第10回 フランス、アルジェリアと初対戦(6) 緊張高まる初対決

■フランスにとってこの試合の3つの重要性

 フランスにとって相手がアルジェリアであることからスポーツ以外の分野でも過熱気味の盛り上がりとなる初対決であるが、フランス代表にとっても以下の3つの点で重要な試合である。
 ワールドカップ・米国大会予選でイスラエルとブルガリアに連敗した1993年以来、年間で2敗したことはない。しかしながら今年は早くも3敗。ワールドカップを来年に控え、不安の残る成績である。相手がFIFAランキングで76位とは言え、ホームで負けるわけにはいかない。
 そして年内には代表の試合は11月11日にメルボルンで行われる豪州戦だけであるが、この遠征にベストメンバーを組むことは難しそうである。したがって、ベストメンバーでの次の代表の試合は年明けの2月13日のルーマニア戦まで待たなくてはならない。
 さらに来年のワールドカップまでアフリカのチームと試合をするのはこのアルジェリア戦が最後である。来年の本大会ではアフリカ勢と対戦する可能性も大いにあるため、アフリカのチームとのテストマッチは重要な機会である。

■直前に集合したフランスのベストメンバー

 このようなグラウンド内外での緊張が高まる中で20人の選手がブルーのユニフォームを着ることになった。スペインリーグと日程が重なっていたが、レアル・マドリッドのジネディーヌ・ジダンとクロード・マケレレはパリに戻ってきた。イタリア、ドイツ、イングランドは同じ日にワールドカップ予選が行われたためリーグ戦はなく、ベストメンバーが揃った。
 しかし、ほとんどの選手はこの試合の直前までリーグ戦を戦っており、クレールフォンテーヌに集合したのは試合の2日前の4日のことである。またボルドーのクリストフ・デュガリーがパリサンジェルマンとのリーグ戦で負傷したため、ベンチ入りしたが、左サイドは別の選手が受け持つこととなった。

■直前にようやくメンバーが決まったアルジェリア

 一方、アルジェリア代表は9月末に27人を代表選手として発表し、9月30日にパリ入りしている。そのうち12人がフランスリーグに所属している。この27人という選手の数はフランスの2部リーグに所属する選手も多く、代表戦の直前の4日あるいは5日に2部リーグの試合があるため、各クラブとの調整が必要なためである。
 結局、ルアーブルに所属するマーマル・マムニとカリム・ケルカーはクラブの試合を優先し、スタンド観戦になるなど、最終的には22人がベンチ入りし、主将のアブデルファヒッド・タスファウト(ガンガン)をはじめとする9人がフランスリーグに所属している選手になった。
 そして10月2日にはかつてフィリップ・トルシエが監督を務め日本の皆さんにもなじみの深いクレテイユと練習試合を行っている。現在2部リーグで17位と下位リーグ降格の危険性のあるクレテイユは5日のバスケル戦に向けた調整試合であった。ところが、パリ郊外のドミニク・デュボーシェル競技場は試合の2時間前から5000人のアルジェリア人がうめつくし、警備も週末のフランス戦を意識したものとなり、異様な雰囲気に包まれた。ロジェ・ルメール監督以下代表スタッフも当然スカウティングのためスタンドに姿を現す。この試合、アルジェリアは伝統の技術力の高さを見せつけ、前半11分にタスファウト、終了間際の88分にトロアに所属するファリッド・ガジが追加点をあげ、2-0で順当勝ちした。

■いよいよ決戦の日、スタジアムは異様な雰囲気に

 ついに決戦の日がやってきた。満員となったスタッド・ド・フランスでブルーを待ち受けていたのは三色旗ではなく、白と緑の無数のアルジェリア国旗である。発売とともに瞬く間に売り切れたチケットのほとんどはアルジェリア人あるいはアルジェリア系フランス人が所有していたのである。米国の同時多発テロ、現在でもテロが多発するアルジェリアの来訪、そして独立までのフランスとアルジェリアの歴史、このような状況で前例のない警備がなされ、警官の数は1200人とワールドカップ時の2倍。自動車での来場は禁止され、付近を通過する自動車はトランクをチェックされた。
 そして歴史をさかのぼれば10月6日というのは40年前パリで警官がアルジェリア民族解放戦線に襲撃された日であり、異様な雰囲気の中、両チームのイレブンはピッチに姿を現したのである。(続く)

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