第1267回 2011年女子ワールドカップ(5) カナダに完勝、フランス女子史上初の8強入り

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■決勝トーナメントかけて実力伯仲のカナダと対戦

 開幕戦という緊張する状況の中でのナイジェリア戦、エースストライカーのマリー・ロール・デリーの得点でフランスは勝ち点3をあげる。デリーはこれで代表21試合出場で22得点と言う驚異的な得点力を誇る。このデリーの得点力が次のカナダとの勝敗の鍵となることは間違いのないところである。
 カナダは前回の本連載でも紹介したとおり、世界ランキングはフランスより1つだけ上の6位である。決勝トーナメント進出をかけて直接対決となる。カナダは次回の2015年大会の開催国であり、これまで最高の成績は2003年大会の4位である。自国開催の次回の大会を控え、それ以上の成績を目指すカナダは、初戦のドイツとの戦いは善戦しながら1-2と敗れており、フランスとナイジェリアに連勝して決勝トーナメントに進出したいところである。

■カナダの誇る大スター、クリスチーヌ・サンクレール

 フランスにデリーがいるならばカナダにもエースストライカーがいる。それがクリスチーヌ・サンクレールである。現在は米国のウエスタン・ニューヨーク・フラッシュに所属するサンクレールはカナダでは6年連続年間最優秀選手に選出され、2002年には19歳以下の世界選手権に出場し、最優秀選手となっている。サンクレールはこれまでに代表160試合に出場し、117ゴールをあげている。ワールドカップはこれが3回目の挑戦となり、2003年大会と2007年大会の9試合に出場し、6得点をあげている。そして代表通算117ゴール目がドイツ戦でのゴールであり、0-2とリードされた82分に一矢を報いる形でゴールを奪い、3大会連続のゴールを決めている。
 ところが、主将も務めるサンクレールはドイツ戦で鼻を負傷し、フランス戦の出場が微妙であった。結局、サンクレールをメンバーから外すわけにはいかず、負傷をおしてサンクレールは出場し、キャプテンマークを腕に巻きながら、右ウイングとしての出場となった。

■大黒柱の負傷で予期せぬ展開に

 この大黒柱の負傷は大きな影響を与えた。戦前の予想とは異なる展開となる。立ち上がりこそカナダは攻勢に出たが、その後はフランスが試合を支配する。そしてなんといってもこの試合でフランスが素晴らしかったのは攻撃が次々とシュートにつながるところであった。ボフームで行われたこの試合はフランスのファンがこれぞフランスのサッカーというスペクタクルな内容となった。この試合の先制点は左ウイングのガエタン・ティネであった。「タタン」というニックネームでファンやチームメイトから親しまれるティネはいい動きを見せ、相手ゴールを脅かす。そして先制点は24分、ルイーザ・ネシの右からのセンタリングをティネがシュートする。オフサイドのポジションにティネはいたが、日本人と中国人の審判団はゴールを認める。

■カナダに大勝したフランスが決勝トーナメントへ

 そして後半に入って追加点もティネであった。60分にはデリーが相手の守備ラインの保持する球をよくチェイスし、ゴールラインから25メートルの地点でフランスボールにする。カナダから奪ったボールをティネがロングシュート、これが見事に決まり、フランスは2-0とリードを広げた。
 フランスの勢いは止まらなかった。66分には主将のサンドリン・スーベイランがCKを蹴り、ファーサイドにいたカミーユ・アビリーがヘディングシュート、カナダのGKはキャッチすることができず、得点差は3点に広がる。さらに83分にはネシからのパスを受けた途中出場のエロディ・トミが4点目を決める。結局、接戦が予想されていた戦いはフランスの4-0という思いもよらぬ大勝で決着がついたのである。
 そしてもう1つの試合はドイツがナイジェリアを1-0と下す。この結果、グループAはフランスとドイツが2勝、カナダとナイジェリアが2敗となり、最終戦を待たずしてフランスとドイツの決勝トーナメント進出が決まった。フランスの女子サッカーにとって8強入りは史上最高の成績なのである。(続く)

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