第292回 2004年アフリカ選手権(5) 準々決勝を勝ち抜いた4チーム

■2大会連続準決勝進出のマリ

 2月最初の週末に行われた準々決勝、土曜日の7日にはマリ-ギニア戦、チュニジア-セネガル戦が行われ、奇しくもフランス人監督が率いる4チームが顔をそろえた。
 マリ-ギニア戦ではフランスに縁のある選手が活躍した。まず15分にギニアのパスカル・フェインデゥーノが先制点を入れる。ボルドーで名手ジャン・ピエール・パパンの後に背番号27をつけて1998-99シーズンのリーグ優勝を決める試合で劇的なゴールを決めたのはすでに5年も前のことになる。一時期ロリアンに移籍したが、ボルドーの中堅選手として活躍している。対するマリは前半終了間際にフレデリック・カヌーテが同点ゴールを決める。現在はイングランドのトットナムに所属し、日本の戸田和幸のチームメイトであることから日本の皆様はほぼ全試合をテレビでご覧になっていることであろう。カヌーテは前々回の連載で紹介したとおりマリとフランスの二重国籍であり、フランス生まれで若き日はリヨンに所属し、アンダーエイジでのフランス代表の経験もあるが、このたびのFIFAの規約改定でマリ代表のユニフォームを着ることになった。そしてこの西アフリカダービーは後半のロスタイム、現在リヨンに所属するマハマドゥ・ディアラがマリの2大会連続の準決勝進出を決めるゴールを上げたのである。

■元監督率いるチュニジアが元コーチ率いるセネガルを下す

 そしてフランス代表の栄光をスタッフとして築いたロジェ・ルメールとギ・ステファンという上司と部下の対決となったチュニジア-セネガルには5万5000人の観衆が集まった。片や開催国のチュニジア、片や前回準優勝でワールドカップではアフリカ勢最高のベスト8のセネガル、注目の一戦の均衡を破ったのはチュニジアのゴールであったが、このゴールの判定をめぐってセネガルが猛烈に抗議、試合は10分以上中断された。結局審判の判定は覆らず、開催国のチュニジアが4年ぶりの準決勝進出。チュニジアはその4年前も準決勝に進出しており、オリンピックイヤーのアフリカ選手権は相性がいいようである。8年前は決勝で開催国の南アフリカに敗れているが、開催国である今大会は初めての頂点を極めたいところである。

■カメルーンの3連覇を阻んだナイジェリア

 翌8日は3連覇を狙うカメルーンがナイジェリアの挑戦を受ける。現在のアフリカの盟主はカメルーンであるが、一方のナイジェリアも1994年大会優勝、1996年にはオリンピックで優勝、ワールドカップの常連国であり、大政奉還をかけてこの一戦に臨む。先制点はカメルーンのサミュエル・エトー、8年前のオリンピック金メダリストであり、カメルーン選手にしては珍しくフランスでのクラブの経験がない。3連覇への階段を上りかけたカメルーンに待ったをかけたのがナイジェリアのジェイジェイ・オコチャである。かつてパリサンジェルマンに所属していた主将の同点ゴールが前半ロスタイムに決まる。勝ち越し点をあげたのはランスに所属するジョン・ウタカ、後半半ばの73分のことであった。英国から独立したナイジェリアはフランスリーグで活躍したオコチャ、活躍中のウタカの得点でフランスから独立したカメルーンを下したのである。このカメルーンの準々決勝での敗退はアフリカサッカーにとっての大きな転換であると言えよう。

■今大会初の延長はモロッコが制す

 準々決勝最後のカードはモロッコ-アルジェリア戦である。マグレブダービーのこの試合は劇的な展開となった。試合終盤まで無得点が続き、試合終了6分前の84分にニースに所属するアルジェリアのアブデルマレック・チェラドがゴールを上げ、これで勝負あったかに見えたが、アトラスのライオンズという異名の古豪モロッコも意地を見せる。ロスタイムの90分にボルドーのマルーアン・チャマクが同点ゴール、試合は今大会初めての延長戦に突入する。延長に入ってもフランスのクラブに所属する選手が活躍する。延長後半の113分、モロッコはバスティアに所属するユースフ・ハジが決勝点、そして試合終了間際の120分にはソショーに所属するジャウアド・ザイリが追加点、フランスのクラブに所属する選手が全得点をあげるこの試合は古豪モロッコが勝利したのである。
 この結果、準決勝の組み合わせはチュニジア-ナイジェリア、マリ-モロッコとなったのである。(続く)

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