第2775回 6か国対抗に向けてフランスラグビー始動(7) イングランドに延長の末、惜敗

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■先発15人のキャップ数が897に上るイングランド

 新型コロナウイルスの感染拡大によるラグビー界の空白を埋めるために行われたオータムネーションズカップ、合宿中に集団感染し、グループリーグでは全試合、不戦敗となったフィジーが7位決定戦に登場し、ジョージアを破って7位になるという新型コロナウイルス禍ならではのドラマもあったが、優勝決定戦は順当にイングランドとフランスの顔合わせとなった。
 しかし、両チームの構成は対照的で、2019年のワールドカップで準優勝したメンバーで固めるイングランドの先発15人の総キャップ数は実に897に上る。それに対して10か月前の対戦でイングランドに勝利したメンバーが1人もいないフランスは前回の本連載で紹介した通り68に過ぎない。
 また、優勝決定戦はトゥイッケナムで行われる。フランスはトゥイッケナムでイングランドを破ったのは2005年2月13日の6か国対抗が最後である。それ以来6か国対抗、テストマッチで対戦して勝っていない。
 このような状況であるから、フランスの勝利を期待するファンはいなかった。しかし、スポーツは何が起こるかわからない、ということをこの試合は私たちに教えてくれた。

■初先発となるバティスト・クイユーが主将

 イングランドの主将はエースのオーウェン・ファレルで決まりであるが、フランスの主将は前回紹介したメンバーの中で誰が務めるのか、というところは注目を集めたが、23歳のスクラムハーフのバティスト・クイユーが務めることになった。クイユーは理宇温生まれでリヨンに所属、2018年の6か国対抗でアントワン・デュポンの負傷により追加招集され、3試合に交代出場している。それ以降はブルーのジャージーを着ることはなく、今回のオータムネーションズカップのスコットランド戦とイタリア戦で途中から出場している。つまり、フランス代表の試合で初めて先発し、それがイングランドとの大一番で、主将の大役を任されたのである。

■代表31試合目のブリス・デュランが逆転トライ、リードして折り返す

 また、この試合は始めて観客を入れて行われた。2000人という限られた数ではあったが、フランスのファンもスタンドから応援した。
 マチュー・ジャリベールのキックオフで始まった試合、フランスはイタリア戦で課題となったスクラムが修正されない。ファーストスクラムでペナルティを取られ、これをファレルに決められて3点先行される。これに対してフランスは15分にイングランドがノックオンしたボールをジャリベールが保持してアドバンテージの状態から最後はブリス・デュランがトライを決める。代表戦出場31戦目のデュランは通算6本目のトライを決めてフランスが逆転し、ジャリベールがコンバージョンも決める。ところがその直後にフランスは反則し、3点を返され、1点差に迫られる。その後フランスは28分と36分に好位置でペナルティを得て、いずれもジャリベールが決めて13-6とリードを広げる。前半終了間際にはフランスは自陣での5メートルスクラム、このピンチをしのいで前半を終える。この展開は誰しもが予想しないものであった。

■後半終了間際に同点に追いつかれ、延長後半で力尽きたフランス

 後半に入り、選手交代を先に仕掛けたのはイングランド、そして48分にはファレルのペナルティゴールで4点差に迫る。フランスは70分にペナルティゴールのチャンスを得て、ジャリベールに代わって入ったルジ・カルボネルが決めて16-9と再び7点差とする。73分にイングランドはペナルティを決めるが、逃げるフランスも76分にカルボネルが決めてまた3点差となる。残り4分でタイトルと15年ぶりのロンドンでの勝利となる。しかし、79分にフランスはオフサイドの反則、自陣ゴール前でのラインアウトのピンチを迎える。そして7点を追うイングランドはラストプレーでルーク・カーワン・ディッキーがトライを決め、ファレルのコンバージョンも決まり、19-19となって延長戦となった。
 延長戦は10分ハーフでサドンデスで行われ、延長後半の95分にファレルのペナルティゴールによってイングランドが優勝した。
 しかし、キャリアの浅い選手がこれだけの試合をしたことは、6か国対抗、さらにはワールドカップに対する期待を高めたのである。(続く)

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