第810回 2008年アフリカ選手権(2) 量、質ともに前回以下のフランスのクラブに所属する選手

■フランスから独立した8か国から52人が出場

 前回の本連載の最後に今回のアフリカ選手権にフランスのクラブから60人の選手が出場すると紹介した。この60人と言う数字はこれまでの大会(2002年:67人、2004年:77人、2004年大会:72人)に比べれば少ない数字である。
 今回も参加国は16か国であるが、その半数の8か国はフランスから独立した国である。ギニア、モロッコ、マリ、コートジボワール、ベナン、カメルーン、チュニジア、セネガルがこれに相当するが、当然ながらこれらの国はフランスとの結びつきは深く、フランスリーグで活躍している選手は多い。
 これらの国でフランスのクラブに所属する選手が最も多いのはセネガルの9人であり、以下ギニア(8人)、ベナン(7人)、モロッコ、マリ、コートジボワール、カメルーン(以上6人)、チュニジア(4人)となり、フランスから独立した国の代表メンバーの多くがフランスリーグで活躍しており、この8か国の選手の合計は52人にのぼる。フランスのクラブからアフリカ選手権に出場した選手の8割以上がこのフランスからの独立した国のチームに満遍なく所属している。

■フランスのクラブの選手のいない4か国

 他方、今回の参加国でフランス以外から独立した国は8か国、英国から独立した国がガーナ、ナイジェリア、エジプト、ザンビア、南アフリカの5か国、ポルトガルから独立した国がアンゴラ、そしてスーダンはエジプトならびに英国から独立し、ナミビアは南アフリカから独立している。これらのフランス以外の国から独立した国のチームに関してもフランスのクラブで活躍する選手はおり、ナイジェリアの4人を筆頭にガーナ2人、ザンビアとアンゴラが1人ずつとなっている。結局、フランスのクラブに所属する選手のいないチームはナミビア、エジプト、スーダン、南アフリカの4か国だけである。

■二桁のフランス勢を抱えるチームの不在

 これらの数字を2年前の前回大会と比較してみよう。まず、フランスから独立した国は今大会より少ない7か国で、チュニジア、ギニア、カメルーン、モロッコ、セネガル、コートジボワール、トーゴという顔ぶれであった。前回大会からトーゴがはずれ、新たにベナン、マリが加わっている。また、前回大会はフランスのクラブに所属する選手が10人以上のチームが3か国(セネガル:15人、コートジボワール:14人、ギニア:11人)あったが、今回は最多でも9人であり、このあたりが今回フランスのクラブから出場する選手が減少した理由と言えよう。

■有力選手はフランスリーグ経由で他のリーグへ

 かつても今も、これらフランスから独立した国の有望な選手が欧州を目指すとなるとフランスリーグを目指す。そしてフランスの地で評価されて欧州の他のビッグクラブへと移籍すると言う構図は変わっていない。例えば、セネガルには8人の選手がイングランドのクラブに所属しているが、ストラスブールでプロにデビューし、現在はウエストハムに所属するアンリ・カマラ、ソショー、レンヌ、ランスで活躍し、ドーバー海峡を渡ってリバプール経由で現在はボルトンで活躍しているエル・ハジ・ディウフなどの例を見てもわかるとおり、そのほとんどはフランスのクラブでの経験がある。これはコートジボワールでも似た傾向にあり、ルマン、ガンガン、マルセイユで活躍したディディエ・ドログバは現在チェルシーに所属している。コートジボワールの場合、セネガルと多少違うのは初めての欧州のクラブがフランス以外の国も多いことである。これはコートジボワールにおいて現在の代表クラスの世代は若年層のころから国際大会で活躍していたために、旧宗主国であるフランス以外のクラブからも注目を集めていたことに起因しているであろう。
 さらにこれらのフランスから独立した国のサッカー選手にとって最終ゴールがフランスのトップチームではなくなってしまったことも今回の特徴である。フランスリーグのナンバーワンチームであるリヨンには今回のアフリカ選手権に出場する選手は1人しかいない。その1人はリヨン史上最高の移籍金で獲得したコートジボワール代表のカデル・ケイタであるが、1人しかいないと言うのは残念である。他の国内のビッグクラブを見てもマルセイユは4人、パリサンジェルマンは皆無と言う状況である。
 このようにアフリカ選手権に出場するフランスのクラブに所属する選手の量、質とも従来に比べて不足はしているが、これまでにない特徴もあり、フランスのファンは注目しているのである。(続く)

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