第423回 フランスに戻ってきた監督たち(3) 初めての国外経験、ギ・ステファン

■テレビ中継もある注目のカメルーン-セネガル戦

 スタッド・ド・フランスでフランス-スウェーデン戦が行われた2月9日、同じサンドニにあるオーギュスト・デローヌ競技場で19時にギニア-マリ戦、19時30分からはパリの南東にあるクレテイユでカメルーン-セネガル戦がキックオフされた。地元フランス代表の試合が21時にキックオフされることからこのように試合時間を調整したのであろう。 
 ギニア-マリ戦は2-2の引き分けに終わるが、注目を集めたのは近年のワールドカップなどで好成績を残しているセネガルとカメルーンの対戦である。衛星放送やケーブルテレビでも中継され、ドミニク・デュボーシェル競技場には1万人以上の観客が集まった。フランス代表がワールドカップ常連国のスウェーデンを迎え、アンリ-トレゼゲの2トップが復活と言う追い風があってもようやく5万人を集客するレベルである。前回紹介したコートジボワール-コンゴ共和国戦同様、これと言った広報活動もしていないのに1万人以上の観衆を集めたと言うことはこれらの国から移り住んできた人々のサッカーに対する関心がフランス人よりも高いことを象徴しているであろう。

■フランス代表コーチからアフリカに渡ったギ・ステファン

 とは言ってもこの夜の主役はフランスとスウェーデンであることは間違いないが、2002年のワールドカップで料チームを破ったチームが1つだけある。それが今回紹介するセネガルであり、セネガルは開幕戦で前回優勝のフランスを破り、決勝トーナメント1回戦でスウェーデンを下している。
 準々決勝に進出したセネガル代表はブルーノ・メツ監督が勇退し、サウジアラビアのクラブチームのアル・アインの指揮をとることになる。メツのは後任にギ・ステファン監督が就任した。ステファンはフランス国内ではリヨン、ボルドーと言った強豪チームで監督経験がある。そして1998年からはフランス協会のスタッフとなり、アンダーエイジのスタッフから始め、2000年にはフランスA'代表の監督並びにフル代表のロジェ・ルメール監督を補佐するコーチとなり、欧州選手権優勝の陰の功労者と言われている。そして満を持して臨んだワールドカップの初戦で煮え湯を飲まされるが、その相手のそのステファンは初めての国外での監督としてセネガルに渡った。

■フランス・サッカー界の保守本流

 ステファンの任期はアフリカ選手権、ワールドカップが開催される2006年までであり、現在予選を戦っている。これまでに紹介したアンリ・ミッシェル(コートジボワール)、クロード・ルロワ(コンゴ民主共和国)、パトリス・ヌブー(ギニア)とは異なり、フランス・サッカー界の主流派として国内のクラブ、代表スタッフの経験があるということがステファンの特色である。逆にアフリカ、国外での経験が初めてであることが、懸念材料であろう。

■2004年アフリカ選手権ではかつての上司に敗れ、ベスト8

 ステファンはスタッフをフランス人で固め、初の国際大会となった2004年アフリカ選手権ではグループリーグを突破し、準々決勝で開催国のチュニジアと対戦、チュニジアの監督は奇しくもステファンがコーチとして活躍した代表チームの監督であったルメールである。かつての上司と部下の対戦となったが、開催国のチュニジアの大声援にも飲まれて、2002年大会の準優勝チームのセネガルはベスト8どまりで大会を終える。
 昨年6月からワールドカップ予選が始まり、セネガルはトーゴ、ザンビア、コンゴ、リベリア、マリとともにグループ1に所属する。ホームアンドアウエーの総当りのリーグ戦を行い、トップのチームだけがドイツ行きのチケットをつかむが、これまでにちょうど半分の5試合を消化しており、セネガル、トーゴ、ザンビアが勝ち点10で並び、得失点差ではセネガルが一歩リードしている。予選の再開は3月であるが、前回ワールドカップのベスト8進出がフロックではないことを証明するのはドイツの地である。そのために予選の後半戦でトーゴ、ザンビアに競り勝って本大会出場のチケットを手に入れたいところである。アフリカを代表する強豪のカメルーンとの対戦を母国フランスで迎えるステファンにとって、腕の見せ場である。(続く)

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