第1442回  ディディエ・デシャンの新生フランス(5) またもスコアレスドロー、白星ならず

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ベンチ入り全員が国外のクラブに所属するウルグアイ

 ディディエ・デシャン監督の初陣となるルアーブルの大西洋競技場でのウルグアイ戦、過去3試合はスコアレスドローという拮抗した戦績である。ウルグアイはエースのルイス・スアレスがメンバーから外れているが、フォルランはメンバーに入っており、ベンチのメンバーを含めて全員が国外のクラブに所属している。国外のクラブの国別の内訳であるが、ブラジルのクラブに所属している選手がディエゴ・フォルラン(ポルトアレグレ)を含め3人、イタリア、スペイン、ポルトガルのクラブがそれぞれ2人南欧の国のクラブが欧州勢では多い。そしてトルコとフランスのクラブに所属している選手が1人ずついる。フランスのクラブに所属している選手はパリサンジェルマンのディエゴ・ルガーノでありウルグアイの主将を務める。

■南米選手権以降も負け知らず、熟成したメンバーで来仏

 ウルグアイは昨年の南米選手権で優勝した後に始まったワールドカップ予選では3勝2分、それ以外の親善試合でも2勝2分と負けなしであり、世界ランキングも4位をキープしている。このフランス戦も過半数の選手は代表出場歴50試合以上であり、熟成したメンバーが中心である。

■フレッシュな陣容のフランス

 片や、世界ランキングでは14位のフランス、注目の先発メンバーであるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右にマチュー・ドビュッシー、中央にマプー・ヤンガ・エムビワとママドゥ・サコ、左はパトリス・エブラ、MFは守備的な位置に2人、右はリオ・アントニオ・マブーバ、左はマキシム・ゴナロン、攻撃的なMFは両翼に張り出し、右にマチュー・バルブエナ、左にフランク・リベリー、そしてFWは2トップで右にカリム・ベンゼマ、左にオリビエ・ジルーである。
 注目の主将についてはマブーバも予想されたが、デシャン監督は欧州選手権まで務めていたロリスで問題なし、としてリヨンのGKが継続してキャプテンマークを着用する。そして新戦力並びに復帰組であるが、ストッパーのヤンガ・エムビワが代表にデビューし、負傷のヨアン・カバイエと欧州選手権でチーム内の規律を乱して出場停止となったヤン・エムビラが不在の守備的MFは5年ぶりの代表復帰となったマブーバとこの試合が代表3試合目のゴナロンである。代表歴の浅いメンバーが多く、これまでの代表で10試合以上出場している選手はリベリー(64試合)、ベンゼマ(49試合)、エブラ(42試合)、ロリス(37試合)、バルブエナ(12試合)の5人と半数に満たない。

■ボールを支配するも決定機を作れず、ワールドカップ予選に不安

 選手として103試合に出場したデシャンの104試合目が2万5000人の満員の観衆の前でキックオフされた。
 試合は88年ぶりに代表チームを迎えるルアーブルの観客の声援に後押しされたフランスが積極的な試合運びをして、ボールを支配する。しかし、なかなかフランスはシュートに結びつけることができず、期待されたベンゼマ-ジルーの2トップも機能しない。試合序盤で目立ったのがストッパーのヤンガ・エムビワである。13分にはピンチをタックルでしのぎ、15分には敵陣ゴール前でヘディングシュート、監督が変わるたびにメンバーが一新する代表チームのストッパーであるが、定着に向けて上々のデビュー戦である。また右サイドDFのドビュッシーも攻撃参加などいい動きをしていたが、28分に負傷して退場、クリストフ・ジャレが代表にデビューする。
 前半は守りを固めたウルグアイに対し、フランスの攻撃陣がウルグアイの守りを崩すことができずハーフタイムとなる。後半はマブーバに代えて、エチエンヌ・カプーが登場し、代表出場歴のない3人すべてが代表デビューを果たした。マブーバの動きは悪くなく、マブーバ自身も継続してプレーをしたかったであろうが新戦力のテストという点で交代させたのであろう。
 試合は結局0-0と今回もスコアレスドローに終わった。ウルグアイとは4戦連続のスコアレスドロー、そして新監督としては5人連続して引き分け以下のスタートとなった。
 さて、9月7日から始まるワールドカップ予選ではどのような試合を見せてくれるであろうか。(この項、終わり)

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