第15回 フランス、オセアニアに初遠征(3) 4年に一度のドリームチーム

■国民の期待高まるドリームチーム

 様々な障壁をクリアし、いよいよ試合の日がやってきた。メルボルン・クリケット・グラウンドは雨が強く降るあいにくの天候となったが、53,228の観衆が集まった。これだけの観衆が集まった理由はいくつかある。まず、メルボルンでは2年ぶりの代表の試合であるということ。そして世界チャンピオンの来豪は1988年のアルゼンチン以来史上2回目であること。建国200年を記念したゴールデンカップに招待したアルゼンチンを豪州が4-1と一蹴しており、再び金星を期待する豪州国民の気持ちもよくわかる。そしてワールドカップの南米予選の5位チームとのプレーオフを控えており、久しぶりにベストメンバーが サッカルーズと言う愛称のある豪州代表チームに揃い、ドリームチームが結成されたからである。
 オセアニア連盟に属する豪州の連盟内でのライバルはニュージーランドくらいであるが、今年のワールドカップ予選ではホーム、アウエーともニュージーランドを下しており、プレーオフで初めて力の拮抗した相手と戦うことになる。また、親善試合の機会にも恵まれず、今年はこれが13試合を戦ったが、そのうち親善試合は年初のコロンビア戦だけであり、ワールドカップ予選やコンフェデレーションズカップなど内容よりも結果を求められ、力量にも差がある相手との試合がほとんどであった。また、スケジュールの問題もあり、ベストメンバーを揃える必要のない試合が続いたのである。

■注目のリーズ・コンビ、キューウェルとビドゥガ

 選手招集に苦労した豪州代表であるが、直前の国際試合は8月に連盟代表として日本と戦ったAFC/OFCチャレンジカップという権威のある試合であり、その時の19人のメンバーのうち、今回も名を連ねているのはわずか3人である。チャレンジカップの際は豪州リーグの選手がほとんどであったが、今回のスターティングイレブンは全員欧州のリーグに所属している選手である。小野伸二のフェイエノールトでのチームメイトであるブレット・エマートンなど日本の皆さんにもお馴染みの選手もいるが、注目すべきはツートップのハリー・キューウェルとマーク・ビドゥガの2人である。リーズ・ユナイテッドで活躍するこの2人は久しぶりに母国の代表チームに合流することになる。欧州での活躍とは裏腹に代表歴は26才のビドゥガは16試合、23才のキューウェルに至ってはわずか9試合である。ビドゥガは昨年3月以来の代表入りであり、キューウェルは前回のワールドカップ予選以来、代表の試合は2試合101分間しか出場していない。欧州で活躍しているこの2人はメディア王・ルパート・マードックの母国では衛星放送で見る対象であり、彼らの姿を生で見る機会はほとんどないのである。

■地元・豪州の審判団

 前回の連載でフランスにとってこの遠征が例外だらけであると指摘したが、そもそも豪 州代表にとってもベストメンバーが揃うのは4年に一度のワールドカップ予選のプレーオフの時だけ、ということでベストメンバーで試合を行うことが「例外的」なのである。
 さて、フランス代表にとってこの遠征の例外がさらに一つ加わった。それはこの試合の審判団である。このような親善試合の場合、主催国は同一連盟内の他の国から審判団を招聘するのが通例である。したがって、この試合はオセアニア連盟に所属する他国の審判団が来るはずだが、豪州協会は「豪州以外のオセアニアには優秀な審判はいない」ということで、豪州人の審判団でよいかをフランス協会に打診してきた。様々な障壁を越えて遠征を行ったフランス協会としても受け入れないわけにはいかず、結局対戦相手の国の審判団で試合が行われることになったのである。かつてイスラエルがアジア連盟に所属していた時代に日本との対戦で欧州から審判を招聘し、涙をのんだ日本のファンの皆さんには信じられない話であろう。

■財政難の豪州代表チームを資金援助する韓国企業

 しかし、これは単純に「審判の技術の問題」だけではないだろう。豪州協会が「4年に1 度のベストメンバー」のためにかけた費用は10億円をはるかに超す金額である。豪州代表チームは以前から韓国企業の資金援助を受けていたが、今回のプレーオフを控えてスポンサーが別の韓国企業に変わった。代表チームはサッカルーズという愛称があるが、その前に企業名がつく。日本の皆さんにとって豪州代表サッカーチームは日本のプロ野球のようなチーム名がつけられていると言えば理解しやすいであろう。しかしながら、韓国を代表する企業の資金援助をもっても審判問題まで解決できず、まだまだ韓国経済の不十分さを 感じてしまうのである。(続く)

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