第2867回 オリンピック代表メンバーのスペイン、ドイツとの比較
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■フランスと同条件で比較可能なスペインとドイツ
フランスサッカー連盟にとって今年の主要国際大会はフル代表の欧州選手権、24歳以下のオリンピック、そして前回紹介したU-21欧州選手権の3大会である。この3大会にフランスはすべて出場したが、欧州選手権は16強、オリンピックはグループリーグ敗退、U-21欧州選手権は8強であった。
その中でも最も成績の悪かったオリンピックは、選手をそろえることができず、急造チームで臨んだことが敗因であることを本連載第2857回から第2865回で紹介してきた。フル代表の欧州選手権の存在、8月から始まる各国リーグ戦との兼ね合いで各クラブが選手をオリンピック代表に送ることを拒否したことを紹介したが、今回はオリンピックに出場した他の欧州の国の事例と比較してみよう。
欧州からオリンピックに出場したのは2019年に開催されたU-21欧州選手権で優勝したスペイン、準優勝のドイツ、準決勝敗退のフランスとルーマニアの4か国である。この4チームはいずれも今春開催されたU-21欧州選手権に出場し、ルーマニアはグループリーグで敗退したものの、スペイン、ドイツは決勝トーナメントに進み、ドイツは優勝、スペインも準決勝に進出している。また、スペイン、ドイツは欧州選手権の本大会に出場している。
つまり、オリンピック出場選手の選考条件は、スペインやドイツはフランスと同じである。
■ほとんどの選手がU-21欧州選手権かフル代表の欧州選手権に出場しているスペイン
スペインはオリンピック代表に22人をエントリーしたが、3人のオーバーエイジ（いずれも欧州選手権にはエントリーせず）と19人の1997年1月1日以降生まれ（以下24歳以下）からなる。19人の中で7人が1997年生まれ（24歳）であり、U-21欧州選手権の出場資格（1998年1月1日以降生まれ、以下23歳以下）を有しているのは12人である。
24歳の7人についてはそのうち3人が欧州選手権のメンバーにもなっている。23歳以下の12人はU-21欧州選手権の出場資格を有しており、そのうち9人はU-21欧州選手権のグループリーグあるいは決勝トーナメントのうち少なくとも一方にエントリーされている。残るペドリ、ダニ・オルモ、エリック・ガルシアの3人はU-21欧州選手権にはエントリーされず、同時期に行われたフル代表での活動を行い、欧州選手権に出場している。
23人がエントリーしたフル代表の欧州選手権はオリンピック出場資格のある選手が7人いたが、第三GKのロベルト・サンチェス以外の6人はオリンピックに出場している。
すなわち、スペインのオリンピックチームは3人のオーバーエイジと19人の24歳以下の選手からなるが、19人のうち9人はU-21欧州選手権、6人は欧州選手権に出場しており、今年の国際大会でオリンピックのみに出場という選手は24歳の4人だけである。また、フル代表の欧州選手権にエントリーされた23歳以下の選手は、U-21欧州選手権にはエントリーされていない。これは23歳以下で実力のある選手は欧州選手権終了まではフル代表に専念し、欧州選手権が終了したらオリンピックチームに合流というシナリオであり、このような熟成したメンバーが、チームを決勝に導いたのである。
■24歳の選手を集め、23歳以下はU-21欧州選手権に出場したドイツ
一方、ドイツは19人のメンバーのうち、3人がオーバーエイジ、9人が24歳であり、23歳以下は7人だった。しかし、この7人のうち5人はU-21欧州選手権にエントリーしている。また、フル代表の欧州選手権の23人のうち、24歳以下は3人（カイ・ハバーツ、フロリアン・ノイハウス、シャマル・ムシアラ）いたが、オリンピックにもU-21欧州選手権にもエントリーしていない。つまり、フル代表以外の24歳以下のメンバーでベストメンバーを組んだと言える。しかし、そのドイツもグループリーグで3位に終わり、敗退している。
■オリンピック代表にメンバーを集められなかったフランス、当然の敗退
このように考えると、欧州選手権に出場した選手はおらず、U-21欧州選手権にエントリーした選手もわずか2人、年齢制限上限の24歳の選手は4人というフランスの敗退は当然の帰結である。これはクラブ側の商業主義だけではなくファンも各選手のクラブでの活躍を望んだ、すなわち非日常のオリンピックよりも日常のクラブを選んだということであろう。（この項、終わり）
