第2522回 2019年女子ワールドカップフィナーレ(1) 米国、圧倒的な強さで優勝

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■イングランド戦の先発から外れたミーガン・ラピノー

 前回までの本連載で紹介した通り、女子ワールドカップ準々決勝でフランスは米国に敗れ、初優勝の夢が絶たれ、前年の男子に続くアベック優勝は達成できなかった。
 準決勝から舞台はリヨンへと移る。準決勝の第1試合、米国はイングランドと対戦する。準々決勝を終えた時点で米国のミーガン・ラピノー、アレックス・モーガン、イングランドのエレン・ホワイト、豪州のサマンサ・カーが5得点で並んでいる。すでに豪州は姿を消しているため、得点女王争いをする3人が一堂に会すはずであった。ところが米国の先発メンバーにラピノーの名前がない。ラピノーの代わりに左のウイングの位置にはクリステン・プレスが入る。

■先制攻撃の米国、代役のクリステン・プレスが先制点

 一方のイングランド、前回大会はこれまでで最高の3位、準決勝に勝利すれば、史上最高の成績となる。シービリーブズカップでは2-2と引き分けており、勝機は十分にある。イングランドのキックオフでリヨンでの最終フェーズが始まった。米国はいつも通り、立ち上がりから圧力をかけ、イングランドは自陣ゴール前にくぎ付けとなる。10分、米国は右サイドのケリー・オハラがクロスをあげる。ファーポストのプレスに対するマークが甘くなる。プレスが先制ゴールを決める。これで米国はグループリーグから通算して6試合、いずれも開始15分以内に先制点をあげている。しかし、イングランドも意地を見せ、19分にホワイトが同点ゴール、ホワイトは得点ランキングで単独トップとなる。
 ところが、31分にリンゼイ・ホランがアシストしてモーガンが勝ち越し点を奪う。モーガンも6得点目、ホワイトの単独トップは12分で終わる。その後は米国が安定した試合運びで1点差を守りきる。米国は8大会連続でのメダルを確定した。

■本大会2回目の出場で決勝に進出したオランダ

 翌日の7月3日にはオランダとスウェーデンが対戦、両チームとも欧州勢では第2グループという評価であったが、オランダは決勝トーナメントで日本、イタリアに勝利、スウェーデンはナイジェリアとドイツを破っての準決勝進出である。この試合は90分を終えたところで両チーム無得点 これはグループリーグの日本-アルゼンチン戦以来、今大会2回目のことである。延長戦に入り、オランダが99分に決勝点をあげ、本大会2回目の出場にして決勝進出を決める。決勝は過去2回、米国と日本との間で争われた。欧州勢が決勝に進出するのは2007年大会のドイツ以来のことである。
 オランダはワールドカップ出場が2回目、そしてオリンピック出場経験もない。実はこれが米国との公式戦での初めての対戦となる。ただ、オランダは2017年の欧州選手権では初優勝している。地元開催とはいえ、それまでほとんど実績のなかったオランダの優勝は欧州を驚かせた。

■前半無得点ながら、後半に2点を奪った米国が2大会連続4回目の優勝

 決勝は7月7日、今大会最高の57,900人の観衆の前で行われた。主審はフランス人のステファニー・フラッパール、男女通じて久しぶりの決勝戦のフランス人主審である。
 グループリーグはともに3戦全勝であるが、米国の18得点無失点はオランダの6得点2失点を大きく上回っていたが、米国は決勝トーナメントに入ってからは3試合とも2-1という接戦である。米国はオランダ戦はそれ以上の苦戦を強いられる。優勢に試合を進めたものの、前半はオランダの果敢な守備の前に無得点に終わる。先制攻撃を仕掛けてきた米国にとって初めての無失点でのハーフタイムである。
 しかし、後半に入って61分、米国のモーガンがペナルティエリア内でオランダの選手に蹴られる。ビデオ判定の結果、PKが与えられ、これをラピノーが決める。ラピノーはモーガン、ホワイトとともに6得点となった。そしてその8分後にローズ・ラベルがドリブルで持ち込んでそのまま左足でシュート、決定的な追加点となる。
 米国はオランダを2-0で退け、2大会連続4回目の優勝を果たし、ラピノーは得点王と最優秀選手に輝いたのである。(続く)

このページのTOPへ