第1136回 2010年19歳以下欧州選手権(1) 開催国フランス、ゴールラッシュで連勝

■毎年開催される19歳以下欧州選手権

 ワールドカップでは惨敗したフランスであるが、シーズンオフに行われる国際大会でうれしいニュースが飛び込んできた。それが19歳以下欧州選手権である。ワールドカップや欧州選手権は4年に1回、オリンピックの予選にもなる21歳以下欧州選手権は2年に1回行われるがこの19歳以下欧州選手権は毎年行われる。
 今年の開催地は地元フランスのノルマンディー地域で行われる。多くのバカンス客が押し寄せる北フランスの各都市で未来のワールドカップでの活躍を夢見る若者たちが熱戦を繰り広げた。
 この大会はもともとFIFAが主催する18歳以下のジュニアトーナメントとして行われてきたが、1980-81シーズンからUEFAが主催することになり、18歳以下欧州選手権となった。そして、2001-02シーズンから19歳以下と年齢制限が変わった。

■予選を勝ち抜いた7か国

 フランスは開催国として予選が免除されるが、それ以外の7チームは昨年秋に13グループに分かれて行われた1次予選、7つのグループに分かれて春に行われる2次予選を勝ち抜いて本選出場となる。この世代の選手はまだトップレベルのチームで活躍する選手は少なく、予選という真剣勝負を経験することにより、力を蓄えていくことから開催国のアドバンテージは少ないであろう。
 その予選を勝ち抜いた本選出場チームは4チームずつ2つのグループに分かれ、頂点を目指す。グループAは開催国フランス以外にオーストリア、イングランド、オランダ、グループBはスペイン、クロアチア、ポルトガル、イタリアという顔ぶれである。各グループの構成と今回のワールドカップの結果を比べてみると興味深い。ワールドカップの決勝で戦ったオランダとスペイン、決勝トーナメントの初戦で敗れたイングランドとポルトガル、そしてグループリーグで最下位に沈んだフランスとイタリア、本大会に出場できなかったオーストリアとクロアチアという具合に両グループにバランスよくチームがちらばった。

■ワールドカップ準優勝のオランダ相手に猛攻で勝利

 大会は7月18日に開幕した。フランスは開幕日にメイン会場となるカーンのミッシェル・ドルナノ競技場に登場し、ワールドカップ準優勝のオランダと対戦する。この試合フランスはオランダを圧倒する。本連載第704回と705回で紹介した日系人選手のガエル・カクタが20分に先制点、そしてCFのセドリック・バカンブが追加点をあげ、2-0とリードして前半を折り返す。後半に入って、オランダは1点を返すが、フランスの猛攻は続き、84分にはオランダのオウンゴールを誘い、ロスタイムの93分にはバカンブがゴール、フランスは4-1と快勝したのである。

■ワールドカップ予選初戦で敗れたオーストラリアに大勝

 第2戦は舞台をフレに移し、オーストリアと対戦する。フレは人口1万6000人のノルマンディーの小都市である。サッカーチームは地域リーグにしか所属していないが、国際審判員のトニー・シャプロンの出身地である。本大会ではフランス-オーストリア戦を含む3試合が行われる。オーストリアは今回のワールドカップ出場こそならなかったが、予選ではフランスと開幕戦で戦い、3-1と勝利している。フランスにとってこのオーストリア戦での敗北がなければ、その後の展開は変わり、楽に予選突破していたであろう。アイルランドとのプレーオフがなければ、同時期に強化のための親善試合を組むこともできたはずである。そしてティエリー・アンリのハンドもなかったわけであり、アンリがその後のスランプ匂いいつこともなく、南アフリカの地では背番号12のアンリの左腕にはキャプテンマークがまかれ、チームの内紛も抑えていたであろう。
 今回のワールドカップでの惨敗の遠因を作ったオーストリア相手にフランスは猛攻撃を加える。アゼ競技場に集まった観客の前でゴールラッシュを披露する。19分にアントワン・グリツマンが先制点をあげ、折り返す。後半に入って66分にアレクサンドル・ラカゼットが追加点をあげると、次々にゴールが決まり、5-0と大勝する。 フランスは2勝し、ほぼ決勝トーナメント進出を手中にしたのである。(続く)

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