第1216回 王国ブラジルと対戦 (3) ナイキのユニフォームで新生ブラジルを迎え撃つフランス

■2大会連続で準々決勝敗退の王国ブラジル

 前回の本連載で紹介した通り、1998年のワールドカップ決勝がフランスとブラジルの対戦成績に大きく影響を与えることになったが、フランスがブラジルに最後に敗れたのは1992年夏のことである。つまり、現在のフランスのメンバーは物心ついたころからフランスはブラジルに負けないものであると思い込み、逆にブラジルの選手はフランスには勝てないものと思い込んでいる。
 昨年夏のワールドカップでブラジルは準々決勝でオランダに敗れている。2002年大会で優勝してからは2006年大会、2010年大会と連続して準々決勝で敗退しており、王国の名が泣いている。

■2011年は強豪相手との試合が目白押しのブラジル

 ブラジルはワールドカップ敗退後、ブラジルは日本でも人気のあるドゥンガに代わって監督の座にマノ・メネゼスが就任する。8月には米国とニュージャージーで親善試合を行い、2-0と勝利し、10月にはアブダビでイランと対戦し、3-0と勝利、イングランドに移動してダービーでウクライナと対戦、この試合も2-0と勝利する。そして初めて強豪国と対戦したのが11月17日のカタールのドーハでのアルゼンチン戦である。アルゼンチンもワールドカップでは期待されながら準々決勝でドイツに4-0と大敗、国民的英雄のディエゴ・マラドーナに代わってセルヒオ・バスティアが新監督となり、就任後初戦となる。この試合は終了間際にリオネル・メッシが決勝点をあげて、ブラジルは新体制下で初めての黒星、アルゼンチンは新監督初戦で白星と明暗が分かれたのである。

■大幅にメンバーを入れ替えたブラジル

 そしてブラジルにとってはそれ以来の国際試合となる。今年は南米選手権が行われるが、その直前にはオランダ戦、夏にはドイツ戦と強豪との親善試合が目白押しであり、フランス戦は今年を占う重要な戦いである。ブラジルはフランスよりも1週間以上早く23人のフランス戦のメンバーを発表する。もちろん、選手の移動を考慮して早く選出したわけではない。23人の選手全員が欧州のクラブに所属しており、アルゼンチン戦の敗戦からの切り替え、そして昨年夏の米国戦以来のアウエーゲームに対する準備である。
 23人の選手のうち、昨年のワールドカップのメンバーはわずか7人である。GKのゴメス、フリオ・セザール、DFのダニエウ・アウベス、ルイゾン、チアゴ・シウバ、MFのラミレス、FWのロビーニョというメンバーである。このうち30歳以上のGKの2人を除くと昨年のワールドカップでは最年少に近い選手が中心であり、大幅な若返りを図ったことがよくわかる。
 一方のフランスは23人中11人がワールドカップ時のメンバーであるが、FWに登録された5人はいずれもワールドカップのメンバーではない。こう見てみると、グループリーグで惨敗したフランスはワールドカップ時のチームの内乱による出場停止処分により代表を実質的に追放された選手がいるにもかかわらず、それほど大幅にメンバーを入れ替えているわけではない。

■アディダスからナイキに代わったフランスのユニフォーム

 しかし、今回のフランス代表で大きな変更がある。それは1972年以降一貫してフランス代表のユニフォームを提供してきたアディダス社に代わり、ナイキ社が新たにフランス代表のユニフォームを供給することになったことである。日本のアシックスの米国での販売会社をルーツとするナイキが欧州のサッカー市場に参入したのは1980年代後半のパリサンジェルマンが第1号であった。そのナイキはサッカー以外のフランスのスポーツにも参入し、ラグビーのフランス代表のユニフォームも提供している。今回ナイキはサッカーの代表と契約を結ぶにあたって大規模なプロモーション活動を展開したのである。
 そしてそのユニフォームは従来のものに比べると、シンプルの一語に尽きる。襟付きのジャージーは青一色で胸のマークも単色の雄鶏が描かれている。パンツは白、そしてソックスは赤に青の折り返しである。またシャツとパンツの素材はペットボトルから再生したポリエステルであり、機能性だけではなく環境への配意も怠っていない。ローラン・ブラン監督も自分のチームコンセプトに合っているとご満悦の新ユニフォームのお披露目は、スタッド・ド・フランスでのブラジル戦とこれ以上ない舞台が整ったのである。(続く)

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