第1272回 フランス勢の姿が目立たなかった南米選手権

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランスのサッカーファンの関心は南米選手権

 前回までの本連載はドイツで行われた女子ワールドカップの模様を9回にわたって紹介し、フランスの女子代表がワールドカップ史上最高の4位になり、来年のロンドンオリンピックの出場権を獲得したことを紹介した。
 しかし、前回の連載の最後に書いたとおり、フランスではまだ女子のサッカーは競技人口も人気も男子に及ばない。これは決してフランスにおいて女性が解放されていないとか、男女同権が実現されていないというわけではない。フランスでもバレーボールやハンドボール、バスケットボールは女子の競技人口が男子よりも圧倒的に少ないわけではない。これはフランスでは「サッカーは男子のスポーツ」として認識されていることを表しているにすぎない。
 それを裏付けるように、6月から7月にかけてフランスのサッカーファンは自国チームが大活躍した女子ワールドカップではなく、自国選手の出場していない南米選手権の方に目を向けたのである。

■他大陸の選手権の楽しみ、フランスリーグ所属選手の活躍

 南米選手権のように欧州以外の大陸別選手権の楽しみは2つある。まず、純粋に高いレベルのサッカーをテレビで見るということである。しかしながら、これは欧州のシーズンオフに行われるサッカーで最もレベルが高いものを見たいという、サッカー中毒患者の習性であろう。そしてもう1つの楽しみはフランスリーグで活躍している数多くの外国人選手が自国の代表として違う色のユニフォームを着て活躍している姿を見たいということである。これはアフリカ選手権においては顕著な傾向であろう。

■3人しかいなかったフランスリーグ勢

 そして、今回の南米選手権は古豪ウルグアイが単独最多となる15回目の優勝を飾ったが、南米の両雄であるブラジルとアルゼンチンは準々決勝で姿を消してしまった。そして肝心のフランスリーグに所属する選手であるが、参加12チーム(招待2チームを含む)にわずか3人しかいなかった。その内訳であるが、ペルーのGKのラウル・フェルナンデス(ニース)、コロンビアのMFのカルロス・サンチェス(バランシエンヌ)、チリのMFのマルコ・エストラーダ(モンペリエ)と言うメンバーである。ペルーは3位に入っているが、コロンビア、チリは決勝トーナメント1回戦で敗退している。
 3人のうちで最も活躍したのは28年ぶりの3位となったペルーのゴールを守ったフェルナンデスであるが、フェルナンデスはペルーのウニベルシタリオ・デポルテスからニースには昨年移籍しているが、ニースには元フランス代表のリオネル・レティジがいるため出場機会に恵まれず、ウニベルシタリオ・デポルテスにレンタル移籍されており、フランスのファンにはなじみの薄い選手である。
 また、チリのエストラーダはモンペリエで活躍をしているが、昨季初めにチリのウニベルシダ・デ・チリから移籍してきたばかりであり、フランスのファンはまだ1シーズンしかエストラーダのプレーを見ていない。
 フランスのファンに一番知られているのはコロンビアのサンチェスである。アルゼンチンのリバープレートに所属していた2007年5月にパナマ戦で代表にデビューし、マンオブザマッチに選ばれる。そしてその数週間後、欧州移籍となり、バランシエンヌのユニフォームを着る。バランシエンヌではコンスタントに試合に出場しているが、バランシエンヌと言うクラブのステータスを考えると物足りない。

■昨年のワールドカップで活躍した南米の大物3選手

 参考までに昨年のワールドカップには南米から5チーム出場しているが、フランスのクラブに所属していた選手は今回の南米選手権同様3人である。しかし、この3人の顔ぶれがすごい。まずブラジルのミシェル・バストス(リヨン)、そしてアルゼンチンのガブリエル・エインセ(マルセイユ)、そしてウルグアイのディエゴ・ぺレス(モナコ)、奇しくも南米の3強と呼ばれているチームに1人ずつ分布している。そしてバストスとエインセの2人はクラブチームでもフランス国内外の戦いで大活躍しており、本連載にもしばしば登場した大物役者であったが今回は代表から外れてしまった。そして今大会の優勝メンバーとなったペレスは昨年のワールドカップ後にイタリアのボローニャに移籍している。
 それからわずか1年、南米選手権からフランスの劇団に所属する大物役者が消えてしまい、フランスのファンにとっては少々物足りない大会になってしまったようだ。(この項、終わり)

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