第192回 イングランド、ドイツ、イタリアでタイトル狙うフランス人選手

 前回の本連載ではシーズンのフィナーレを迎える5月のフランスサッカーを紹介したが、6月の下旬までシーズンが続くスペインを除くイングランド、ドイツ、イタリアも5月にシーズンのフィナーレを迎える。今回これらの国でタイトルを狙うフランス人を紹介しよう。

■今年もフランス勢が活躍したプレミアリーグ

 まず、欧州の有力リーグの中で、いち早く5月11日に全日程を終えるイングランドのプレミアリーグ。最終節を残してマンチェスターユナイテッドが5月4日の第37節で優勝を決めたばかりである。2年ぶり15度目の優勝を決めた黄金軍団ではGKのファビアン・バルテス、DFのミカエル・シルベストル、ローラン・ブランと言う3人のフランス人選手が活躍している。
 惜しくも優勝を逃してリーグ2位が確定したアーセナルは5月17日に行われるFAカップの決勝に進出し、サウサンプトンと対戦する。アーセナルには監督のアルセーヌ・ベンゲルを初め、多くのフランス人選手が所属している。パトリック・ビエイラ、ロベール・ピレス、シルバン・ビルトール、ティエリー・アンリと言うフランス代表選手以外にもGKのギヨーム・ワルミューズ、DFのパスカル・シガン、若手のジェレミー・アリアディエールと7人のフランス人が名を連ねている。アーセナルと伝統のFAカップの決勝を争うサウサンプトンにもファブリス・フェルナンデスが活躍しており、今年もFAカップ優勝メンバーにフランス人選手がいることになる。
 また、イングランドではリーグカップの決勝がすでに3月2日に行われ、フランス人監督ジェラール・ウリエの率いるリバプールが優勝した。ジャック・サンティーニ新体制の船出となる昨年8月のチュニジア戦で代表にデビューしたブルーノ・シェルーなど4人のフランス人選手が一足早い栄冠に輝いている。

■ブンデスリーガで独走優勝したバイエルン・ミュンヘンの両サイドバック

 次に紹介するドイツはリーグの最終節が5月24日、カップ戦の決勝が5月31日といずれもフランスと同じである。本連載の第180回で紹介したように、リーグ戦ではバイエルン・ミュンヘンが独走し、4月26日の第30節でウォルフに勝ち、早々と優勝を決めた。バイエルン・ミュンヘンと言うと1970年代の黄金時代に欧州チャンピオンズカップでフランス勢の前に立ちはだかり、悔しい思いをしたチームであるが、1990年代に至宝ジャン・ピエール・パパンが移籍した時には、フランスでは驚きの声があがった。今回の優勝メンバーにはビシャンテ・リザラズ、ビリー・サニョルと言うフランス代表の両サイドバックが所属し、活躍している。
 バイエルン・ミュンヘンはドイツカップの決勝にも進出している。決勝の相手のカイザースラウテルンにフランス人選手はいないが、バイエルン・ミュンヘンのフランス人コンビが二冠を獲得するか、注目したい。

■有力チームにはフランス人がいるセリエA

 そして欧州チャンピオンズリーグの準決勝に3チームを送り込んでいるイタリアのセリエA、最終節の第34節は5月25日に行われるが、第31節を終了した段階で1位ユベントス、2位インテルミラノ、3位ACミランとセミファイナリストたちが首位を争っている。ユベントスにはダビッド・トレゼゲ、リリアン・テュラム、インテルミラノにはステファン・ダルマ、ACミランにはイブラハム・バというフランス人選手が所属している。フランス代表レベルの選手がイタリアからイングランドへ大量に流出したが、リーグ優勝を狙うチームの屋台骨としてフランス人選手が活躍しているのである。
 イタリアだけはカップ戦の決勝がホームアンドアウエー方式で行われる。決勝に進出したのはASローマとACミランであり、5月20日にローマのスタディオ・オリンピコ、5月31日にミラノのサンシーロで行われる。ローマにはオリビエ・ダクール、バンサン・カンデラという新旧代表メンバーに加え、巨漢DFのジョナタン・ゼビーナというフランス人選手が栄冠を目指している。

■プレミアリーグの最優秀選手はアンリ、ベスト11に4人のフランス人

 最後に個人タイトルに注目しよう。ワールドカップを控えた1年前を思い起こすと、アンリがプレミアリーグの得点王、トレゼゲがセリエAの得点王に輝き、フランスリーグのジブリル・シセと並び3人の得点王として注目を集めた。アンリは現在23得点で、ルート・ファンニステルローイ(マンチェスター・ユナイテッド)とは1点差でチャンスはあるが、トレゼゲは負傷もありわずか7得点、トップのクリスチャン・ビエリの24得点と大きく離れている。それでもフランス人選手の中でトップの得点者はトレゼゲであり、一抹の寂しさを感じる。
 得点王争い以外については、プレミアリーグの選手投票による最優秀選手にアンリが選ばれ、ファン投票によるベスト11に、ピレス、アンリ、ビエイラ、ウィリアム・ガラス(チェルシー)という大量4人が選出されたことは喜ばしいニュースである。(この項、終わり)

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