第518回 2006年アフリカ選手権(2) 2人の元フランス代表監督

■16チーム中4チームがフランス人監督

 前回の本連載では今回のアフリカ選手権に出場するフランスのクラブに所属する選手の数について紹介したが、今回はフランス人監督について取り上げたい。
 今回のアフリカ選手権にはコートジボワールのアンリ・ミッシェル、コンゴ民主共和国のクロード・ルロワ、チュニジアのロジェ・ルメール、ギニアのパトリス・ヌブーという4人のフランス人監督がチームを率いる。前回大会と比較すると、本連載の第288回と第289回で取り上げたとおり、チュニジアのロジェ・ルメール、ギニアのミッシェル・デュスイエ、ブルキナファソのジャン・ポール・ラビエ、マリのアンリ・スタンブリ、セネガルのギ・ステファンという5人のフランス人監督がいた。前回の本連載でも紹介しているとおり、ブルキナファソ、マリは今回出場権を失っている。今回新たに出場権を得た国でフランス人監督が率いるのはコートジボワール、連続出場組ではチュニジア、ギニアがフランス人監督を継続し、コンゴ民主共和国が新たにフランス人監督を迎えている。フランス人監督の減少は前回同様、フランスから独立した国の出場数が減少したことに他ならない。

■前回の優勝監督、チュニジアのルメール

 その4人のフランス人監督の中で最も注目を集めるのはチュニジアのルメールである。2000年欧州選手権を制しながら、2002年ワールドカップで惨敗し、フランス代表監督の座を追われてチュニジアの監督に就任する。2002年の夏の監督就任直後にフランスを迎えて引き分けに持ち込み、その後、敗戦は2003年の日本戦だけという成績で2004年のアフリカ選手権に臨み、決勝に進出する。チュニスでの決勝の相手はマグレブのライバルであるモロッコ、ルメール率いるチュニジアは2-1とライバルを下し、マグレブ諸国で初の優勝を果たしたのである。

■ワールドカップにも連続出場するチュニジア

 ルメールは続投し、2006年のワールドカップでの雪辱に燃える。アフリカ予選でグループ5に入ったチュニジアの最大のライバルはアフリカ選手権の決勝の相手であるモロッコである。2004年9月にモロッコで行われた試合では1-1のドロー、その後両チーム着実に勝ち点を積み上げ、2005年10月8日の最終戦で両チームは激突する。この段階でチュニジアの勝ち点は20、モロッコの勝ち点は19であり、モロッコが勝てば逆転でドイツ行きとなるところであったが、チュニジアは2-2のドローに持ち込み、ワールドカップへ連続出場を果たしている。今年のワールドカップにアフリカから出場するチームは5チームであるが、カメルーン、ナイジェリアという常連が次々と予選落ち、連続出場はチュニジアだけである。さらに2004年のアフリカ選手権に出場しているチームもチュニジアだけである。
 このように考えるとルメールのチュニジアは今世紀に入ってからアフリカで最も安定したチーム力を有すると考えられる。昨年ドイツで開催されたコンフェデレーションズカップではグループリーグで敗退したが、試合内容は決勝トーナメントに進出したチーム以上の評価を得ているのである。ルメールの4年間の指導が実り、優勝候補筆頭といえるであろう。

■ワールドカップ予選で3大会連続突破したコートジボワールのミッシェル

 そしてこの4人のフランス人監督のうち、もう一人フランス代表監督の経験者がいる。それがコートジボワールを率いるミッシェルである。ミッシェルはフランス代表監督としての実績だけではなく、フランス代表選手としての経験もある。ミッシェル・プラティニの前のブルーのユニフォームの背番号10はミッシェルのものであった。フランス代表監督としては不本意な予選期間中の監督解任の憂き目にあっているが、その後アフリカ、アラブ諸国の代表監督を歴任する。実は2002年のワールドカップ予選時にはチュニジアを率いて予選を突破している。予選を突破してから本大会を迎える間に代表監督を解任されているが、2004年のアフリカ選手権終了後にコートジボワール代表監督に就任する。ワールドカップ予選では常連のカメルーン、古豪エジプトを振り切る。1998年のモロッコ、2002年のチュニジア、そして2006年のコートジボワールと3大会連続してアフリカの国をワールドカップ本大会へ導いたのである。
 この2人の元フランス代表監督が率いるチュニジアとコートジボワールに注目したい。(続く)

このページのTOPへ