第1137回 2010年19歳以下欧州選手権(2) スペインを倒し、5年ぶりに優勝

■イングランドと引き分け、首位で決勝トーナメントへ

 兄貴分のワールドカップでの惨敗を挽回するかのように、19歳以下のフランス代表は初戦でオランダ、第2戦でオーストリアに大勝した。フランスの所属するグループAはフランスが2勝、イングランドとオランダが1勝1敗、オーストリアが2敗となった。フランスの最終戦の相手はイングランド、最終戦でイングランドとオランダが勝利すればフランスを含む3チームが2勝1敗で並ぶが、得失点差から判断してフランスの優位は疑いない。
 イングランド戦ノルマンディーの港町のサンローで行われた。ルイビルメール競技場での1戦はノルマンディー特有の涼しい気候とは逆に熱く厳しい試合になった。それまでの2戦、敵を圧倒してきたフランスであったが、決勝トーナメントを目指すイングランド相手に苦戦し、前半は互角の展開。後半に入って56分のヤニス・タフェのヘディングシュートでようやくフランスはリードする。このまま勝利するかに思えたが、イングランドはロスタイムに意地の同点ゴールをあげる。もう1試合でオランダがオーストリアに敗れたため、フランスとイングランドが決勝トーナメントに進出した。

■初めてリードを許すが、クロアチアを逆転し、決勝進出

 グループBはスペインが3連勝、得失点差でイタリアを上回ったクロアチアが2位になった。決勝トーナメント(準決勝)の組み合わせはフランス-クロアチア、スペイン-イングランドである。
 カーンのミッシェル・ドルナノ競技場で行われたフランス-クロアチア戦は立ち上がりの4分にクロアチアが先制する。フランスは本大会初めて追う立場になる。同点に追いついたのは37分、ガエル・カクタが同点ゴールを決める。その後もなかなかクロアチア相手に苦戦したが、83分にセドリック・バカンブの勝ち越しゴールでフランスは決勝進出を手にしたのである。

■2年前の17歳以下欧州選手権の決勝で敗れたスペインと再戦

 もう1つの準決勝はスペインがイングランドを3-1と下し、ワールドカップとの二冠を狙う。ワールドカップ優勝国と開催国というだけではない。1991年からその翌年にかけて生まれた彼らは2年前の17歳以下欧州選手権の決勝でも顔を合わせている。夢の対決となったカーンのミッシェル・ドルナノ競技場には2万1000人の観衆が集まった。
 2年前のトルコでの17歳以下の欧州選手権ではスペインが4-0とフランスを一蹴している。しかし、この2年間で選手によってはトップレベルの試合に出場し、成長してきた。今回のメンバーの各国の1部または2部の試合への出場数は、フランスが129試合、スペインは100試合であり、フランスの選手のほうがトップレベルでの経験を積んでいる。

■逆転勝利で5年ぶり優勝

 フランシス・スメルキ監督率いるフランスもパスサッカーを展開し、試合は若きタレントがグラウンドの中を躍動する好ゲームとなった。先制点は18分のスペイン、イニエスタ2世といわれるダニエル・パチェコからのパスをロドリゴが決める。スペイン1点リードのままハーフタイムを迎える。後半の開始時点でスメルキ監督はスペインリーグで39試合出場6得点というアントワン・グリツマンに代えてタフェを投入、49分にはそのタフェからのパスをジル・スヌが決めて同点に追いつく。
 スメルク監督は70分に先制点をあげたスヌをベンチに下げ、リヨンのアレクサンドル・ラカゼットを投入する。そして残り時間も少なくなった85分、カクタがスペインのDF陣を抜き去り、シュートする。このシュートをGKがはじいたところをラカゼットが押し込んで、フランスは勝ち越す。
 フランスが優勝し、カクタが最優秀選手に選ばれる。フランスの優勝はウーゴ・ロリス、ヨアン・グルクフらを擁した2005年大会以来5年ぶりのことである。また各年代別の優勝もこの時以来であり、暗い結果しか残してこなかったフランスサッカーに光明が差したのである。(この項、終わり)

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