第11回 フランス、アルジェリアと初対戦(7) 国外流出組のフランス、MADE IN FRANCEのアルジェリア

■相性のよいスタッド・ド・フランスにフランス代表が登場

 超満員のスタンドに両チームの選手が姿を現す。フランス代表がスタッド・ド・フランスで試合をするのは4月のポルトガル戦以来ほぼ半年ぶりで今年4試合目。今年に入ってフランス代表はすでに3敗を喫しているが、スタッド・ド・フランスではドイツ、日本、ポルトガルと強豪を破っている。試合前にはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の松浦晃一郎事務局長から両チームに対し「平和のためのスポーツ賞」が授与されたことからもこの試合が国際政治的にもどれだけ重要であるかがおわかり頂けるであろう。

■定番の4-2-3-1フォーメーション

 フランスはエメ・ジャッケ前監督が確立した定番とも言える4-2-3-1のフォーメーション。GKにファビアン・バルテス、DFは左からバンサン・カンデラ、マルセルセル・デサイー、フランク・ルブッフ、リリアン・テュラム、守備的MFにはエマニュエル・プチとパトリック・ビエイラ、攻撃的MFは中央にジネディーヌ・ジダンが控え、左にティエリー・アンリ、右にロベール・ピレス、そして唯一のFWにはダビッド・トレゼゲである。おそらく攻撃的MFの両翼のアンリとピレスという組み合わせは初めてのことであろう。

■フランス色の強いアルジェリア代表

 一方、アルジェリアはGKヒシェム・メゼール、DFはフランス同様4バックで左からムーレイ・ハドゥー、メディ・メニリ、モハメッド・ブラジャ、スリマン・ラホ、MFはかなり低めに配置され左からヤジッド・マンスーリ、ナスレディン・クラウッシュ、オマール・シェリフ・ベルベイ、FWは左に主将アブデルファヒッド・タスファウト、中央にファリッド・ガジ、右にジャメル・ベルマディという布陣である。
 注目すべきはフランス代表にフランスリーグ所属の選手がマルセイユのルブッフだけであるのに対し、アルジェリアはなんと7人がフランスリーグに所属していることである。7人の内訳はトロア3人(メニリ、ブラジャ、ガジ)、モンペリエ1人(ベルベイ)、マルセイユ1人(ベルマディ)、ガンガン1人(タスファウト)、2部のルアーブル1人(マンスーリ)である。フランス国内のファンはブルー(フランス代表の愛称)のプレーよりもフェネック(アルジェリア代表の愛称)のプレーをリーグ戦で目にしているのである。
 そして、これは単純に選手の所属クラブの問題にとどまらない。アルジェリア代表のフランスリーグ勢のうちブラジャ、メリニ、ベルマディはフランス生まれのフランス育ちであり、フランス国外で生活したことがない。その他の多くの選手もプロサッカー選手としてはフランスリーグに所属し続けている。一方のフランス代表はマルセイユに所属しているルブッフもフランス人プレミアリーガーの草分け的な存在であり、全員がフランス国外でのクラブ経験がある。そういう点ではフランス代表選手以上にフランスのサッカーに慣れ親しんでいるアルジェリア代表のイレブンなのである。

■感慨にふける間もなくキックオフ

 このスターティングラインナップの生い立ちやサッカー選手としてのキャリアを考えてみると、ナショナリズムというものは今日のスタジアムにおいてどのような意味を持つのであろうか。
 そのような感慨にふける間もなく、ポルトガル人の主審のゴメス・コスタ氏のキックオフの笛が吹かれたのである。(続く)

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