第1568回 フランス代表、南米遠征(7) 王国への遠征の歴史が対照的なサッカーとラグビー

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■今回が2年ぶり14回目の王国訪問となるラグビーフランス代表

 前回の本連載ではサッカーのフランス代表がブラジルを訪問するのと同時期にラグビーのフランス代表がニュージーランドを訪問し、同時に王国を訪問していることを紹介した。ラグビーのフランス代表が初めて国際試合を行った相手はイングランドなどの欧州の国ではなくニュージーランドであるということは本連載の読者の皆様ならばよくご存じであろう。サッカーのフランス代表に遅れること2年、1906年にニュージーランドと初めての国際試合を行い、8-38というスコアで負けている。しかし、フランスが初めてニュージーランドを訪問したのはその55年後、1961年7月のことである。その後、1968年に遠征し、1979年からは5年ごとに遠征を行い、1984年、1989年、1994年、1999年と訪問し、2000年代に入ると2001年、2007年、2009年と夏の遠征を行い、今回が11回目のツアーである。そしてこれ以外にニュージーランドで開催されたワールドカップにフランスは出場しており、1987年、2003年、2011年といずれもニュージーランドと対戦している。ツアーとワールドカップを合わせると実に14回、しかも今世紀に入ってから今回が6回目のニュージーランド訪問となる。

■今回が36年ぶり3回目の王国遠征となるサッカーフランス代表

 片や、サッカーの王国へのフランス代表の訪問は驚くほど少ない。フランス代表が初めてブラジルの地を踏んだのは1930年のことである。1930年にウルグアイで開催された第1回ワールドカップ、グループリーグを1勝2敗で終えたフランスは敗退するが、帰路ブラジルによりリオデジャネイロで親善試合を行う。まだブラジルが「王国」と呼ばれる前のことであったが、ブラジルも第1回ワールドカップではグループリーグで敗退している。このリオデジャネイロでの両国初の対戦はブラジルが3-2と勝利したが、この試合、ブラジル側では公式の国際試合と認めているがフランス側では認めていないというところが両国のプライドを感じさせる。
 2回目のブラジル遠征はそれから47年後のことである。1977年にアルゼンチンとブラジルを訪問し、リオデジャネイロでの戦いはマラカナンに8万人以上の観衆を集めて行われ、2-2のドローとなった。
 そしてブラジルは1950年と1970年にワールドカップを開催しているが、いずれの大会もフランスは予選落ちしており本大会に出場していない。すなわち、今回の遠征が36年ぶり3回目のブラジル訪問なのである。

■交通網の整備により遠征が増えたラグビーと減ったサッカー

 このように王国への遠征の歴史をたどるとサッカーとラグビーとでは非常に対照的なものを感じる。特に交通網の整備により南半球遠征がそれほど重荷ではなくなり、回数が増えただけではなく、1か国ではなく複数国を遠征するようになったラグビーに対し、サッカーの場合は交通網の整備が南米遠征を減らしたと言えるであろう。王国ブラジルだけではなく南米の強豪国の代表メンバーがほとんど欧州のクラブに所属しているため、親善試合を欧州で行うことが多くなり、欧州のチームの南米遠征は少なくなっている。

■45年ぶりにテストマッチ3試合、第1テストは逆転負け

 今年はサッカー代表の109年の歴史、ラグビーのフランス代表の107年の歴史で初めて両代表チームが王国を訪れるという記念すべき年となった。そしてこの王国へのツアー、ラグビーはオールブラックス相手に3試合を行う。オールブラックス相手に1回のツアーで3回対戦というのは最初の遠征の1961年と1968年以来のことである。近年、北半球の強豪がニュージーランド遠征を行う際は豪州やサモア、フィジー、トンガという国も転戦することが多く、ニュージーランド1か国に長期滞在というのは45年ぶりのことである。これは今年はブリティッシュライオンズが豪州遠征を行うこと、そしてサモアが欧州遠征を行い、フィジー、トンガはパシフィックネーションズカップを戦うことからフランスの相手がニュージーランドだけになってしまった。サッカーのブラジル戦の前日にオークランドで行われた第1テスト、フランスはニュージーランドに先行しながらも13-23で敗れてしまったのである。(続く)

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