第811回 2008年アフリカ選手権(3) フランス人監督の対決となった開幕戦

■開幕戦のカードはガーナ-ギニア戦

 前回の本連載では、今回のアフリカ選手権にフランスのクラブから出場している選手は量、質とも最近の大会を下回ることを紹介した。しかしながら、参加国の半数がフランスから独立した国であり、出場選手のうちの6人に1人にあたる60人がフランスのクラブに所属している大会ともなると、フランスのサッカーファンの注目度は決して小さくはない。
 今回の開幕戦は開催国のガーナとギニアとの対戦となった。前回の本連載で紹介したとおり、ガーナは英国からの独立国であり、フランスのクラブに所属する選手は2人、一方のギニアはフランスから独立した国であり8人のフランスのクラブに所属する選手をかかえる。そして一般のフランス人にとってこの試合で最も親しみのある存在は選手ではなく、両チームの監督であった。
 ガーナを率いるのはクロード・ルロワ、そしてギニアを率いるのはルベール・ヌザレ、本連載の読者の方ならばこの2人のフランス人監督をよくご存知であろう。

■アフリカの代表監督の経験が豊富なガーナのクロード・ルロワ

 ガーナのルロワ監督は前回大会ではコンゴ民主共和国を率い、決勝トーナメントに進出している。それ以前にも1985年にカメルーン代表監督に就任し、1988年のアフリカ選手権で優勝、その後セネガル代表監督につき、さらにマレーシア代表監督を経て、1998年にはカメルーン代表を再び率いることになり、ワールドカップに出場している。フランスのクラブではストラスブールやグルノーブルの監督を務めたこともあるが、アフリカの代表チームを渡り歩いているというイメージが強い。

■フランスのクラブ経験が豊富なギニアのロベール・ヌザレ監督

 一方のギニアのヌザレ監督はルロワとは対照的であり、フランス国内の多数のクラブチームで監督を経験しており、モンペリエ、リヨン、カーンなどで監督を務めた後、1996年に選手、監督というキャリアを通じて初めて国外に出て、コートジボワール代表の監督となる。1998年のアフリカ選手権では準々決勝まで進出しながら、優勝したエジプトにPK戦で敗れる。ちなみにこの大会の準決勝でエジプトに敗れたブルキナファソの監督は、その後日本で活躍することとなるフィリップ・トルシエである。ヌザレは再びフランス国内のクラブチームの監督となり、サンテエチエンヌ、トゥールーズ、バスティアの監督を務め、2002年には本連載第61回と第62回で紹介したとおり、バスティアをフランスカップ準優勝に導く。その後、2002年に再びコートジボワール代表監督となる。仮定の話であるが、もし1998年のアフリカ選手権でヌザレの成績がトルシエよりも良ければ、日本にきたことも考えられる。ところがこの2度目のコートジボワールでの成績は振るわず、2004年のアフリカ選手権は予選で敗退してしまう。古巣のモンペリエ、アルジェリアのクラブチームの監督を経て、2006年12月にギニア代表監督となる。2006年9月から始まったアフリカ選手権予選でヌザレ就任時のギニアは1分1敗と苦しいスタートであったが、ヌザレ就任後は3勝1分と盛り返し、見事にチームを立て直してアフリカ選手権の出場権を獲得したのである。

■終了直前の決勝ゴールで開催国ガーナが白星発進

 これまでアフリカの代表監督として数々の成果を残してきたルロワ率いる開催国で予選免除のガーナ、そしてフランスのクラブチームで数多くのキャリアを積んだヌザレが立て直して本大会に導いたギニアという顔合わせの開幕戦となったのである。この対戦は通常でも注目を集める開幕戦という以上に、キャリアの異なるフランス人監督対決ということでフランスのサッカーファンの注目を集めたのである。
 フランスであれば厳寒の1月下旬であるが、アクラの気温は33度、そしてスタジアムは3万5000人の観客で超満員となる。今大会の初ゴールはガーナのアサモア・ギアンがPKで決める。そしてギニアも昨年までオセールに所属していたウマール・カラバネが同点ゴールを決める。開幕戦らしくドローかと思われたが、90分にガーナのサリー・ムンタリが20メートルの見事なシュートを決めて観客を歓喜させる。
 フランス人監督の対決は、アフリカのキャリアの長いルロワが率いるガーナに軍配が上がったが、フランス人監督はこの2人だけではないのである。(続く)

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