第2863回 25年ぶりのオリンピック(7) 新戦力の押し上げなしに最終戦を迎えるフランス

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■2点差で日本に勝利すれば決勝トーナメント進出

 オーバーエイジ枠のアンドレ・ピエール・ジニャック、テジ・サバニエの得点で南アフリカに対して逆転勝ちを収めたフランス、オリンピックでの勝利は25年前の米国のマイアミでのサウジアラビア戦以来のこととなる。そして第1戦に勝利した日本とメキシコの試合は日本が2-1と勝利し、フランスは第3戦で日本と対戦することになった。
 第2戦を終えた時点でのグループAの成績であるが、首位は勝ち点6の日本、勝ち点3でメキシコとフランスが並ぶが、得失点差はメキシコは+2、フランスは-2である。そして南アフリカには勝ち点はない。上位2チームが決勝トーナメントに進出する。フランスは、最終戦の日本戦で勝利すれば勝ち点で日本と並び、さらに2点差で勝利すれば日本を得失点差でも並び、総得点で上回ることになり2位以内が確定する。

■第2戦とは2人先発を入れ替えたフランス

 2点差の勝利を目指すフランスの先発メンバーはGKはポール・ベルナルドーニ、DFは右からクレマン・ミシュラン、ピエール・カルル、アントニー・カーチ、ティモテー・ペンベレ、MFは低い位置にルカ・トゥザール、高い位置には右にテジ・サバニエ、左にアレクシス・ベカ・ベカ、FWは右にフローリアン・トーバン、中央にアンドレ・ピエール・ジニャック、左にランダル・コロ・ムアニである。
 第2戦の南アフリカ戦は第1戦のメキシコ戦と先発3人を入れ替えたが、この第3戦も第2戦と2人先発を入れ替えている。第2戦で入れ替わって入ってきたエンクンク、ムブク、コロ・ムアニのうち、第3戦でも連続して先発したのはコロ・ムアニだけである。また日本戦で先発メンバーに加わったベカ・ベカとペンベレはいずれも初先発である。

■先発メンバーの中心は6月からの10人のメンバー

 つまり、8人の選手が3試合連続して先発しており、残り3つのポジションが固定していないチームであるといえる。これには今回のフランスのオリンピックチームならではの事情が絡んでいる。6月に18人のメンバーをフランスは発表したが、各クラブとの交渉の末、7月に入ってそのうちの8人はメンバーから外れ、11人が追加招集された。そしてその11人のうちの1人は負傷により新たなメンバーに入れ替わるとともに、2人は実質的にチームに帯同していない。
 この急造チームがクレールフォンテーヌで行った合宿はわずか1週間、さらには大会前の試合の機会もフランス国内では行えず、ソウルで韓国と1試合行っただけである。6月からの10人のメンバーを中心にチームを運営してきたのである。3試合続けて先発している8人のメンバーは全員が6月からのメンバーである。そして6月からのメンバー10人のうち、残りの2人は第1戦のみに先発したアルノー・ノルダン、第2戦と第3戦に先発したコロ・ムアニというわけである。

■新戦力として定着できない7月からの追加招集メンバー

 7月に追加招集されたメンバーは各クラブにおいて重要な位置づけではない選手が多く、力量だけではなく、年齢、経験も不足している。したがって、このようなメンバー構成になる。サッカーは11人で行うスポーツ、コアとなるメンバーが11人そろわないのでは厳しい戦いになり、追加招集したメンバーのうちだれを起用するかという草サッカーのような選手起用にシルバン・リポル監督は頭を悩ませたのである。
 チームの初試合となる7月16日の韓国戦でリポル監督は先発メンバーにオーバーエイジ3人を含む6月からのメンバーを9人、そして7月の追加招集メンバーからエンゾ・ルフェとモティボ・サニャンの2人を選んだ。日本と並んで優勝候補と目される韓国相手にフランスは守勢に回り、69分にはPKで先制を許す。しかし84分に途中交代したコロ・ムアニが同点ゴール、そして89分にナタナエル・ムブクが決勝点をあげて逆転勝利した。この勝利を受けてメキシコ戦も韓国戦と同じ先発メンバーで臨んだが、大敗を喫した。結局、7月に追加招集したメンバーの中からレギュラーに定着する選手の現れないまま、6月からのメンバー中心の布陣でグループリーグ最終戦を迎えたのである。(続く)

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