第1809回 2015年アフリカ選手権 (3) 大会3週間前に就任した赤道ギニアのエステバン・ベッカー監督

 このたびパリ並びにパリ近郊で起こった銃撃事件の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、サッカー界での人種差別についてしばしば取り上げている本連載に対する読者の皆様からのご支援に感謝いたします。

■大陸部と島部に分かれている開催国の赤道ギニア

 エボラ出血熱流行に対するモロッコの反応を受けて急遽代替開催となった赤道ギニア、サッカーファンの皆様だけではなく、日本の皆様にはなじみの薄い国であろう。カメルーンの南、ガボンとの間に挟まれた小さな国である。赤道と名がつくが、赤道が通っているわけではない。国土はアフリカ大陸でこのカメルーンとガボンに挟まれた部分とギニア湾に浮かぶビオコ島、アンノボン島からなる。首都はビオコ島にあるマラボであるが、この赤道ギニア最大の都市はアフリカ大陸部にあるバタである。今大会は4都市で開催され、大陸部のバタ、エベビイン、モンゴモ、そしてビオコ島のマラボを使用する。

■バタ、エベビイン、モンゴモ、マラボの4都市で開催

 16チームが参加し、4チームずつ4つのグループリーグを戦うが、グループAはバタ、グループBはエベビイン、グループCはモンゴモ、グループDはマラボで行われる。そして決勝トーナメントはバタとマラボで行われ、2月8日の決勝戦はバタで行われる。このうちバタとマラボは2012年大会、2012年女子アフリカ選手権でも使用された。
 メイン会場のバタで行われるグループAには開催国の赤道ギニアが入っている。また、グループリーグの最終戦だけは2試合同時にキックオフするため、グループAとBはバタとエベビイン、グループCとDはモンゴモとマラボで行われる。交通網などのインフラが整備された国で行われるワールドカップは1998年のフランス大会以降、グループリーグを特定の都市で行うことになったが、大型スポーツイベントの開催経験の乏しい国で行われることの多いアフリカ選手権は、かつてのワールドカップのようにグループリーグを特定の都市で開催している。

■第1シードは赤道ギニア、ガーナ、コートジボワール、ザンビア

 さて、グループリーグの組み分けであるが、過去のアフリカ選手権の本大会と予選、ワールドカップ予選というアフリカの国同士で戦った試合の結果を基にして4つのシード順に分けられた。第1シードとなるポット1には開催国の赤道ギニア、ガーナ、コートジボワール、ザンビアが入った。昨年のワールドカップでの活躍の記憶も新しいアルジェリア、前回大会の準優勝チームのブルキナファソはいずれも第2シードにとどまった。
  開催国の赤道ギニアであるが、これまでワールドカップ予選、アフリカ選手権予選ではこれといった成績を残していない。独立の時期が他のアフリカ諸国よりも遅い1968年であったとはいえ、ワールドカップ予選にチャレンジし始めたのは2002年の韓国・日本大会が最初である。またアフリカ選手権の予選についても1990年大会に参加したが、次の参加は2002年大会まで待つこととなり、予選を突破して本大会に出場したことはない。ガボンと共同開催した2012年大会に開催国として出場しただけである。
 しかし、本連載第1353回で紹介した通り、この大会で赤道ギニアはリビア、セネガルに勝利し、決勝トーナメント進出を果たしたのである。これがこの赤道ギニア唯一の目覚ましい戦績であり、また大会運営的にも大きな問題がなかったことから今回の代替開催につながっている。

■赤道ギニアを率いるアルゼンチン人のエステバン・ベッカー

 この赤道ギニアを率いるのはアルゼンチン人のエステバン・ベッカーである。赤道ギニアはスペインから独立したということもあり、代表監督はスペイン語圏のアルゼンチン人が務めてきた。ベッカー監督は引退後はスペインの下部のクラブの監督を務め、2012年からは女子代表の監督に就任し、同年秋に開催された女子のアフリカ選手権では見事に優勝を果たしている。女子代表の監督を務めながら、男子代表では同じアルゼンチン人のアンドニ・ゴイコエチア監督をテクニカルディレクターとして支えた。そして今回、アフリカ選手権の代替開催が決定し、本大会出場したチームが練習試合を重ねた中でポルトガルのベンフィカのBチームに敗れたことでゴイコエチアが監督の座を追われ、ベッカーが大会3週間前に監督に就任したのである。(続く)

このページのTOPへ