が早いため、欧州カップへの出場権をいち早く獲得できるチャンスがあること、テレビ中継の機会が多いこと、このような要因があいまって、近年ファンの関心が高まっているタイトルである。
 今季のリーグカップについては本連載ではまだ紹介していなかったが、9月3日に開幕している。9月上旬に1回戦と2回戦を行い、9月下旬に行われるベスト16決定戦が、3回戦に相当し、1部勢が参戦してきている。ベスト16の顔ぶれは1部が9チーム、2部から6チーム、ナショナルリーグから1チームであった。
 ベスト8決定戦は11月に行われ、1部勢はニース、ルアーブル、ボルドー、パリサンジェルマン、2部勢はバンヌ、メッス、シャトールー、ランスとそれぞれ4チームが準々決勝に進出した。

■カップ戦に強いメッスのイボン・プリカン監督

 準々決勝は1月13日にバンヌ-メッス戦とニース-ルアーブル戦、14日にボルドー-シャトールー戦とパリサンジェルマン-ランス戦が行われた。
 バンヌとメッスは2部勢同士の一戦となったが、ベスト8決定戦では、バンヌはオセールを下し、メッスもリヨンを下してきている。メッスの監督はイボン・プリカンであり、1部の最下位を低迷していた昨年の初めにメッスの監督に就任している。新監督の招聘もむなしく、メッスは2部に降格してしまったが、このプリカン監督はカップ戦を得意にしている。
 昨年のフランスカップでも就任後に始まったベスト32決定戦を勝ち抜き、ベスト16決定戦ではストラスブール、ベスト8決定戦ではロリアンと1部勢を下し、準々決勝で優勝したリヨンに0-1と惜敗している。リーグで最下位に沈んでいたチームにとってこのフランスカップでの活躍は異例のことであり、監督の手腕によるところが大きい。また、プリカン監督は2001年にストラスブール、2002年のロリアンと連続してフランスカップの優勝監督となっている。

■PK戦を制したバンヌ、クラブ史上初の準決勝進出

 そのカップ戦を得意とするプリカン監督率いるメッスは2部リーグでは6位であり、8位のバンヌをわずかにリードしている。バンヌで行われた試合は5000人の観衆を集めた。バンヌは2年前のフランスカップでも準々決勝でマルセイユに0-5と敗れており、この壁を破りたいところである。バンヌは前半終了間際に先制するが、後半開始早々にメッスが追いつく。その後は両チーム得点なく、延長戦に入ってもゴールネットが揺さぶられるシーンはなかった。結局PK戦で準決勝進出を決めることになり、バンヌが4-3で競り勝つ。バンヌはクラブ史上初めて、カップ戦で準決勝に進出したのである。

■終了間際の得点で3年ぶりに準決勝に進出したニース

 同日に行われたニース-ルアーブル戦は準々決勝で唯一の1部勢同士の戦いである。バンヌ-メッス戦がローカル放送であるのに対し、このニース-ルアーブル戦は全国中継である。ニースはこの段階でリーグ戦8位、チームに連勝して準々決勝進出でリーグカップでは初めての1部勢との対戦である。一方のルアーブルは20試合を終えたところで3勝3分14敗と言う成績で、勝ち点わずか12で最下位であり、2部降格に危機に瀕している。ただし、準々決勝進出までの足取りはリーグ戦の戦いとも、ニースの戦績とも対照的である。ルアーブルはリーグカップではカーン、レンヌと1部勢に連勝してきた。リーグ戦で20試合して3回しか勝てない1部勢との対戦であるが、リーグカップでは2戦2勝と見違えるような成績を残している。
 ルアーブルはチームの再構築を図っており、この試合の主将はストッパーのアバッス・バが務めた。バは32歳の選手であるが1部リーグには今季デビューしたばかりと言う遅咲きの苦労人である。
 そのバがマークするのがニースのCFのロイック・レミである。レミは今季から加入した選手であるが、これまでに所属したチームはリーグカップで好成績を残している。昨年、昨年はランス、一昨年はリヨンのメンバーとしてリーグカップで準優勝を果たしている。
 力の均衡する試合となり、両チーム無得点で時計の針は動いていったが、89分にレミがチャンスをつくり、セドリック・カンテが決勝点をあげる。ニースはナンシーに決勝で敗れ、準優勝となった3年前以来の準決勝進出を果たしたのである。(続く)

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