第139回 2002年デビスカップ・ファイナル(5) 20歳対決に敗れ、フランス連覇を逃す

■最終日を迎え、優位に立つフランス

 金曜のシングルス2試合、土曜のダブルス1試合を終えた段階でフランスの2勝1敗。日曜日の12月1日にシングルス2試合が行われ、フランスはどちらかの試合で勝てば2年連続10回目のデビスカップ獲得となる。
 常に悲観的にものを考える傾向のあるフランス人であるが、土曜日のダブルスに勝利した段階で、楽観論が広がった。その理由はいくつかあげられる。まず、ロシアは決勝に至るまで3試合とも全てホームの試合で、アウエーでの試合の経験がない。したがって、ホームのフランスが圧倒的に有利であろう。次に、ダブルスはフランスがロシアの黄金ペアを下したが、1981年にデビスカップがワールドグループになって以来、決勝戦でダブルスを制したチームは必ず優勝している。さらに、ロシアはエフゲニー・カフェルニコフもマラト・サフィンも敵地の大声援の中、金曜日はシングルス、土曜日はダブルスと連戦し、疲労困憊である。一方のフランスは金曜日のシングルスに出場したプレーヤーは土曜日のダブルスではベンチで応援、休養は十分とは言わずとも5セットマッチのデビスカップでは圧倒的に有利である。

■エース対決はセバスチャン・グロジャンがマラト・サフィンにストレート負け

 そしていよいよ3日めのプログラムが始まる。シングルスの第1試合は両国のエース同士の対戦となる。セバスチャン・グロジャンとサフィンの対戦である。過去の2人の対戦成績はサフィンが4勝2敗とリードしている。金曜日にカフェルニコフをストレートで下したグロジャンが一気に試合を決めてくれるのではないかとパリジャンの期待は高まる。本連載第84回で紹介したワールドカップのフランス代表応援歌「Tous Emsemble」がベルシーの中に響き渡る。「ラ・マルセイエーズ」も大合唱となる。
 満場の期待を背負ったグロジャンであるが、試合は意外な展開となる。金曜日、土曜日と2日間で9セット、6時間53分もプレーしたサフィンが全く疲労の色を見せず攻めまくる。第1セットは2ゲームを連取し、第1セットを6-3と先取し、グロジャンはこの決勝で初めてセットを失う。続く、第2セットもグロジャンは立て直しをすることができない。完全に主導権を握られ、サービスゲームをキープできず、このセットもサフィンが6-2で連取してしまう。ようやくグロジャンが意地を見せたのは第3セット。6-6となり、タイブレークとなる。グロジャンがセットポイントを握ること3回、サフィンがマッチポイントを握ること2回、行き詰まる攻防となったが、結局サフィンが3度目のマッチポイントをものにし、13-11でタイブレークを制し、通算成績を2-2のタイとして、デビスカップの行方は最終戦に持ち込まれることになったのである。

■カフェルニコフに代わり、ミハイル・ユーズヌイを起用

 最終戦でロシアは勝負に出る。ナンバーツーのカフェルニコフを断念する。1994年、1995年の準優勝メンバーであり、「デビスカップで初優勝を飾ったら引退したい」と話し、左足の静脈りゅうの摘出手術をデビスカップの決勝後に遅らせていたカフェルニコフにとっては断腸の思いであろう。カフェルニコフの代役にポール・アンリ・マシューよりも5月若い20歳のミハイル・ユーズヌイを抜擢する。デビスカップの過去の戦績は1勝4敗と心もとない。また、今年の出場は準決勝で3-1と勝利を決めた後のシングルスの最終戦に出場しただけである。
 最終戦はマシューとユーズヌイの20歳決戦となった。両者は今まで1度だけ対戦したことがあり、ユーズヌイが勝っている。第1セットはマシューが3-3から突き放し、6-3で取る。そして第2セットに入っても、マシューが第1セットから通算して6ゲーム連取し、3-0と差を広げ、6-2と一方的なスコアで2セットを連取する。マシューのデビスカップ初勝利とフランスのデビスカップ連覇があと1セットとなった第3セットで流れが変わる。
 ユーズヌイは初めてブレークし、6-3で第3セットをとる。第4セットはマシューが選考し、ユーズヌイが追いつくという展開になったが、7-5でユーズヌイ。わずか1500人のロシア応援団の歌声が響く。最終セットでユーズヌイが1ゲームブレークし、6-4で4時間30分の試合は終了する。ついにロシアはデビスカップ初優勝を飾る。

■実力・人気ともサッカーをしのいだフランスのテニス

 フランスには残念な結果となったが、今年これだけフランス人の期待を集めたスポーツイベントはない。韓国では歌われなかった「Tous Emsemble」がベルシーにこだまし、「ラ・マルセイエーズ」も本連載第62回で紹介した今年のフランスカップ決勝とは異なり、ブーイングを浴びることなく、大合唱となった。デビスカップ直後の男子テニスの国別ランキングでフランスは1位に輝いたが、フランスにおいて実力だけではなく人気もサッカーはテニスに及ばないことは明白である。サッカーがナンバーワンスポーツでない、ということを真摯に受けとめ、フランスのサッカー界には努力が必要であろう。(この項、終わり)

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