第150回 レキップ紙の選んだ世界のベストイレブンとフランスの最優秀チーム

 読者の皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

■スポーツシーンが小休止する年末に恒例の年間ランキング

 パリ・ダカール・ラリーを控えた年末にはフランスのスポーツシーンは小休止する。ほとんどの欧州諸国も年末年始休暇を迎えているが、母国イングランドだけは年末年始休暇もなく、試合が行われている。日本で年末年始休暇に大観衆を集めて試合が行われるのは、英国との長い友好の証しであろう。
 スポーツイベントの少なくなる年末にフランスのスポーツ紙レキップは各種の年間ランキングなどを発表する。サッカーに関しては記者投票により、12月23日にフランスリーグのベストイレブン、12月27日に世界のベストイレブンが発表された。

■世界のベストイレブンに4人が入る

 世界のベストイレブンは以下のとおりである。GKはオリバー・カーン(ドイツ)、右DFはカフー(ブラジル)、ストッパーはルシオ(ブラジル)とパオロ・マルディーニ(イタリア)、左DFはロベルト・カルロス(ブラジル)、守備的MFはパトリック・ビエイラ(フランス)とクロード・マケレレ(フランス)、攻撃的MFはジネディーヌ・ジダン(フランス)とミハエル・バラック(ドイツ)、FWはロナウド(ブラジル)とティエリー・アンリ(フランス)というメンバーになった。
 昨年はワールドカップを始め、クラブレベルでもいいところがなかったフランスサッカー界であるが、11人のうち4人がフランス人選手を占めた。フランスのジャーナリストによる投票と言うことでもちろん身内びいきということもあるだろうが、今までのフランス人選手の選出歴を振り返ってみよう。2001年は4人(ビシャンテ・リザラズ、ビエイラ、ジダン、アンリ)、2000年は5人(ファビアン・バルテス、マルセル・デサイー、ビエイラ、ジダン、アンリ)、1999年は1人(バルテス)、1998年は5人(リリアン・テュラム、ローラン・ブラン、エマニュエル・プチ、バルテス、ジダン)、1997年は2人(テュラム、ジダン)と推移しており、フランスびいきは認められるものの、2002年の4人というのは平均より多く選出されている。ワールドカップで惨敗した今年も個々の選手のパフォーマンスが悪かったわけではない。

■フランス最優秀チームはラグビーのフランス代表、影の薄い男子サッカー

 ところが、それに先立つ12月24日、フランス最優秀チームが発表され、非常に興味深い結果が出ている。これはあらゆるスポーツでフランスの単独チーム、ナショナルチームのうち最も活躍したチームを記者投票ではなく、12月上旬の新聞に掲載されていた応募用紙を送付するというかたちの読者投票で行われた。日本でも同様の試みがいくつか行われ、ワールドカップで決勝トーナメントに進出した日本代表チームが軒並み選ばれているそうであるが、フランスではそれとはかなり異なる結果となった。
 読者投票の結果、6か国対抗となってから初のグランドスラム(全勝優勝)を達成したラグビーのフランス代表チームが全投票の4分の1のポイントを集めて1位に輝いた。2位はワールドカップ初出場を決めた女子サッカーのフランス代表チーム。3位はWRC世界ラリー選手権でマニュファクチャラーズ選手権、ドライバーズ選手権(マーカス・グロンホルム)の二冠を制したプジョー・スポーツ・チーム。4位はスペインで開催された世界選手権の障害飛越で優勝した馬術のフランス代表チーム。5位にデビスカップ決勝で惜しくもロシアに逆転負けを喫したテニスのフランス代表チーム。6位は世界選手権で3位に入った男子バレーボールのフランス代表チーム。7位は女子バスケットボールの欧州とフランスのチャンピオンとなったUSバランシエンヌと男子バレーボールの欧州チャンピオンズリーグで優勝したRCカンヌが並ぶ。9位にようやく男子サッカーでリーグ優勝を果たしたリヨンが顔を見せる。
 2位の女子サッカーのフランス代表チームは本連載の第126回から第131回、5位のテニスのフランス代表チームは本連載の第135回から第139回、6位の男子バレーボールのフランス代表チームは本連載の第88回で取り上げているので、関心のある読者の皆様はバックナンバーをご参照いただきたい。

■幅広いスポーツに関心を持つフランスのスポーツファン

 この結果を見ると、今回の投票に参加した読者がいかに幅広いスポーツに関心を持っているか、そして昨年のフランスサッカーの成績に対して厳しい評価を下しているかがよくわかる。確かにフランスサッカーを支える個人レベルは悪くはない成績であったが、サッカーは団体スポーツである。個人主義の国フランスにも、素晴らしいチームワークを見せてくれたチームを正当に評価する土壌が、しっかりと存在するのである。(この項、終わり)

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