第1513回 ドイツに27年ぶりに敗れる(4) ドイツにボールを支配され、逆転負け

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■現役時代にドイツ戦には負けなしのディディエ・デシャン監督

 セビリアの死闘もフランスの敗戦も記憶にないであろう22人の選手がスタッド・ド・フランスのピッチに立つ。両チームを率いる監督も現役の選手としてはその歴史を体感していない。まず、フランスのディディエ・デシャン監督、1968年生まれであり、フランス代表デビューは1989年のことであり、選手として、ドイツに敗れた経験はない。またデシャンは代表にデビューして1年以内に東ドイツと西ドイツに親善試合で連勝しており、フランスがドイツに対する優位な時代はデシャンの歴史であると言ってもいいであろう。
 一方のドイツのヨアヒム・レーブ監督は、1960年生まれであり、デシャン監督より8歳年長である。1978年にプロとなり2部のフライブルクでプレー、1980年には1部のシュツットガルトに移籍し、21歳以下のドイツ代表に選ばれたこともあったがフル代表に選ばれたことがない。
 レーブ監督もスイスでプレーした経験があり、イタリア、イングランド、スペインでのクラブでも活躍したデシャン監督ともども国外でプレーするようになったのがこの世代以降であろう。

■国内外のビッグクラブに所属する選手たち

 そして両チームの先発メンバーを見渡してみると、両チームとも国内リーグの選手が多いが、所属クラブ別でみるとイングランドのアーセナルとドイツのバイエルン・ミュンヘン所属の選手がそれぞれ4人いる。アーセナルはフランスのサーニャとコシエルニー、ドイツのメルテザッカーとポドルスキーという具合に2人ずついる。バイエルン・ミュンヘンはフランスのリベリー、ドイツはゴメス、ラーム、ミューラーの3人という具合である。このほか両チームに選手がいるのはレアル・マドリッドの3人であり、フランスはベンゼマ、ドイツはケディラとエジルである。また、このところフランス代表に多くの選手を送り込み、デビッド・ベッカムの獲得で話題になったパリサンジェルマンであるが、ドイツ戦の翌々日にリーグ戦が行われるため、今回はメンバー選出そのものが3人にとどまり、このドイツ戦も先発メンバーに入ったのはマツイディとサコの2人だけであった。

■強豪相手の年初めの試合、マチュー・バルブエナの活躍で先制

 フランスは昨年も1年の最初の試合としてドイツと対戦し勝利、一昨年もブラジルに勝利している。しかしその前の2008年と2010年はスペイン、2007年と2009年はアルゼンチン、2006年はスロバキアに敗れ、5連敗していたという歴史もある。2月に行われる親善試合は力のある国との対戦が多いが、今回も前年に続き世界ランキング2位のドイツとの対戦、格好の力試しである。
 7年連続して格上のチームとの対戦がその年初めての試合となったフランス、出色の動きを見せたのはマチュー・バルブエナであり、フランク・リベリーであった。またドイツも若い選手が多いが、欧州のビッグクラブで活躍している選手がそろい、フランスを大きく上回る60%のボール支配率となった。前半終了間際にフランスは敵陣でFKのチャンスを得る。このFKをムーサ・シソッコがバルブエナにつなぎヘディングで先制点をあげる。バルブエナはマルセイユとフランス代表でこれまで37得点をあげてきたが、これが初めてのヘディングでの得点となった。

■ボール支配率に上回るドイツが逆転勝ち、スタッド・ド・フランスで連敗

 バルブエナの得点に沸くスタッド・ド・フランスであったが後半に入り、ボール支配率に上回るドイツが反撃する。まず51分、イルカイ・ギュンドガンの45メートルのロングパスをトーマス・ミューラーが右足でシュート、ドイツは同点に追いついた。この試合、ドイツで最も輝いていた選手が最後の1点を演出する。メスト・エジルが右サイドからペナルティエリア内にパス、このパスはママドゥ・サコの背後に走り込んでいたサミ・ケディラがシュート、フランスのGKウーゴ・ロリスも届かず、この1点が決勝点となる。
 フランスはドイツに27年ぶりの敗戦となった。ホームでのドイツ相手の対戦は東ドイツには1987年に敗れているが、西ドイツには一度も負けておらず、ドイツ相手の敗戦は1935年以来78年ぶりとなる。そして昨年10月の日本戦に続き、スタッド・ド・フランスで連敗を喫したのである。(この項、終わり)

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