第293回 2004年アフリカ選手権(6) チュニジア、マグレブ決戦を制し初優勝

■「カルタゴの鷲」が「スーパーイーグルス」を破る

 2月11日に行われた準決勝2試合はチュニジア-ナイジェリア、モロッコ-マリというアラブアフリカと西アフリカの対戦になった。
 チュニスのラデスでのチュニジア-ナイジェリア戦には5万6000人の観衆が集まった。チュニジアは今大会が1965年大会、1994年大会に次ぐ3回目の開催となる。1965年大会は決勝に進出しながら、ガーナに敗れている。また南アフリカで開催された1996年大会でも決勝に進んだが、地元南アフリカに敗れ、今度こそ地元開催で優勝を果たしたいところである。欧州チャンピオンに輝いたロジェ・ルメール監督には準決勝進出が目標とされていたが、5万6000人の観衆は「カルタゴの鷲」と言う愛称の代表チームには初優勝を期待している。しかし、相手は準々決勝でカメルーンを破ったナイジェリア、試合のイニシアティブは同じ鷲でも「スーパーイーグルス」が握った。両チーム無得点で迎えた67分、ナイジェリアのヌワンコ・カヌがペナルティエリア内でチュニジアの2人のDFにはさまれ、主審はペナルティスポットを指差す。このPKをジェイジェイ・オコチャが決め、先制点。しかし、累積警告を恐れてベンチスタートさせたチュニジアのセリム・ベナシュールの投入がチャンスを呼ぶ。82分には逆にナイジェリアのDFがチュニジアのFWを倒し、チュニジアにPKが与えられる。チュニジアの主将カレッド・バドラが決めて試合は延長戦に突入する。延長に入ってもナイジェリアが優勢に試合を進めながら、両チーム勝ち越し点を奪えず、決勝進出はPK戦で争われることになった。主将バドラが先鋒を務める先蹴のチュニジアは次々とPKを成功させる。一方のナイジェリアは2人目が失敗する。チュニジアは5人全員が成功させ、ナイジェリアの5人目のキッカーがペナルティスポットに立つ前に決勝進出を決めたのである。

■モロッコ、ゴールラッシュで決勝進出

 もう一つの準決勝モロッコ-マリ戦はスースで19時にキックオフされた。立ち上がりこそ、マリがモロッコのゴールを襲うが、同じマグレブのチュニジアの決勝進出に刺激されたモロッコがリズムをつかむと、一方的なゲームになる。18分にモロッコDFのユセフ・モクタリがミドルシュートをゴールに突き刺し、ゴールラッシュが始まった。58分にモクタリが追加点、80分には準々決勝でも得点をあげたユースフ・ハジが3点目、そして終了間際の90分にもナビル・バハが得点をあげて4-0と大勝した。日の沈んだスースのオリンピックスタジアムはマグレブ(日の沈む地という意味)祭となり、アラブ勢が決勝に進出した。

■初めての北アフリカ勢同士の決勝

 チュニジアはこれが3度目の決勝進出で初優勝を目指す。一方のモロッコは1976年大会で優勝した経験があるが、この時は4チームによる決勝リーグを行っており、決勝戦進出は初めてのことである。そしてマグレブ勢同士の決勝戦となったが、長いアフリカ選手権の歴史の中で北アフリカ勢同士の決勝は初めてのことである。モロッコもアルジェリアも1回ずつ優勝したことがあり、マグレブ三国の中で優勝歴がないのはチュニジアだけである。チュニジアでは開催国としてだけではなく、マグレブの一国として優勝への期待は高まる中で決勝戦の日を迎えた。

■地元チュニジア、見事に初優勝を飾る

 その決勝は2月14日、メイン会場であるロデスの11月7日競技場で行われた。マグレブ勢で最初にアフリカ選手権を制し、最初にワールドカップにも出場(1970年メキシコ大会)したモロッコに挑戦する開催国チュニジアの対戦に6万を越す観衆が詰め掛けた。地元の大声援の中で先制点を上げたのはチュニジアだった。ソショーに所属するフランシルード・サントスが地元観衆を熱狂させる。その後もチュニジアは得点チャンスを迎え、スタジアムは歓声で沸き返る。一方、「アトラスのライオン」モロッコも38分にモクタリが同点ゴールを決めて、試合を振り出しに戻す。しかし、立ち上がりに不安の残るモロッコに対し、後半開始早々の52分にチュニジアのジアード・ジャジリが勝ち越し点を上げる。モロッコも立ち直り、攻撃陣を厚くしたものの及ばず、チュニジアがついにアフリカの頂点に立ったのである。3度目の決勝で初めての優勝を遂げたチュニジアにはFIFAのジョゼフ・ブラッター会長とベン・アリ大統領から祝福される中で優勝トロフィーが授与された。ルメール監督は4年前の欧州選手権に次ぎ、2つ目の大陸別選手権の優勝監督となったのである。(この項、終わり)

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