第394回 今年最後の代表ゲーム (4) 本拠地で不本意な3試合連続スコアレスドロー

■ドイツ行きを目指し、好調なポーランド

 東欧の自由化によってステートアマが否定され、ポーランドのサッカーは低迷してしまった。長いトンネルから脱出したかに見えた2002年ワールドカップもグループリーグで敗退してしまい、2004年欧州選手権は予選敗退する。
 巻き返しを図るポーランドは欧州選手権前後から親善試合を精力的に行い、5月末には優勝チームのギリシャを1-0と破っている。その後、月1回のペースで行った親善試合では1分2敗という成績であったが、9月に予選が始まってからは好調な成績を残している。ホームのイングランド戦こそ敗れたものの、残り3試合はいずれもアウエーで北アイルランド、オーストリア、ウェールズに対し3勝しており、現在3勝1敗でイングランドに続くグループ2位であり、ドイツ行きへと前進している。

■国内リーグトップのビスラ・クラコフから6人が選出

 この理由の一つに選手の所属クラブの分布がある。冷戦構造の終結、自由化後の東欧の代表チームは主力選手のほとんどが西欧のビッグクラブに所属する傾向がある。2002年のワールドカップに出場した際のポーランドも23人中14人が国外のクラブに所属していた。しかし、今回のフランス遠征の18人のメンバーは10人が国外のクラブに所属しているが、国内メンバー8人のうち6人がビスラ・クラコフに所属している。ビスラ・クラコフを率いるのは本連載に何度も登場したアンリ・カスペルチャック、訪日経験もあることから日本の皆様もよくご存知であろう。ビスラ・クラコフはチャンピオンズリーグにも予備戦選2回戦から参戦したが、本戦をかけた予備戦3回戦でレアル・マドリッドに敗れている。しかし、現在国内リーグで首位を独走しており、国内リーグで好調なチームのメンバーを大量に選出して成功している事例と言えよう。

■攻め続けるが無得点の前半

 これまでのフランスとポーランドの対戦成績はフランスが7勝4分3敗と勝ち越しているが、最近の両チームの成績を見ると決して楽観はできない相手である。しかもレイモン・ドメネク新監督になってからホームでは3引き分け、そろそろ初勝利が欲しいところである。先発メンバーで特筆すべきは、GKには直前に負傷したファビアン・バルテスに代わってミカエル・ランドローが起用されたこと、そしてフローラン・マルーダが代表にデビューしたことである。試合は前半からフランスがチャンスをつかむが、25分にはルドビック・ジュリーが負傷退場すると言うアクシデントに見舞われる。前半はフランスが攻め続けながらも無得点、特に前半終了間際にはジウイーに代わって出場したシドニー・ゴブーのシュートがポストに当たると言う不運なシーンもあった。

■ジダンもシンバも存在せず、ホームゲームでの初勝利はならず

 後半に入る段階でマルーダはベンチに下がる。後半に入っても両チーム無得点が続く。64分にはマルーダと並ぶもう一人の新人、背番号6のカメル・メリエムがルイ・サアに代わって出場する。この瞬間、スタッド・ド・フランスの5万観衆はジネディーヌ・ジダンあるいはアマラ・シンバを連想したであろう。ジダンは1994年8月のチェコ戦に途中出場で代表にデビューし、0-2と敗色濃厚なところで、貴重な2ゴールをあげている。そしてポーランドとの前回の対戦では試合終了2分前に決勝点をあげている。一方、アマラ・シンバは前回の連載では紹介を忘れたが、デビュー戦がポーランド戦であった。シンバは代表にデビューした13年前、パリサンジェルマンに所属しており、スタッド・ド・フランスに集まったファンの多くはパリならびにその近郊に住んでいることから、ファンの脳裏にシンバの姿が想起されたのであろう。2年連続でリーグのベストゴールを決めたアクロバットなプレーが身上のシンバは1991年8月にポーランドのポズナンで行われた試合で1ゴールをあげてフランスの勝利に貢献している。
 しかし、メリエムはジダンにもシンバにもなることはできなかった。試合は両チーム無得点のままタイムアップ。アウエーのポーランドにとっては価値あるドローとなったが、フランスはこれでホームで4試合連続引き分け、しかも本拠地スタッド・ド・フランスでは3試合ともスコアレスドローで得点をあげることすらできなかったのである。今年のフランス代表を象徴するような試合結果で、年を越すことになったのである。(この項、終わり)

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