第27回 2002年アフリカ選手権(2) フランスで活躍するアフリカ人選手たち

■ワールドカップ常連国のカメルーン、ナイジェリア

 前回は63人のフランスのクラブに所属している選手が出場することもアフリカ選手権がフランスで大きな関心を持たれている理由であると説明した。今回は、その63人のアフリカ人選手についてスポットをあてることにしよう。
 まず、ワールドカップ常連国のカメルーン、ナイジェリア。カメルーン代表には6人のフランスリーグ所属選手がいる。GK王国の正GKはメッスのジャック・ソンゴである。DFにはビル・チャト(モンペリエ)、MFではマルク・ビビアン・フォエ(リヨ
ン)、サロモン・オランベ(マルセイユ)、エリック・ジャンバ・ジャンバ(ナント)とフランスのビッグクラブを支える選手が名を連ねる。FWにはスダンのピウス・エンディフィがメンバー入りしている。
 ナイジェリアはマルセイユのジョセフ・ヨボとパリサンジェルマンのジェイ・ジェイ・オコチャの2人がエントリーしている。

■フランス人になじみの深い19人のセネガル代表選手

 しかし、フランスで関心が高いのは世界の桧舞台に顔を出し、ブラウン管を通して見ている選手ではない。むしろ毎週行われているリーグ戦でクラブの中心となり、ブラウン管ではなくスタジアムで見ている選手である。5月に開幕するワールドカップ。京城でのフランスの初戦の相手はセネガルである。22人のセネガル代表のうち19選手がフランスでプレーし、フランスリーグの主役となっている。一方フランス代表の選手のほとんどは国外でプレーしており、代表の試合をのぞくと欧州カップの試合でもない限り、スタンドではお目にかかれないような状況になっている。フランス人はフランス代表選手よりもセネガル代表選手のプレーを目にする機会の方がはるかに多く、「なじみのチームの主役が自国の代表を敵に回す」ことになっている。

■上位チームを支えるアフリカ人選手

 さて、おおよそ6割の試合を消化した今季のフランスリーグ。首位はランスで、リヨン、パリサンジェルマン、リールなどが追う展開となっている。フランスの北東部は20世紀前半に炭坑で潤い、ポーランドなどからの移民が産業とサッカーを支えてきた地域である。当然ファンも熱心で、ランス、リールが好調な今年はファンのボルテージも高くなっている。首位のランスからは今回のアフリカ選手権にフランスリーグから最多の6人がエントリーされている。6人のうちの4人はセネガル代表でフェルディナン・コリー、エル・ハジ・ディウフ、パプ・サール、パプ・ブーバ・ディオップ、残り2人は開催国マリのアダム・クリバリーとアブドゥラエ・カマラである。ランスの6人に続くのがリール、スダンの4人、マルセイユ、オセール、モナコの3人である。このようにリーグの上位のチームは今回のアフリカ選手権へ出場する選手が多いチームばかりであることがわかる。

■注目の北部ダービー、リール-ランス

 グラウンドの凍結などで大幅に日程消化が遅れている今季のフランスリーグであるが、アフリカ選手権開幕を前に第21節が1月12日に開催された。第21節の注目カードは「北部ダービー」にあたるリール-ランス戦。テレビ中継されるため、他の試合の一日前に試合が予定された。試合開始の段階で首位ランスは19試合消化で勝ち点41、リールは19試合消化で勝ち点33の4位である。残り試合を考えれば、リールの逆転もありうる。すでにアフリカ選手権の開幕1週間前ということでほとんどの選手は代表チームに合流しているが、セネガルの場合、選手の多くは第21節を戦ってから代表に合流する。その結果ランスはマリ代表のクリバリー、カマラとセネガル代表のディオップを失い、ホームのリールはモロッコ代表のサラエディン・バシール、アブデリラ・ファミ、トーゴ代表のアデカンビ・オルファデの3人を失った布陣で、セネガル代表のシルバン・エンディアエだけがアフリカ選手権出場選手である。
 チケットは前売りで完売、伝統のダービー、テレビ中継、セネガル人選手の残留と条件は整ったが、肝心のリールのグリモンペレス・ジョーリス・スタジアムは凍結しており、リールは練習場も凍結し、人工芝の上での練習という状況で開催が危ぶまれた。しかし、リーグ当局は試合を強行開催し、結局ランスが1-0で勝利し、首位の地位を磐石なものにした。リールには気の毒な試合開催であったが、この理由はチケットやテレビ中継というビジネス上の理由ではなく、5月4日という過去に例のない早い時期のシーズン閉幕に間に合わせるためである。極東の多雨の気候が早めたワールドカップのスケジュールが真冬の欧州の悪条件下での試合を強行させているのである。(続く)

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