第3244回 豪州にPK負け、準々決勝の壁(3) 10人目までもつれたPK戦

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■代表から去った名GKサラ・ブアディ

 豪州との準々決勝は120分間を戦っても両チームとも無得点、エルベ・ルナール監督は延長後半のアディショナルタイムの124分にGKのポーリーヌ・ペイロー・マニャンをソレーヌ・デュランに交代させる。また、DFのエリザ・ドアルメイダをエブ・ペリッセに交代する。これらはPK戦を意識したものである。デュランはペイロー・マニャン、コンスタンス・ピコーに次いで第3GKとしてメンバー入りしている。フランスのGKは長らくサラ・ブアディが務めてきた。1986年生まれで2016年、2017年、2018年、2020年には世界最優秀GKに選出され、36歳の現在もパリサンジェルマンで活躍している。ところが、代表監督をコリンヌ・ディアクルが務めていた2020年に代表から離れてしまう。

■主要大会の本予選に初出場となるソレーヌ・デュラン

 ペイロー・マニャンが跡を継いだ形となるが、今回のパナマ戦などでみられる通り、安定感に欠ける。エルベ監督になってからも主戦は、ペイロー・マニャンであり、第2GKのピコーはカナダとの親善試合で1試合だけ出場しただけである。そして第3GKのデュランに至ってはルナール体制での出場はなく、2020年3月のオランダ戦でデビューし、その後は2022年2月のフィンランド戦に出場しただけである。デュランにとっては公式戦デビューとなるが、これまでの2試合はフランス国内の地方都市での親善試合(フランストーナメント)であり、オランダ戦はコロナ禍での無観客、少ない観衆の試合であったが、いきなりワールドカップで超満員のスタジアム、さらには開催国とのPK戦に出場するとは本人も思っていなかったであろう。  また、采配を取るエルベ監督も男女通じてこれが初めてのワールドカップでの決勝トーナメント、PK戦の経験はない。

■5人目はフランスはPK要員、豪州はGKが失敗、サドンデスに

 PK戦はフランスが先蹴となる。最初のキッカーはセルマ・バシャ、CKを任されているキックの名手であるが、豪州のGKマッケンジー・アーノルドが見事に方向を読んで、ストップする。期待を担ってワールドカップ初出場となったデュランは豪州のファーストキッカーのシュートを止められない。フランスは2人目のカディディアトゥ・ディアニが成功させる。デュランは豪州の2人目ステフ・カートリーのキックを見事に止め、これでイーブンとなる。3人目は両チームの主将対決、フランスのウェンディ・ルナールも豪州のサム・カーも成功するが、デュランは正しい方向にセーブする。4人目のウジェニー・ルソメとマリー・ファウラーも成功、5人目の勝負となる。
 フランスは延長後半終了間際に投入したペリッセが満を持してペナルティスポットに立つ。ペリッセのショットはポストに当たり、アーノルドがキャッチする。そして豪州の5人目にはGKで直前のPKをストップしたばかりのアーノルドが起用される。しかし、アーノルドのショットはポストに嫌われ、勝負は6人目以降のサドンデスとなった。

■10人目で勝負がつき、フランスは準々決勝で力尽きる

 フランスの6人目はグラス・ゲヨロ、ゆるいボールを蹴り、アーノルドの手がかかったが成功、豪州もカトリーナ・ゴリーが成功させる。7人目のサキナ・カルシャウイのキックはクロスバーに当たるが、ゴールインする。外せない豪州のタメカ・ヤロップはデュランの裏をかいて成功させる。フランス8人目のマエル・ラクラもアーノルドの逆を突いて成功、豪州のエリ・カーペンターはポストの内側に当てて成功、PK戦は続く。
 フランス9人目のケンザ・ダリはアーノルドに止められたが、やり直しとなり、2回目もアーノルドに止められる。微妙なプレーであったが、VARの判定の末、アーノルドのセーブが認められ、豪州は唯一の国内組のクララ・ハントが決めれば準決勝進出となる。ここでデュランがハントのシュートをストップ、ついにPK戦は10人目となる。フランスの10人目は最後のフィールドプレーヤーとなり、途中出場で決勝点のチャンスを逃したビッキー・ベショ、ベショのキックはポストを直撃し、跳ね返ってくる。豪州の10人目はコートニー・バイン、これを止めればデュランが11人目のキッカーとなることろであったが、バインのキックはネットを揺らす。
 フランスは3大会連続で準々決勝で敗れた。この試合はフランス女子代表史上498試合目であり、もし、この試合で勝利していれば、通算500試合を決勝または3位決定戦で迎えることができるはずであった。(この項、終わり)

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