第1286回 20歳以下代表、未踏峰への挑戦 (2) 主将グエイダ・フォフォナの奮闘もポルトガルの堅守を破れず

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■欧州勢唯一の複数回の優勝を誇るポルトガル

 決勝トーナメントでエクアドル、ナイジェリアを下したフランス、準決勝で対戦するのはポルトガルである。これまで17回のこの大会の優勝経験のある国は8か国である。最多優勝を誇るのは6回のアルゼンチン、続いてブラジルが4回、南米の両雄だけでこれまでの半分以上の優勝を記録している。そしてこの両国に次ぐ優勝回数を誇るのがポルトガルであり、1989年大会と1991年大会で連覇を飾っている。複数回の優勝経験があるのはこの3か国だけであり、それ以外はソ連、西ドイツ、ユーゴスラビア、スペイン、ガーナという5か国が1回ずつ優勝したことがあるだけである。
 ポルトガルの20歳以下の代表が世界にデビューしたのは日本で開催された1979年のワールドユース、大会前にはスペインとグループリーグで同じ組になった日本がポルトガル遠征をして日本が仮想スペインのポルトガルに勝利したことから、日本の皆様ならばよくご存じのチームであろう。本大会ではグループリーグを勝ち抜いたものの準々決勝でウルグアイに延長戦の末、敗れている。
 その後10年間の沈黙を経て1989年大会と1991年大会で連覇を果たすが、この時はポルトガルの黄金世代と言われるジョアン・ピント、ルイ・コスタなどが中心となった。

■忘れられない2度のポルトガルとの準決勝

 1995年大会も3位に入り、欧州の中では最も良い成績を残しているチームである。フランスはこのポルトガルと20歳以下の世界大会では対戦経験がない。しかしフル代表での両国の対戦は本連載でしばしば紹介している通り、ファンにとっては忘れられない試合が多い。まず1984年欧州選手権の準決勝、マルセイユで行われたこの試合は壮絶な点の取り合いとなり、ミッシェル・プラティニが将軍になった試合である。そして2000年欧州選手権準決勝、この試合はポルトガルが先制し、フランスが後半に追いつき、延長戦となったが、延長後半の終盤にポルトガルのDFの線上でのハンドがPKとなり、ジネディーヌ・ジダンが決勝点を決めている。

■ポルトガル戦勝利の立役者、ミッシェル・プラティニとジネディーヌ・ジダン

 この2試合はいずれも準決勝であり、勝利したフランスは決勝戦も制して、優勝を飾っている。今回の20歳以下の代表にもファンは同じ期待をするのは不思議なことではないであろう。現在の若きブルーを牽引するのは主将のグエイダ・フォフォナである。5年前から継続しているこのチームにおいて常に主将を務めてきた。準々決勝のナイジェリア戦の勝利はこの主将の力によるところが大きい。先述の2度のポルトガルとの準決勝も1984年はプラティニ、2000年はジダンと、いずれも主将が勝利の立役者となった。フォフォナにプラティニやジダンの姿を思い出すファンも少なくない。

■堅守ポルトガル、570分間無失点で決勝に進出

 メデリンで行われた準決勝には4万人以上の観客が集まった。フランスは立ち上がりから試合を支配する。しかし、先制点は9分、ポルトガルがCKをファーサイドに蹴りこむ。ノーマークとなったダニーロが高い打点の完璧なヘディングでゴールネットを揺らす。フランスもクレマン・グルニエが見事なFKでゴールを狙うがポルトガルのGKに阻まれる。
 そして40分にはカリデュー・クリバリーがポルトガルの選手にペナルティエリア内でファウル、PKが与えられる。ネルソン・オリベイラのキックをフランスのGKジョナタン・リガリもよく反応したがわずかに及ばず、フランスは2点のリードを許してハーフタイムを迎える。  後半も攻撃を仕掛けたのはフランスであった。そして背番号8、左腕に黄色いキャプテンマークを付けたフォフォナは果敢にミドルシュートを狙うが、鉄壁を誇るポルトガルのGKミカの壁を破れない。
 ポルトガルはフランスを2-0と完封、ポルトガルはグループリーグから無失点、通算570分間無失点(1試合は延長)と言う大会新記録を作り、決勝へ進出する。試合を支配しながら敗れたフランスのイレブンはグラウンドに倒れこんだのである。(この項、終わり)

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