第1749回 欧州選手権目指しスタート(4) スペインに8年ぶりの勝利、好発進したフランス

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ランキングをアップさせたフランス、ダウンさせたスペイン

 フランスは過去10試合で7勝2分1敗と好成績を残している。過去10試合で唯一の敗戦がワールドカップ準々決勝のドイツ戦である。この10試合の得点は28、失点はわずか4、世界ランキングも10位まで上昇している。トップ10入りはワールドカップ南アフリカ大会前の2010年5月以来4年ぶりのことである。
 一方のスペイン、2010年ワールドカップ、2012年欧州選手権と連覇し、今回のワールドカップに臨んだが、初戦のオランダ戦で大敗し、チリ戦にも敗れて、一番早くブラジルを去ることになり、世界ランキングも一気に7位に落ちてしまった。スペインが世界ランキングで5位以下に落ちるのは2007年10月以来実に7年ぶりのこととなる。

■今世紀に入ってスペイン戦で苦戦するフランス

 上り調子のフランス、下り坂のスペインという対象的なチームの対戦となったが、過去の対戦成績、さらに近年の歴史を見るとスペインに分がある。最新の対戦は今回のワールドカップ予選、昨年3月26日にスタッド・ド・フランスでの試合は0-1と敗れ、この敗戦が響き、フランスはグループ首位の座をスペインに譲り、プレーオフ経由でのワールドカップ本大会出場となっている。アウエーではその前年の2012年10月16日に対戦し、フランスが終了間際に追いつき1-1のドローに持ち込んでいる。そしてその4か月前にはウクライナのドネツクでの欧州選手権準々決勝で対戦し、0-2と敗れている。その前も親善試合で連敗しており、フランスの最後の勝利は2006年のワールドカップドイツ大会の決勝トーナメント1回戦にまでさかのぼらなくてはならない。
 また、フランスはスペインとスタッド・ド・フランスでは3戦して1勝2敗、唯一の勝利はスタッド・ド・フランスのこけら落としとなった1998年1月28日の親善試合、さらに唯一の得点はこの試合のジネディーヌ・ジダンだけである。

■久しぶりの勝利のチャンスに集まった7万9000人の観衆

 このようにスペインに対して今世紀に入ってからは苦戦が続いているが、今回はスペインがシャビ、シャビ・アロンソというベテラン選手が引退、アンドレアス・イニエスタは負傷のためメンバーから外れ、GKもイケル・カシージャスに代えてダビド・デヘアを起用とこれまでの主力選手が外れており、フランスにとっては久しぶりの勝利のチャンスである。スタッド・ド・フランスはサッカーの試合としては久しぶりに7万9000人の観衆を集めた。

■攻めるフランス、ロイック・レミーの決勝点で勝利

 両チームの勢い、メンバーの熟成度を象徴するかのごとく、フランスが積極的に攻め、一方のスペインは消極的な試合運びとなった。特にフランスの中盤の選手の動きがよく、パスサッカーを標榜するスペインを圧倒した。
 前半は両チーム無得点に終わったが、後半立ち上がりの50分、豊富な運動量でしばしばチャンスを作ってきたムーサ・シッソコが右サイドからクロスをあげ、前半からしばしばシュートを放っていたカリム・ベンゼマがゴールネットを揺らす。スタッド・ド・フランスの観客の前での見事なゴールであったが、シッソコのポジションがオフサイドという微妙な判定で得点を認められない。その後、両チームとも親善試合ということで選手を積極的に交代する。
 そして78分、アントワン・グリエズマンに代わって入ったロイック・レミーがゴールをあげる。ゴール前での早いパス回し、マチュー・バルブエナがGKと1対1になり、シュートチャンスと思われたが、中央のレミーにパス。左足のシュートがゴール左隅に決まる。レミーは代表で6ゴール目であるがそのうち5得点がこのスタッド・ド・フランスでの得点である。ロスタイムにもベンゼマは追加点のチャンスがあったものの、スペインのGKに阻まれ、1-0という最少得点での勝利となったが、フランスが完勝、2年後に向けて期待を抱かせる好スタートとなったのである。(続く)

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