第1577回 タヒチ、コンフェデレーションズカップに出場(1) フランスの海外県・海外領土のサッカー

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■サッカー、ラグビーともに遠征では惨敗

 前回までの本連載ではサッカーのフランス代表が南米遠征を行い、ウルグアイとブラジルに連続完封負け、ラグビーのフランス代表がニュージーランド相手に3連敗、3試合でわずか1トライと、いずれも歴史的惨敗を喫し、暗い6月になった。
 しかし、この間に明るい話題がなかったわけではない。テニスのウィンブルドンではマリオン・バルトリが女子シングルスでフランス人として7年ぶり2回目の優勝を果たし、トルコで行われた20歳以下ワールドカップではフランス代表が初優勝を果たした。そして特筆すべきは今回紹介するタヒチ代表のコンフェデレーションズカップ出場である。

■フランスの海外県・海外領土の仕組み

 フランスは海外県・海外領土を抱えた国である。帝国主義の植民地は多くが独立したが、それらとは別にフランスの中にとどまり、海外県となったのがマルティニーク、グアドループ、ギアナ、レユニオン、マイヨットの5つであり、フランス本土の県と平等な権利を持ち、国会に議員を送り込んでいる。このうちマイヨットは2003年に住民投票を行い、海外領土から海外県へと昇格している。
 これに準じるのが海外準県であり、仏領ポリネシア、サンピエール島・ミクロン島、ウォリス・フツナ、サンマルタン島、サンバルテレミー島があり、さらに特別共同体としてニューカレドニアがあり、いずれもフランスからかなり離れた大西洋上、太平洋上に点在している。

■多数のタレントを輩出した海外県・海外領土

 このように海外に今なお多くの領土を持ち、人口はフランス全体の5%弱を占め、フランスの多様性を象徴している。そして、サッカーの世界でもこれらの地域のクラブはフランスカップに出場し、時としてこれらの地域のチームがフランス本土を訪れたり、フランス本土のチームがこれらの地域に国内遠征を行ったりすることがある。フランスカップでベスト64やベスト32などが出そろう際に時差があるこれらの地域での試合の結果を待つときに、フランスの持つ多様性をサッカーファンは再認識するのである。これらの地域の出身者あるいはその子孫の活躍は本連載でもしばしば紹介している。リリアン・テュラム、マリウス・トレゾール、ティエリー・アンリ(以上グアドループ)、ジェラール・ジャンビオン、ニコラ・アネルカ(以上マルティニーク)ベルナール・ラマ(ギニア)、クリスチャン・カランブー(ニューカレドニア)など枚挙にいとまがない。

■代表チームを持つ8地域

 彼らはフランス本土のプロチームあるいは欧州のビッグクラブに所属し、フランス代表のメンバーとして活躍したが、フランスの海外県・海外領土は地域の代表チームを有するケースがある。現在フランスの海外県・海外領土でその地域を代表するチームがあるのはマルティニーク、グアドループ、ギアナ、レユニオン、マイヨット、ニューカレドニア、タヒチ、サンピエール・ミクロンの8チームである。
 これら8チームのうちFIFAに所属しているのはタヒチとニューカレドニアである。タヒチは行政的にはポリネシアの一部であり、ニューカレドニアは特別共同体であり、海外県や海外準県ではない。このような地域がFIFAに所属しているという多様性はいかにもフランスらしい。大陸別連盟に関してはレユニオンはアフリカ連盟に所属、マルティニーク、グアドループ、ギアナが北中米・カリブ連盟に所属、ニューカレドニアとタヒチがオセアニア連盟に所属し、サンピエール・ミクロンとマイヨットは大陸別連盟に所属していない。
 大陸別連盟にしか所属していないチームは、大陸別選手権あるいはその下部の地域別選手権(カリブ地域の国・地域で争われるゴールドカップなど)に出場しているが、ワールドカップ並ぶにその予選への出場はできない。しかし、大陸別連盟だけではなくFIFAにも所属しているチームは大陸別選手権で優勝すれば、FIFAが主催するコンフェデレーションズカップに出場することができる。その夢を実現したのがタヒチ代表なのである。(続く)

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