第598回 新たな旅立ちボスニア・ヘルツェゴビナ戦(3) 代表デビューが待望される3人

■スロバキア戦に招集されたジェレミー・トゥーラランとフランソワ・クレルク

 前回の本連載ではワールドカップのメンバーにエントリーされず、今回のボスニア・ヘルツェゴビナ戦のメンバーに選出されたうち、代表として試合出場経験のあるリオ・マブーバとフィリップ・メクセスを紹介したが、今回は代表として試合に出場の経験がない3人を紹介しよう。
 ジェレミー・トゥーラランとフランソワ・クレルクの2人は今年3月1日のスロバキア戦でメンバーに招集されている。この試合ついては本連載第528回から第530回で紹介したが、クレルクはプロ経験がほとんどなく、強豪リヨンでも出場機会に恵まれない段階での代表入りということで話題になった。一方のトゥーラランは守備的MFであるが、DFのウィリアム・ギャラスの負傷のバックアップとして追加招集された。このスロバキア戦はフランス代表にとってワールドカップのメンバーを決定する前の半年間に行われる唯一の試合であったが、2人とも試合に出場することができず、ワールドカップに出場することもできなかったのである。

■ナントからリヨンに移籍し、先発メンバーとなったトゥーララン

 昨季ナントに所属していたトゥーラランはこの夏リヨンに移籍した。リヨンではアルー・ディアラ、ティアゴ、ジュニーニョなどとポジションを争うことになるが、リーグ戦が始まって2試合に先発フル出場とまずまずの働きをしている。

■右サイドバックのバックアップとして選出されたクレルク

 一方のクレルクはスロバキア戦の段階ではリーグ戦は通算14試合しか出場機会がなく、2005-06シーズンも7試合出場であったが、この代表選出がきっかけとなり、その後のリーグ戦には7試合に出場、そしてチャンピオンズリーグにも5試合出場している。今季は開幕戦のナント戦で試合終盤に交代出場しただけと出場の機会に恵まれていない。クレルクのポジションは右サイドバックであり、このポジションはワールドカップではビリー・サニョルとパスカル・シンボンダが選出されている。今回のボスニア・ヘルツェゴビナ戦は」サニョルだけがメンバー入りしている。またどうポジションのフランス代表経験者にはアントニー・レベイエール、フランク・ジュリエッティもおり、プレミアリーグでベストイレブンに選出されたシンボンダなどを押さえてクレルクは選出されたわけであり、今度こその期待は大きい。

■初めて代表に選出されたジュリアン・フォーベール

 そして代表に招集されるのも初めてという唯一の選手がボルドーのジュリアン・フォーベールである。23歳の誕生日を迎えたばかりのフォーベールはジネディーヌ・ジダンを生んだカンヌの下部組織の出身で、1部のボルドーに移籍して今年で3シーズン目になる。過去2シーズンはボルドーでコンスタントに試合に出場し、右サイドのスペシャリストとしてサイドバックから攻撃的MFまでこなすと言う器用な側面を持つ。混成チームである代表チームでは複数のポジションをこなす選手は重宝され、21歳以下代表でも活躍する。
 今年の5月から6月にかけてポルトガルで行われた21歳以下の欧州選手権ではフランスのエースとしてトゥーラランや前回紹介したリオ・マブーバらとともに活躍する。第1シードからもれながらも準決勝に進出し、2点を先行された準決勝のオランダ戦でも反撃の得点を挙げ、同点に追いつき、試合は延長戦に突入する。しかし、フォーベールは延長後半に2枚目のイエローカードをもらい退場処分となり、チームも決勝点を奪われてオランダに敗れてしまう。実はこの退場処分により、フォーベールは2試合公式戦の出場停止処分となり、欧州選手権予選の最初の2試合(グルジア戦、イタリア戦)には出場することができない。このようなハンディキャップがありながらルドビック・ジュリーなどを押さえてフォーベールが代表入りしたということは大きな意味がある。
 さて、レイモン・ドメネク監督はサラエボでの試合にこれまで紹介した5人を積極的に起用すると発言している。2年前の初陣の際は代表初出場となる選手が先発で4人、交代出場で1人いた。すなわちこの試合はドメネク監督にとっても二度目の初陣なのである。(続く)

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