第2193回 シーズン終了後の3連戦(6) 英国でのテロ被害者を悼み黙祷

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■英国で相次ぐテロとセキュリティの強化

 バカンス前の最後の試合となるイングランドとの親善試合、スウェーデン戦の敗北から気分を変えて快勝したいところである。相手は強豪、ライバルとはいえ親善試合である。リラックスした気分で戦いところであるが、そうもいかないのがセキュリティ面である。前回のイングランド戦はスタッド・ド・フランスを含むパリ市内の同時多発テロが起こった4日後にロンドンのウェンブリーで行われた。そして今もなお、欧州の各地でテロが発生しており、特に英国では3月22日にロンドンのウェストミンスター橋で自動車によるテロが起こり、実行犯を含む5人が死亡、5月22日にはマンチェスターのアリーナでアリアナ・グランデでのコンサート中にテロが発生し、実行犯1名を含む23人が命を落とし、6月3日にはロンドンのロンドン橋で襲撃事件が起こり8人が亡くなったたばかりである。
 スタッド・ド・フランスは8万人の満員の観衆で埋まるが、そのうち2000人はイングランドから移動してきたファン、それに加えて多くのフランス在住のイングランド人がスタジアムに集う。
 さらにフランスのエマニュエル・マクロン大統領が代表戦デビュー、さらには海を越えて英国のテレーザ・メイ首相も臨席する。
 テロの格好の標的となりうるわけであるが、フランスの治安当局は1300人のセキュリティ舞台と1000人以上の警官を配備した。

■スタッド・ド・フランスのビジョンに投影される「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」

 そのような厳戒態勢の中、キックオフ時間の時間が近づく。南側のゴール裏にはイングランドのサポーターが陣取る。キックオフ前から平和を希求したジョン・レノンのナンバーを合唱し、時としてそれはスタッド・ド・フランス全体を包み込んだ。そしてキックオフ時間が近づき、満員のスタジアムに青いユニフォームと赤いストッキングのフランスイレブン、純白のユニフォームのイングランドのイレブンが姿を現す。ゴール裏には白地に赤十字のセントジェームズの旗のコレオグラフィーが浮かび上がる。
 国歌演奏の時間となる。ビジターのイングランドの「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」が先に演奏されるが、フランス代表のブレーズ・マツイディの提唱によってスタッド・ド・フランスのビジョンに歌詞が投影される。キックオフ直前には両チームの選手がセンターサークル上に立ち、マンチェスターとロンドンでの犠牲者を悼み1分間の黙祷がささげられる。

■黒い喪章を左腕に巻いたイングランドのメンバー

 さて、スリーライオンズを胸に抱き、黒い喪章を左腕に巻いたイングランドの先発イレブンを紹介しよう。3-4-3システムでGKはトム・ヒートン、DFは右からフィル・ジョーンズ、中央にジョン・ストーンズ、左にギャリー・ケーヒル、MFはフラットに4人が並び、右からキーラン・トリッピアー、エリック・ダイアー、アレックス・オックスレイド・チェンバレン、ライアン・バートランド、FWは右にラヒーム・スターリング、左にデル・アリ、中央はハリー・ケインである。イングランドは伝統を重んじ、背番号1から11までを順に着用する。

■11人中4人がトットナム・ホットスパーの選手

 この中で代表初出場は背番号2のトリッピアーである。イングランド代表として1222人目の選手となった。このトリッピアーはトットナム・ホットスパー所属の選手であり、ダイアー、アリ、ケインとイングランドの先発にはスパーズの選手が4人も顔を並べ、ベンチにはカイル・ウォーカーも控えている。
 トットナム・ホットスパーと言って忘れてはならないのがフランスの主将、ウーゴ・ロリスである。4日前のスウェーデン戦のアディショナルタイムはロリスにとっては忘れられない時間となった。本連載第1603回で紹介したとおり、ロリスは4年前の秋、2013年9月のベラルーシとのワールドカップ予選で、ハンドリングエラーを犯して失点したことがあるが、ミスの少ない名手であった。ベラルーシ戦はゴールラッシュで4-2と勝利したが、スウェーデン戦は痛恨の決勝点となった。本来ならば、親善試合は他の選手にポストを譲ることも考えられたが、この日もキャプテンマークをつけてピッチに立ったのである。(続く)

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