第2513回 女子ワールドカップ開幕前の親善試合(2) 負傷者を抱えた中で中国に勝利し開幕を迎える

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■開幕前最後の対戦相手はアジアの強豪・中国

 初優勝を目指すフランス、ワールドカップ初戦の韓国戦を意識して、メンバー発表以降の親善試合は2試合ともアジアから本大会に出場するタイ、中国を対戦相手として選んでいる。初対戦となったタイ戦については、前回の本連載で紹介したとおり、控え選手中心のメンバーで臨み、前半は無得点であったが、後半に入ってベテランの主将のエリーズ・ビュサグリアの先制点を皮切りに3点を奪い、3-0と勝利した。
 本大会前最後の試合は5月31日に中国と対戦する。中国戦の先日にはクレールフォンテーヌで男女のフル代表、男子の21歳以下の代表の3チームが一堂に会しディナーを共にしている。男子の代表はこれまでの本連載で紹介してきたようにワールドカップや欧州選手権の本大会前の直前の試合は意図的に力量の差があるチームをノミネートして圧勝し、その良い感覚のまま本大会の開幕を迎えるのが定石であった。しかし、女子代表のコリンヌ・ディアクル監督は開幕前最後の試合を世界ランキング16位とタイよりも上位の中国と対戦する。グループリーグではドイツ、スペイン、南アフリカと戦い、ランキング上位の欧州勢2チームのいずれかを倒したい中国にとってもフランス戦は格好のスパーリングパートナーである。

■ユージェニ・ルソメ、アメル・マジリに加え、アマンディーヌ・アンリもスタンドで観戦

 ディアクレ監督は中国戦は韓国戦を意識したメンバー起用をする。女子チャンピオンズリーグの決勝を戦い、負傷を抱えているリヨンのユージェニ・ルソメとアメル・マジリは休ませたが、予定外の事態として主将を務める予定であったアマンディーヌ・アンリが試合開始の直前になって出場を回避した。アンリもリヨンの選手であり、疲労が蓄積していたため、大事を取って出場を見合わせた。
 フランスのメンバーを紹介するとGKはサラ・ブハディ、DFは右からマリオン・トラン、グリエッジ・ムボック、ウェンディ・ルナール、エブ・ペリッセ、守備的なMFはシャルロット・ビルボーとビュサグリア、攻撃的MFは右にデルフィン・カスカリノ、左にカディディアトゥ・ディアニ、トップ下の中央にはガエタン・ティネ、FWは1トップでバレリー・ゴーバンである。
 リヨンに所属する主力3人がスタンドから観戦することになったが、それでもリヨンの所属する選手4人が先発に名を連ねた。この試合の主将を務めるブハディ、ムボック、ルナール、カスカリノという顔ぶれである。タイ戦は白いユニフォームを着用したが、この中国戦はフランスが上から青白赤のトリコロール、白いユニフォームの中国との対戦に、パリ近郊のクレテイユのドミニク・ドュボーシェル競技場には1万人を超えるファンが集まった。

■22歳最後の日にゴールを決めたバレリー・ゴーバン

 かつての女子サッカーの雄であった中国は明らかにタイよりも力がある。1989年の初対戦以来これまで10戦して、フランスは3勝3分4敗である。この試合も中国の攻撃陣に対しストッパーのルナールとムボックが対峙するシーンが見られた。
 しかし、先制点を奪ったのはフランスである。30分にディアニがクロスを入れるが中国の守備陣がクリアする。このクリアボールをトランが拾い、遠い位置からシュートする。これをゴール前にいたゴーバンが右足で得点を決める。試合の翌日に23歳の誕生日を迎えるゴーバンにとっては一日早いバースデープレゼントとなった。
 前半を1点リードして折り返したフランスであるが、中国は後半に入って52分、王珊珊がゴール前でムボックをかわしてシュート、同点に追いつく。
 同点に追いつかれたフランスは58分にディアニがボールをキープして前進、中国の選手を3人かわす。ペナルティエリアに入ったところで右足でシュートし、これが決勝点となる。

■今季の成績は10勝1敗、気がかりなのは負傷者

 フランスは中国を2-1と下して本大会に臨む。フランスは4連勝で、今シーズンはドイツに敗れた以外はすべて勝利し、10勝1敗という好成績を残した。しかし、ルソメ、マジリのリカバリー具合に加え、アンリの負傷という懸案も抱えた中で開幕を迎えるのである。(この項、終わり)

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