第242回 2003年女子ワールドカップ(4) ワールドカップ初勝利、韓国を破る

■米国で負けられないフランス

 記念すべきワールドカップ初めての試合で強豪ノルウェーに敗れたフランス。決勝トーナメント進出のためにはワールドカップ初勝利が必要である。ワールドカップ初出場の女子サッカーであるが、どうしてもグループリーグでは敗退できない2つの理由がある。それはまずこの大会が米国で開催されているということである。フランスと米国とは今春以来、イラク戦争に関して、国際政治の場で激しく対立してきた。米国は地元開催であり、しかも前回優勝の実力を誇る優勝候補、一方のフランスは欧州予選で最後のチケットをようやく獲得して初出場、このように力からの差があるとは言え、米国の地で情けない姿をさらすわけにはいかない。

■ギリシャでは女子バスケットボールチームが決勝トーナメント進出

 そしてもう1つの理由は同時期に女子の他の競技でもフランス代表が活躍しているということである。来年にオリンピックを控えるギリシャではバスケットボールの女子欧州選手権が9月19日から開催されている。2年ごとに開催されるこの大会は、上位3チームまでに来年のオリンピック出場のチケットが渡される。フランスは前回大会で優勝しており、今回もロシアに次ぐ優勝候補の一角である。イスラエル、セルビア・モンテネグロ、ポーランド、チェコ、ギリシャと同じプールAに入り、決勝トーナメントを目指すことになる。男子の欧州選手権は今月上旬にスウェーデンで開催され、フランス男子は4位に終わり、来年のオリンピックのチケットを獲得することはできなかった。しかし、女子は是非とも出場権を獲得して欲しいものである。男子の雪辱を果たしたい女子バスケットボールチームは、イスラエル、ポーランド、ギリシャに勝利し、3勝2敗の成績で決勝トーナメントに進出し、決勝トーナメント1回戦では優勝候補筆頭のロシアに挑戦することになっている。バスケットボールについては米国でのトニー・パーカーの活躍により、今年になって人気が急上昇しており、サッカー人気の回復のためにも意地を見せたいところである。

■ワールドカップ初出場、初勝利を狙うアジアの虎、韓国

 このように米国とバスケットボールというライバルにはさまれ、決勝トーナメント進出という目標を背負うフランス代表は首都ワシントンDCで韓国との戦いに挑む。男子の韓国はワールドカップの常連であるが、女子は今回が初出場である。今大会は16チームが出場しているが、初出場はフランス、韓国とグループCのアルゼンチンだけであり、グループリーグでは唯一の初出場同士の対戦となる。フランスにおける女子サッカーの競技人口は4万2000人と、男子の200万人と著しくバランスを欠いているが、韓国の場合はもっと極端で女子サッカーの競技人口はわずか1000人しかいない。このように過去の実績、競技人口ともに物足りない韓国であるが、レベルの高いアジア予選で日本を破ったことは昨年の男子の活躍に大きく影響を受けていることの現れであろう。
 その韓国は初戦をブラジルと戦い、0-3と敗れ、フランス同様、ワールドカップでの最初の試合は苦い結果となった。したがってフランスと韓国との戦いは決勝トーナメントに向けたサバイバルという意味合いもあるが、同時にワールドカップ初勝利をかけた戦いでもある。9月24日のワシントンDCのRFKメモリアル・スタジアムでは2試合が行われ、第1試合はブラジルとノルウェーが戦い、ブラジルが4-1と勝利、決勝トーナメントに接近した。

■エースのマリネット・ピションがワールドカップ初ゴール

 フランスと韓国の試合が中国の主審の笛でキックオフ、フランスはノルウェー戦とメンバーを2人入れ替え、ワールドカップ初勝利を目指す。前評判どおりフランス優勢のまま試合は進んだが、なかなかゴールの瞬間は来ない。実は両チームとも第1戦は無得点であり、ワールドカップ初勝利にはワールドカップ初ゴールが必須なのである。フランスはテンポよく攻めるが韓国のGKの好守にあい、無得点のまま試合は進む。後半に入っても無得点のフランスは68分にはチームの精神的支柱であるベテランのステファニー・ムニェレ・ベゲをベンチに下げる。このまま無得点で仲良く初勝ち点どまりか、と思われた84分、フランスはエースのマリネット・ピションがゴールを揺らす。ついに174分目にして初めての得点、そして初勝利まであと一歩となったのである。ところが、韓国は男子同様粘りを見せ、ロスタイムにはフランスのゴールに襲いかかる。3分間の長いロスタイムを乗り切ったのは青いユニフォームのフランスであった。フランスはワールドカップ初勝利をあげ、決勝トーナメント進出に向けてブラジルに挑戦するのである。(続く)

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